目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【16歳】

【16歳】4 カヤver.

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魔力循環の訓練で倒れ、復帰してすぐ………俺は…嫉妬で暴走しかけてシオン様に無体を働きそうになった所をクロバイに止められた。

___コンコン___

「はい。」

「カヤです……」

「入りなさい。」

そう言われて入ると中の景色が変わった。

「あ………」

「そう………ここはお前が生まれた場所だ…誰にも聞かせる訳にはいかないからな。」

精霊が生まれる樹はいくつかある…
ただ…森の奥深く………誰にも見つけられないこの場所の樹は…次代の精霊王となる者しか生まれない………

クロバイが服装はそのままだが、本来の姿に戻っていく。
黒く艷やかな短い髪が銀色に変わって長くなり、目の色も茶色からシルバーブルーへと変化する。

「そろそろ精霊達の目覚めの時が来る。お前の術もそろそろ解け掛かっているんだろ?」

「………はい………」

俺はここで生まれたが、赤ちゃんとしてでは無く4歳くらいの子どもの大きさで生まれた。

「魔力の暴走は…?」

「もう心配ないかと。」

シオン様は……俺が生まれた最初の願いで愛し子の召喚の時に魂を呼び寄せた子だ。

ローズウッド家のポーロウニア様の腹に宿り、既に執事をしていたクロバイに「両親を亡くした親戚の子ども」として紹介され、まもなく生まれるシオン様の歳の近い将来の従者として、俺はこの屋敷に住む事を許された。

シオン様の名前は、当時アッシュ様が手紙に書いてきた名前の候補にクロバイが激怒し、手紙を破って暖炉で燃やして俺に名前の希望はないかと聞いてきた。

見た目は4歳くらいとはいえ、頭脳はしっかりとしているつもりだ。
その場で俺は「シオン」と答え、クロバイはその名を付けた。

クロバイを激怒させるなんて……ある意味あの人は凄い人だと思った。

「……シオン様の魔力も間もなく全て開放される。その時、お前も同時に開放されて本来の姿に戻るだろう。」

「はい……」

「それまでに愛し子しおんを自分の愛する者に出来るか?」

開放されるのは……もってあと3年…と、いった所か…

「それは………分かりません。」

「そうか…シオン様の運命には選択肢がいくつかある。お前だけではないのだ。先日王子にも運命の紐が結ばれた…それを引くのはお前でも王子でもない。シオン様だ。」

「近々ここに王子を呼び話をする。心しておきなさい。」

「はい。」

精霊の愛し子に自分が認められないと、再び別の愛し子に会えるのは長い時間を要するらしい。

でも俺は…あの人以外…いらない………


そして杖の授与で……


「良い『樹』は良い『気』を運び、良い『木』も選びます。この樹は樹齢1000年を越えているので、きっと今後の支えともなる杖の木を贈るでしょう。」

クロバイの前に立つとクロバイが自分の杖を取り出し、腕を高々と伸ばして術を唱えた。

俺は杉・南天・紅葉の杖を与えられた。

クロバイの贈り木は「紅葉」か……
 

___入学式当日___


とうとうこの日が来たんだ……

俺は朝日が登り始めた頃に中庭の大きな樹の下へ行った。

___おはよ。私が起きたって気が付いたのね、カヤ♪___

「おはよ……そりゃ…歌まで聞いたら…ね。」

木の葉がサワサワと揺れる。

___どうしたの?元気無いじゃない。___

「いや………別に…」

___フフッ…またクロバイに注意されたの?___

「いや……今回は俺のせいだから。…ねぇ…何で俺の杖はあの木なの?」

___ん~…フフッ「愛」に生きてるからよ。で、精霊王は………___

「……紅葉……『自制』…ね……」

贈られる木にはそれぞれの意味がある。
木や魔術を使う人間の力量にもよるが、力が強い程イメージされるものが出やすい。

___ウフフ~若いって良いわね~___

「………君は1000年生きてるもんね…」

___そうよ~、長いわよ♪あ、今日は入学式なんでしょ?___

「うん……でも…行きたくない…」

___あらあら、困ったさん♪___

「適当に言って…」

___ウフフ、良いじゃない。人間の真似をして、お友達も出来るわよ♪___

「いらない。君もいるし。」

___あらあら、久々にお喋り出来る様になって嬉しいけど…今の貴方には学園も必要な経験よ。___

精霊の俺には俺達みたいな姿をした母親はいないが………
精霊を生み出すこの樹々は………

人間で言う、俺達の「母親」なんだろう。

「分かった………行ってくる…」

___うん。あ、今日のお祝い♡___

木の葉がカサッと、不自然に揺れたかと思うと目の前にゆっくりと降りてきた。

___精霊の祝福の欠片よ。あの子達が眠る前にちょっと貰ってたの。貴方にあげるわ♪___

「ありがとう。」

手に収まる程のコロンとした雫型の木は握ると暖かく、心が穏やかになる。

___今日は1日晴天よ。行ってらっしゃい。___

樹は再び大人しくなった。

俺はそのまま屋敷へ戻り、シオン様のお世話をして移動魔法で学園に行く。
お姫様抱っこをしなければいけないと教え込んだお陰で、全く抵抗せずに抱かせてくれる。
ほんの少しの間だがシオン様が俺の首に腕を回し、俺の首元での息遣いを感じながらの移動も大分冷静を保てる様になった。

学園内では目立つので、少し離れた場所に到着させてシオン様とは会場が別なので別れた。


そして俺は天を仰ぎ覚悟を決め………学園の門を潜った。


従者の学科………正直クロバイやカイエ、ヒイラギ達という優秀な人材がいるローズウッドで、生きる糧以上のものを得ているんだが………アイツおーくだけとは一緒にいさせたくない…

別のクラスを期待したが………流石はワガママ王子…権力使って濫用しやがった…

主達の学科が明日から本格的な授業が始まるので、俺達も今日は午前中で終わりだ。

早く…迎えに行かなくては…嫌な……予感がする………

廊下を渡って行くと……あ、見えた…

「シオンさ……っ……!!」

シオン様が廊下の壁まで追い詰められ…アイツに………!!

「オー……ク………待っ………」

「待たない………」

俺は移動魔法でシオン様の元へ行き、アイツおーくの肩を掴んだ。

「……………シオン様、お迎えに上がりました。」


「「……っ!!」」


……絶対…運命は譲らないから……
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