目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

文字の大きさ
142 / 145
【番外編】その他

バレンタイン2023 《1》

しおりを挟む
「ねぇねぇ、シオン。」

「おぅ、何だ~。」

今日はクロバイとカヤはローズを連れて屋敷へ。
オークは子ども達と姉さん達を連れ、精霊の森の奥に住んでいる精霊達との交流に行っている。
オークが精霊達にか…大丈夫だろうか?
姉さん達もいるから大丈夫だよね?
でも折角久々にライと2人きりになったし、ゆっくりしようと庭にある椅子に腰掛けてハーブティを飲んでいた。

___チチチチ…___

「ハァ…穏やかだねぇ~。」

「全くなぁ~。」

ここに来てからというもの必ず誰かがそばにいる。
大丈夫と言っても聞かないんだもんなぁあの3人、また魔力上がったし…今では魔王レベルなんじゃないかと思う。
そんな魔王城みたいな場所に踏み入れるチャレンジャーなんていないだろ?
そして俺達にも子どもが出来て更に賑やかになってるし。
こんなに鳥の囀りが微笑ましく聴こえるのなんて何年振りだろう?

「…でさ、もうすぐバレンタインだよね…何か考えてるの?」

「えっ…バレンタイン…あ…そっか、そう…だな…アハハ…そうだなぁ~…」

いかんいかん、物思いに耽ってて内容聞いてなかった。

「……シオン……」

「はい…」

「…子ども達が生まれる前のハロウィンの時にも思ったけど、まさか…」

「そうだよ、考えてないっ。」

「えぇ⁈バレンタインだよっ⁈」

「だってネタも浮かばんだろうがよっ⁉」

そうです、バレンタイン。恋人達の日です。
日本じゃ毎度チョコでも良いけど、ここは異世界。
海外テイストな贈り物チョイスにオヤジな俺にはネタは即尽きた。

「もぅっ、今までどうしてたの?」

「いやぁ~、花とか…花……とか………花………とか……だな。」

「花しかないじゃん!」

基本クロバイは2人に自慢するタイプではない。
ハロウィンの時も偶然目撃をして2人が知ったくらいだ。
毎年色々趣向を変えて贈り続けているライは本当に偉いと思うけど…

「…なぁ…ネタに困らない?」

「ネタ?お笑いでも狙ってるの?」

「いや…そうじゃないけどさぁ…」

カカオの木も作ってもらったもののチョコを渡すだけってのも味気ないし、だからって…

___俺を…食べて…♡___

「……とか、思ってるでしょ?」

「おわっ!な゛っ……俺、声出てた⁈」

呆れた顔のライがこちらを見て言った。

「顔に出てるよ、本当には…」

たまに出る
昔を思い出してちょっと懐かしくなる。
昔は敬語だったけどな。

「どうせ転生前にバーのママから『それくらい言いなさい』とか言われたんでしょ?あ…それとも…当時の恋人に…」

「わぁあっ!いいい言う訳ないだろっ‼︎」

「あ、言ってもらったのか。」

「違うわっ!」

「アハハ、シオンは面白いなぁ。」

そしてライは昔バーのママから教わったという、バレンタインの贈るお菓子の意味を教えてくれた。

「チョコは日本じゃ定番だったよね?」

「あぁ、俺も会社の子からよくもらった。」

「俺も貰ってたけど、シオンはモテてたもんねぇ。」

「お前と違って、俺は義理チョコや友チョコだぞ。」

「えぇ~、シオンには本命もあったよ?知らなかったの?」

「えっ、マジか⁈」

「チョコはね、『あなたと同じ気持ちです。』って意味。そう考えると、本命で送った子からしたら友チョコや義理チョコと思って受け取ってたシオンの気持ちは同じじゃないけどね。」

「確かに。」

「それなら『あなたが好き』って意味のある飴を贈る方が良かったかもね。」

「あ、それならあったかも。」

「あったの?」

「あ…いや…まぁ…あの時は…」

確か…『チョコばかりだと飽きますよね、バレンタインらしくないけど…飴細工の可愛いのを見つけて…』って、くれたんだよなぁ。

「策士だね。」

「そうかぁ、結局気付いたの今だぞ?」

「プハッ、そりゃダメだ。」

「あの時は確かにチョコが多かったし、飴細工はどこ食べて良いのか困ったけどチョイスは嬉しかったなぁ。」

「他の物はなかったの?」

「ん~…たまにマカロンとか…マドレーヌとかはあったかな。今考えると、みんな『チョコばかりだと…』って、言ってたな……ハッ…それって…」

「マカロンは『あなたは特別な人』、マドレーヌは『仲良くなりたい』だよ。マドレーヌは友達としても取れるけど、マカロンは本命に近いんじゃないかな。」

「えぇ~…」

「まさか、ホワイトデーにマシュマロなんて返してないよね?」

「え゛っ⁉」

「…返したのか…」

「…返しちゃった…」

ダメなのか…マシュマロは『あなたのことが嫌い』だそうだ。
どうりで半泣きで受け取るはずだ。
せっかく考えてくれたのだからお礼に…って…美味しいし、ココアにでも浮かべて飲むと可愛いなと思ってあげたのに…マシュマロ可哀そう。

「ま、色々言ったけど、こういったのはお互いの気持ちの問題だから好きなら何贈っても良いと俺は思うけどね。」

確かにライの言う通り。
例えばこないだ森に落ちていた葉っぱが綺麗だからと子ども達がくれたが、嬉しくて栞に加工して残している。

「そういや、ライはクロバイに何をあげるんだ?」

「ここ数年はマロングラッセだよ。」

「マロングラッセ…って、あの栗の甘いやつだよな?あれ素人でも作れるのか?」

「うん、手間は掛かるけどね。この世界の栗は少し大きいけど甘味あるし、しかも渋皮がないから剥きやすいよ。」

…栗かぁ…確かにウチの屋敷のはデカかったなぁ。

「あ、シオンの所は発育良いから更に大きいと思うよ?精霊の森のは手入れしてない自然のものだからちょっと小さいくらいかな。今度一緒に拾いに行く?」

ウチのは肉まんサイズの栗だからどうかとおもったけど、転生前のサイズより一回り大きいなら大丈夫だろう。
あの時の皮剥きはかなり辛かった…

「面白そうだけど、何でマロングラッセなんだよ?しかもお前が何年も同じって意外だな。」

「あぁ、それはね…」

「…マロングラッセの意味は『永遠の愛』…だからだ。ただいま、ライ…チュ。」

ライが俺に説明をしようとした時に、突然ライの後ろからクロバイが姿を現してライを抱き締めて頬にキスをし、首筋に顔を埋めた。

「…ん…お帰り、クロバイ。」

「今年もくれるのか?」

「もちろん、凄く甘いのをね。」

「それは楽しみだ。」

ん~…クロバイが戻って来たとなると…こりゃ…嫌な予感がする。
俺達も転移魔法も今では使いこなし、普通なら気配も消しての移動が出来るが急いでいると…


___ブォンッッ!___


「「ただいまぁっっ‼」」

「うひゃぁあっ⁉」

旋風と共に現れた。
それぞれ違う場所にいたのに同時に現れるたぁ…コイツらホントに仲良いと思う。

「どうだ、今日は俺が先に言ったぞっ!」

「違うね、俺だ。」

「えぇいっ!煩いわっ‼」

もっとスマートに『ただいま』が言えんのか?
子ども達にも示しがつかんわ。

「クスクス、2人共お帰り。」

ギャーギャー煩い俺達の横で、クロバイに後ろから抱き締められたままのライが幸せそうに微笑んだ。
こういう雰囲気にいつなれるんだ?

「あ、オーク。子ども達は?」

「あぁ、疲れてたみたいだからそのまま部屋で寝かせた…で、何か胸騒ぎがしたから移動魔法使った。」

「まぁ、正解だったみたいだね。」

「あれ、姉さん達は?」

「あぁ、2人は春の精霊に呼ばれてそっちへ向かった。」

「そっか。」

良かった…姉さん達に聞かれたら何が起こるか分かりゃしない。
……2人にバレンタインの事を聞かれて無いよな…
ギャーギャーと騒ぐ2人を見ながら今年は花以外を送ろうと考えていた。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...