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【17歳】
【17歳】13
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屋敷に戻るとヒイラギが声を掛けて来た。
「シオン様…お支度が終わる頃にお部屋へ伺っても宜しいでしょうか?」
「ただいま、ヒイラギ。あぁ、別に良いけど?」
「カヤも…一緒にいてくれ。」
「分かりました。」
そして着替えが終わった頃にヒイラギが部屋にやって来た。
「失礼致します。」
カヤが窓際のテーブルに誘導し、向かい合わせで座る。
カヤは俺の後ろに立っていた。
「クロバイには報告済なのですが…実は……」
オークの上の兄、第2王子が誰かに毒を盛られたらしい。
元々第1王子が王になる事は確定しているのだが、その補佐を第2第3のどちらをメインに据えるかという事を派閥が出来てしまい、水面下で抗争が勃発していたという。
ゲームのままでなら勉強をしないワガママ王子なので、そのまま適当な公務を振っておけば良かったんだろうけど……
今のオークは色々と頑張っている。
元々王様の気質に一番近いのもオークだ。
そんなオークを王にさせようとしている者も出てきているという。
「……アイツ、王様になる気は全く無いと思うんだけどなぁ……」
「はい、私もそう思います。」
「それに兄弟仲は良いはずだよな?」
「そうなんです。上2人はお母様に似て明るく穏やかです。ただ、その穏やかさを頼りないと不安視する者もおりまして…王に似ているオーク様が可哀相だと…」
「……何だそれ……」
勝手に祭り上げて勝手にやってんのかよ?
「今回の毒は学園の講義にも出ていたものらしく、第1王子・第2王子派ではオーク様に疑いを掛けている者も出始めています。お兄様方は今回の事をオーク様がやってはいないと信じておりますが、派閥の者の仕返しを恐れて暫く王宮で隔離となりました。」
「……では、シオン様への影響は……」
「はい、婚約者候補としてなのと表向きは閨の関係は伏せられてますので影響は薄いはずです。学園の警護に関しては大丈夫ですが、屋敷は強化を致します。」
「……だからか……」
カヤがポツリと呟いた。
「どうした?カヤ?」
「いえ……実は以前作った守り石となる宝石を指輪に…と言うお話だったんですが…」
「あれな。そういや、春に出来るって言ってたけど?」
「実は先日オーク様に呼ばれて新しく石を作りまして…こちらを。」
カヤが小さな箱を取り出して俺に渡した。
「俺とオーク様が新たに作った守り石が入った指輪です。」
箱を開けるとシンプルなプラチナ?の指輪で真ん中に石が埋め込まれている。
「これ…不思議な色だな…」
「はい。クロバイの指導で、俺は緑…オーク様は赤の花から魔法で融合させて1つの花にして宝石にしました。光の加減で色の見え方が違うと思います。身に付けておいて下さい。前に作った守り石は新たな加護を付与して欲しいと言われているのでもう少しお待ち下さい。」
2人の魔法を融合したものかぁ…
見た目普通の指輪だけど、何だか最強の武器になりそうだな。
「ありがとう。」
「全く影響が無いわけではないので、オーク様よりくれぐれも気を付けて過ごして欲しいと伝言を預かっております。」
「分かった。」
「……今後クラスでも噂が色々と出るかもしれません。どうか…自分を信じて欲しいと…」
「当たり前だろ?付き合いの浅いヤツより長いオークを信じないって俺、どんだけだよ。信じるよ。な、カヤ。」
「……まぁ……暗殺なんて…そんな細かい芸当……オーク様の性格的に無理でしょうし。」
「プッ…そうですね。」
「アハッ、そうだよな。」
「それでは私は戻りますが……アゼリアとザクロを当面こちらに常駐させています。何かありましたらこの2人に言って下さい。」
そう言うとヒイラギは王宮に戻り、俺は次の日から2人が作ってくれた指輪を身に付けた。
___次の日___
学園に着いてカヤと分かれるとライがやって来た。
「シオン…聞いたよ。大丈夫?」
「まぁな、俺は特に大丈夫だが…」
う~ん……周囲の雰囲気がちょっとぎこちない。
「普段のオークを見ている生徒は大丈夫なんだけど、知らない生徒や親はね。クロバイからなるべく一緒にいるように頼まれたんだ。」
「カーニバル、クロバイと上手く行ったみたいだな。」
「まだまだだよ。クロバイルートは難しいんだから。…でも、軽口を言えるくらいなら大丈夫そうだね。」
「まぁな。」
「……でも、気を付けてね。」
「ありがとな。」
自分のクラスでこうなんだ…俺達を知らない者は見た目や噂を信じるだろう。
転生前もそうだ……噂する言葉は「言の葉」となってやがて枝が増え、嘘という葉っぱがどんどん増えて……そして…本当の姿を隠すんだ…
「シオン……?」
「あ、ゴメン。何でもない。」
俺達は今は信じるしか無い。
いくら違うと払拭しようとしても新たな噂は立つだろう。
なら…落ち着くまで待つしかない。
「夏休みまで後少し、頑張ろ!」
「うん。」
「フフッ…」
「何?」
「2人って久し振り。転生前に戻った感じ。」
「でも、その時はお互いのマイノリティ知らなかったじゃん。」
「まぁ、そうなんだけどさ……知ってたら……先輩は山に行かなかったのかなぁ…」
………死ななかったのかなぁ………
あとの言葉が飲み込まれた気がした。
「んなもん分からん。今は俺はシオンでお前はライラックだ。今を生きてんだから今を見ようぜ………でも……」
「でも?」
「オークがいなくて出来ること……腐男子トーク…‥しようぜ!」
やってみたかった腐男子トーク!
こそこそと専門用語を使って話していたが物足りず、その日の夜にライを俺の屋敷へ招待して腐男子トークに花を咲かせた。
「何なの先輩!あのアニメは絶対** ✕ ☆☆だって!!」
「おまっ……何いってんの⁉これは☆☆ ✕ **だろぉ‼あの心理描写!どう見てもそうだろっっ!」
夕食を終えて部屋に戻り、カヤが用意してくれた魔法で保温が効いた飲み物やエンジュが作ってくれたお菓子を大量に持ち込んで、ギャーギャーと声を大にしながら転生する前に見ていた大人気アニメのカップリングで揉めていた。
そうそう!こういうのっ!他の人なら険悪になるだろうけど…それすら出来なかった俺には楽しい!
ライもそんな感じで朝まで盛り上がってしまった。
そして……そんなヒートアップした俺達の声は、ドアの外からそっとカヤが防音魔法を掛けてくれてなかったら外まで聞こえていたらしい………カヤ……感謝!
「シオン様…お支度が終わる頃にお部屋へ伺っても宜しいでしょうか?」
「ただいま、ヒイラギ。あぁ、別に良いけど?」
「カヤも…一緒にいてくれ。」
「分かりました。」
そして着替えが終わった頃にヒイラギが部屋にやって来た。
「失礼致します。」
カヤが窓際のテーブルに誘導し、向かい合わせで座る。
カヤは俺の後ろに立っていた。
「クロバイには報告済なのですが…実は……」
オークの上の兄、第2王子が誰かに毒を盛られたらしい。
元々第1王子が王になる事は確定しているのだが、その補佐を第2第3のどちらをメインに据えるかという事を派閥が出来てしまい、水面下で抗争が勃発していたという。
ゲームのままでなら勉強をしないワガママ王子なので、そのまま適当な公務を振っておけば良かったんだろうけど……
今のオークは色々と頑張っている。
元々王様の気質に一番近いのもオークだ。
そんなオークを王にさせようとしている者も出てきているという。
「……アイツ、王様になる気は全く無いと思うんだけどなぁ……」
「はい、私もそう思います。」
「それに兄弟仲は良いはずだよな?」
「そうなんです。上2人はお母様に似て明るく穏やかです。ただ、その穏やかさを頼りないと不安視する者もおりまして…王に似ているオーク様が可哀相だと…」
「……何だそれ……」
勝手に祭り上げて勝手にやってんのかよ?
「今回の毒は学園の講義にも出ていたものらしく、第1王子・第2王子派ではオーク様に疑いを掛けている者も出始めています。お兄様方は今回の事をオーク様がやってはいないと信じておりますが、派閥の者の仕返しを恐れて暫く王宮で隔離となりました。」
「……では、シオン様への影響は……」
「はい、婚約者候補としてなのと表向きは閨の関係は伏せられてますので影響は薄いはずです。学園の警護に関しては大丈夫ですが、屋敷は強化を致します。」
「……だからか……」
カヤがポツリと呟いた。
「どうした?カヤ?」
「いえ……実は以前作った守り石となる宝石を指輪に…と言うお話だったんですが…」
「あれな。そういや、春に出来るって言ってたけど?」
「実は先日オーク様に呼ばれて新しく石を作りまして…こちらを。」
カヤが小さな箱を取り出して俺に渡した。
「俺とオーク様が新たに作った守り石が入った指輪です。」
箱を開けるとシンプルなプラチナ?の指輪で真ん中に石が埋め込まれている。
「これ…不思議な色だな…」
「はい。クロバイの指導で、俺は緑…オーク様は赤の花から魔法で融合させて1つの花にして宝石にしました。光の加減で色の見え方が違うと思います。身に付けておいて下さい。前に作った守り石は新たな加護を付与して欲しいと言われているのでもう少しお待ち下さい。」
2人の魔法を融合したものかぁ…
見た目普通の指輪だけど、何だか最強の武器になりそうだな。
「ありがとう。」
「全く影響が無いわけではないので、オーク様よりくれぐれも気を付けて過ごして欲しいと伝言を預かっております。」
「分かった。」
「……今後クラスでも噂が色々と出るかもしれません。どうか…自分を信じて欲しいと…」
「当たり前だろ?付き合いの浅いヤツより長いオークを信じないって俺、どんだけだよ。信じるよ。な、カヤ。」
「……まぁ……暗殺なんて…そんな細かい芸当……オーク様の性格的に無理でしょうし。」
「プッ…そうですね。」
「アハッ、そうだよな。」
「それでは私は戻りますが……アゼリアとザクロを当面こちらに常駐させています。何かありましたらこの2人に言って下さい。」
そう言うとヒイラギは王宮に戻り、俺は次の日から2人が作ってくれた指輪を身に付けた。
___次の日___
学園に着いてカヤと分かれるとライがやって来た。
「シオン…聞いたよ。大丈夫?」
「まぁな、俺は特に大丈夫だが…」
う~ん……周囲の雰囲気がちょっとぎこちない。
「普段のオークを見ている生徒は大丈夫なんだけど、知らない生徒や親はね。クロバイからなるべく一緒にいるように頼まれたんだ。」
「カーニバル、クロバイと上手く行ったみたいだな。」
「まだまだだよ。クロバイルートは難しいんだから。…でも、軽口を言えるくらいなら大丈夫そうだね。」
「まぁな。」
「……でも、気を付けてね。」
「ありがとな。」
自分のクラスでこうなんだ…俺達を知らない者は見た目や噂を信じるだろう。
転生前もそうだ……噂する言葉は「言の葉」となってやがて枝が増え、嘘という葉っぱがどんどん増えて……そして…本当の姿を隠すんだ…
「シオン……?」
「あ、ゴメン。何でもない。」
俺達は今は信じるしか無い。
いくら違うと払拭しようとしても新たな噂は立つだろう。
なら…落ち着くまで待つしかない。
「夏休みまで後少し、頑張ろ!」
「うん。」
「フフッ…」
「何?」
「2人って久し振り。転生前に戻った感じ。」
「でも、その時はお互いのマイノリティ知らなかったじゃん。」
「まぁ、そうなんだけどさ……知ってたら……先輩は山に行かなかったのかなぁ…」
………死ななかったのかなぁ………
あとの言葉が飲み込まれた気がした。
「んなもん分からん。今は俺はシオンでお前はライラックだ。今を生きてんだから今を見ようぜ………でも……」
「でも?」
「オークがいなくて出来ること……腐男子トーク…‥しようぜ!」
やってみたかった腐男子トーク!
こそこそと専門用語を使って話していたが物足りず、その日の夜にライを俺の屋敷へ招待して腐男子トークに花を咲かせた。
「何なの先輩!あのアニメは絶対** ✕ ☆☆だって!!」
「おまっ……何いってんの⁉これは☆☆ ✕ **だろぉ‼あの心理描写!どう見てもそうだろっっ!」
夕食を終えて部屋に戻り、カヤが用意してくれた魔法で保温が効いた飲み物やエンジュが作ってくれたお菓子を大量に持ち込んで、ギャーギャーと声を大にしながら転生する前に見ていた大人気アニメのカップリングで揉めていた。
そうそう!こういうのっ!他の人なら険悪になるだろうけど…それすら出来なかった俺には楽しい!
ライもそんな感じで朝まで盛り上がってしまった。
そして……そんなヒートアップした俺達の声は、ドアの外からそっとカヤが防音魔法を掛けてくれてなかったら外まで聞こえていたらしい………カヤ……感謝!
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