目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【16歳】

【16歳】3 オークver.

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魔法の杖は王である父が用意してくれた。

「良い『樹』は良い『気』を運び、良い『木』も選ぶ。この樹は樹齢1000年を越えているのだ。きっと今後の支えともなる杖の木を贈る事だろう。」

杖の授与………それは自分より魔力の高い者からの贈り物…だったか?

王宮の中庭に1本の大きな樹がある。
元々ここには精霊が宿り、沢山の精霊を誕生させたらしいが……ここ数年は生まれてないらしい。

……シオンの所の樹と雰囲気が似てんだよな…。

そして、俺には銀木犀・センリョウ・黒檀が現れて、センリョウが父から贈られた木だった。

……クロバイから貰いたかったが……

思わず顔に出ていたらしく「お前っ!一応俺、この国のトップな!!」と、怒られた。

シオンへの気持ちはあの樹の下での出来事から…「婚約者候補」でも良いが、学園へ行ったら思いは伝えようと思った。

機は熟したはずだ。

このままだとあの天然…気付かないまま卒業しそうだから。


___入学式___


俺は天を仰ぎ…決意し、そして門を潜った。
 
父が在籍中に色々と学園の膿を出し切り、爵位の垣根も壊したと聞いている。
在籍中に出会ったシオンの父親は学園内でも美しい存在で狙う者も多く、不埒な事を考えてる輩も多かったとか。

しかし、シオン遅いな……さっき会場が分からないと迷子になってるヤツもいたしな。
この学園は広い。
俺は兄の関係で学園内は把握はしてるがアイツの事だ。
迷子になってるのかも。

「しゃーねぇ…迎えに……」

ん?あの泥だらけの生徒………シオンか?!

「シオン!」

「あ、オーク。遅れてゴメン。」

「いや、そんな事より……お前、服が土で汚れてるじゃないか!どうしたんだ?」

話しながら洗浄の魔術で服を綺麗にする。

「………あ、そこで主人……いや、新入生とぶつかって……」

「……ここまで酷くなる程ぶつかるなんて……殺そう「駄目に決まってんだろ。」」

「なぁ、主人……いや、会場が分からず迷った新入生と会わなかったか?」

「あれ?アイツ、また迷ったのか?あぁ、会ったぞ。説明したら分かったって言うからそのまま別れた。」

お前がいるのに。

すると、シオンが必死な顔で聞いてきた。

「いやいやいや!新入生とワックワク☆でドッキドキ♡な出会いは無かったのかよっ?!」

「っ?!お前にあったのかっ?!」

「ねぇわっ!バカァッ!!」


そして入学式も終わり、クラス発表もあり、シオンとは同じクラスにしてもらった。

俺達は後ろの席にシオンと座った。
俺達の近くには誰も座らせない………シオンに気付かれない様に近付くヤツ全てに睨みを利かせた。

「……オーク…」

「……何だ?」

「あのさ……この腰に回してる手ぇ…離せ。」

「いやだ。」

腰に手を回した手に力を籠める。

「離せ…よ…っ!」

離さねぇ!

「離さない…俺はこの時を待ってたからな。」

絶対「好き」って言わせてやるんだからな!!

「何…が…だよっ。」

グイッと、シオンの腰を自分の方へ引き寄せて耳元で囁いた。

「カヤが別のクラスなんだ………全力で………落とす…からな……チュ。」

「………んっ……おまっ…」

真っ赤になってる………可愛いなぁ……

開き直ると色々見えてくるもんだな。
すると、特待生のハシドイがこちらにやって来た………睨むが全く利かねぇ………

「あの………お取り込み中に…ごめんね。」

「ああ、だ。」

邪魔すんな。

「違うだろ!何?ハシドイくん。」

「あ…俺の事はライラックと…呼びにくければ、ライと呼んでね。」

こいつは人好きのする笑顔だが……
こいつもシオンを狙ってるのか?

「あぁ、じゃあ…ライ。俺の事は、シオンって呼んでね。で、どうしたの?」

………名前で呼ばせるのかぁぁ!………
でも、シオンが「ライ」って呼ぶなら俺も呼ぶ!
何か悔しいけどっ!!

「………あの…朝は…ごめんなさい……怪我は無かったかな……?」

「…あぁ……シオンにぶつかったヤツは…お前なのか………」

「あ…」

…ふ~ん……どうしてやろうか………

「俺の婚約…」

ドスッ!

「ウッ!!」

シオンから横腹にパンチを入れられ俺は痛みでうずくまってる間に話は進む。

「あぁ、大丈夫だよ。」

「……本当に?」

大丈夫じゃねぇ!!

「うん。」

「…ハァ…良かったぁ。俺、家でも前を見ろとよく注意されてて…本当にごめんなさい。…じゃあ、これから同じクラスだし、仲良くしてくれると…嬉しいな。」

「そうだね。」

「………おい…」

「ん?」
「は、はい!」

横腹を擦りながら起き上がってライをもう一度睨みながら言った。

「こいつは………俺のも」

ドスッッ!

「ウグゥッ!!」

…「俺のもの」って言おうとしたら……思い切り前から腹パンチされた………
こいつ………腕を上げた……なっ………


明日から本格的な授業が始まるので今日は午前中で終わりだ。
ライは家が遠いから学園内の寮に移動するので教室で別れた。

俺はクロバイに屋敷に呼び出されたが、何か嫌な予感がするのでシオンと一緒にカヤとの待ち合わせ場所へ付いて行く。

「………何故オークも付いてくんの?」

「クロバイに呼ばれてるから俺も行く。」

廊下を渡って中庭に向う。

「移動魔法で先に行きゃ良いじゃん。」

「…………何かやだ…一緒が良い。」

「………俺は…少しでもお前と一緒にいたいんだ……俺はもう、恥ずかしがるのをやめたから。」

もう…俺は…言えるから。

「…え?」

「…………お前が………好きだ………」

シオンがキョロキョロと周りを見た。

「お前……冗談でもそんな事ここで言ったら「違う。本気だから。」」

ズイッと、廊下の壁までシオンを追い詰め…両手を壁に付いて逃げ道を塞いだ。

「いや………だって……俺は……」

「俺は……何………?」

カヤが良いのか…?…でも……諦めねぇっ!

「オー……ク………待っ………」

「待たない………」
 
素早くシオンの顎に手を添えて少し上を向かせて唇を近付ける。

ずっと…言えるこの日を待ってたんだ……学園入学という……大人への第一歩を踏みしめたこの日を………

「……………シオン様、お迎えに上がりました。」


「「……っ!!」」


カヤが俺の肩を掴んで動きを止めた。
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