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その後、ユキの余所余所しさはなくなったけど、頬を寄せたり腰を引き寄せたりする事は無くなった。
あれだな、きっと学校に馴染んで落ち着いたんだろう。
でも、1年の後半になる頃…ユキは俺といるより実咲といる事が増えた。
実咲経由で学級委員に助けを求められて手伝いに行ったり、その流れで生徒会との繋がりが出来たユキが真ん中に入って仕事をしたりと俺1人の時間が増えていった。
まぁ、お助けキャラだし…本来のルートを辿ればこの状況が普通ではあるんだけどさ。
「おぅ、誠じゃん。お前1人か?」
「先輩。」
放課後、実咲とユキは生徒会の手伝いに駆り出された。
俺は暇だし…と、食堂に来たんだけど…久し振りにプライベートで財前と会ったな。
本来生徒会長だから、ルートに入らなきゃ接点もないけど今は寮長……と、言ってもやっぱりルートに入ってないから、あまり接点はないんだよなぁ。
「なになに~、パパとママはいないのかよ~。」
「何ですか、パパとママって。」
「そりゃあ、由樹と実咲だろ?」
「もぅっ、何言ってんですか!」
「アハハ、冗談だよ。でも、いつも一緒じゃん。珍しいな、いつもは3人揃わなくてもどちらかがいるのに。」
当たり前の様に財前が横に座り、俺の方を向いた。
「……何ですか?」
「ん~…拗ねてるお前が可愛いなと思ってさ。」
「もぅ、揶揄わないで下さいよ。」
「クスクス…2人の前で言ったら睨まれるし、今言っとかないとね……ねぇ、誠…」
「何ですか?」
「君さ、寮長…やってみない?」
「………は?」
待って待って待って!
これは…寮長ルートで『俺のあとを継いでくれないか』…みたいなもんだよな?
俺モブだってばよっ!
「いやいや、無理ッス!」
「え~、出来ると思うんだけどなぁ…」
「だから無理です、失礼しますっ!」
俺は足早にその場を離れ、廊下の端にある自動販売機に移動した。
ここならあまり人は来ないし、ベンチもあるからゆっくりと出来そう。
「……おや?」
「あ、伊集院先輩。」
何でこんなとこ来るんだ?
「君も…逃げて来たのか?」
ん?逃げて…確かに財前から逃げて来たけどコイツに言ったらややこしくなりそうだから黙っとこ。
「あぁ~…まぁ、そんなとこです。」
「フッ…たまに誰もいない場所でゆっくりしたい時がある。この時間帯、ここはあまり人がこないしな。」
この話し方…伊集院はよくここに来ているんだろう。
「横…良いか?」
「…はい。」
溜息をついて伊集院が横に座る。
この世界の人間は基本容姿が優れている者が多いけど、攻略対象者は更に色々と優れている。
それなのに…
「先輩、お疲れですか?」
「…何故そう思う?」
「だって…」
近くにいて分かったけど、少し肌が荒れてるし目の下に少し隈がある。
「フフッ、そんな心配してくれるのは…お前…だけだな。」
伊集院は少し疲れた顔を見せて笑った。
あれ?今俺のこと『お前』って、言った?
そっかぁ…素になる程疲れてんだな。
イケメンは色々と大変だよなぁ。
「ここは色々な企業の人間の子どもが集まっている。親から今後の有益な繋がりを持つように言われている者も少なくないだろう…」
伊集院の家は企業としてもかなり大きい。
確か伊集院と財前の親の会社は設定では国外でも企業展開をしている大手だったはずだ。
確かにその2人に学校にいる間に上手く取り入って繋がりを持とうというヤツもいるだろう。
「お前は…そんな事考えてなさそうだな。」
「は?当たり前でしょ。」
んなもん、親の会社であって俺のじゃないし継ぐつもりもない。
「プッ!」
「何ですか⁉」
「フッ…お前は全く…」
「わわっ!」
クシャクシャと頭を撫ぜられ、顔を上げると今まで見たことのない伊集院と目が合った。
「…なぁ…誠…副寮長になる気はないか?」
「ふぇ?」
コイツもかぁっ⁉
「アハハ、何て声出してるんだ。でも…俺は真剣だよ。」
「いえっ…そんな面ど…いえっっ、そんな大役は俺には無理っ…先輩?!」
___グッ…___
逃げようとしたら、伊集院に手を握られた。
「ん…先輩…痛ぃっ…」
「…ハッ…ゴメン。」
これは…いやいや、俺はお助けキャラだし勘違いだな☆
「俺は入学してからのお前を見てきたが、寮で困っているヤツをコッソリ助けていただろう?」
「…え?」
ユキのお助けキャラとしての役に立っていない居たたまれなさに、寮のヤツのフォローをコッソリやっていたんだけど…伊集院と絡んでいなかったよな?
「トラブルを聞いて本人達に聞いてみたらお前のアドバイスで解決したと聞いたり、1人で浮いてる寮生にお前が声を掛けて話を聞いていたりしていたんだろ?」
いや、後半のはただ単に1人でいるのがつまらんので偶然1人で食事していたヤツに声を掛けたんだけどね。
「あの2人に守られてるだけのヤツだと思っていたのに…フッ…」
「先輩?」
「…良いな…」
何が?
伊集院が俺の顔を見て微笑む姿に何となく既視感を覚える。
ん~…何だっけな、この表情…前に見た気が…いつだっけ?
一生懸命思い出そうとしている所にユキが走ってきた。
「マコッ!」
「…邪魔が入ったな。」
「ん?先輩何か言いましたか?」
「いや、何も。」
伊集院が何か言ったっぽいけど聞こえなかった。
「ハァ…ハァ…ここに…いた。」
「ユキ、大丈夫か?」
「どうした由樹、息を切らして?」
「マコ…いえ、部屋に戻ったら誠がいなかったので…」
あれ、またストレス溜まり始めてる?
「心配して探し回ったのか……仲が良いんだな。」
「ええ。」
___グイッ___
「わっ。」
「俺達は仲良しです…だから、俺達の邪魔はしないで下さい。」
伊集院から引き剥がしてくれたのは良いけど、何でユキに抱き締められないといけないんだ?
「…邪魔…ね。分かった、今日の所は諦めよう。」
「…行こ…マコ。」
「ユキ…あ…先輩、失礼します!」
グイグイ引っ張られて俺達は部屋へと戻って行った。
あれだな、きっと学校に馴染んで落ち着いたんだろう。
でも、1年の後半になる頃…ユキは俺といるより実咲といる事が増えた。
実咲経由で学級委員に助けを求められて手伝いに行ったり、その流れで生徒会との繋がりが出来たユキが真ん中に入って仕事をしたりと俺1人の時間が増えていった。
まぁ、お助けキャラだし…本来のルートを辿ればこの状況が普通ではあるんだけどさ。
「おぅ、誠じゃん。お前1人か?」
「先輩。」
放課後、実咲とユキは生徒会の手伝いに駆り出された。
俺は暇だし…と、食堂に来たんだけど…久し振りにプライベートで財前と会ったな。
本来生徒会長だから、ルートに入らなきゃ接点もないけど今は寮長……と、言ってもやっぱりルートに入ってないから、あまり接点はないんだよなぁ。
「なになに~、パパとママはいないのかよ~。」
「何ですか、パパとママって。」
「そりゃあ、由樹と実咲だろ?」
「もぅっ、何言ってんですか!」
「アハハ、冗談だよ。でも、いつも一緒じゃん。珍しいな、いつもは3人揃わなくてもどちらかがいるのに。」
当たり前の様に財前が横に座り、俺の方を向いた。
「……何ですか?」
「ん~…拗ねてるお前が可愛いなと思ってさ。」
「もぅ、揶揄わないで下さいよ。」
「クスクス…2人の前で言ったら睨まれるし、今言っとかないとね……ねぇ、誠…」
「何ですか?」
「君さ、寮長…やってみない?」
「………は?」
待って待って待って!
これは…寮長ルートで『俺のあとを継いでくれないか』…みたいなもんだよな?
俺モブだってばよっ!
「いやいや、無理ッス!」
「え~、出来ると思うんだけどなぁ…」
「だから無理です、失礼しますっ!」
俺は足早にその場を離れ、廊下の端にある自動販売機に移動した。
ここならあまり人は来ないし、ベンチもあるからゆっくりと出来そう。
「……おや?」
「あ、伊集院先輩。」
何でこんなとこ来るんだ?
「君も…逃げて来たのか?」
ん?逃げて…確かに財前から逃げて来たけどコイツに言ったらややこしくなりそうだから黙っとこ。
「あぁ~…まぁ、そんなとこです。」
「フッ…たまに誰もいない場所でゆっくりしたい時がある。この時間帯、ここはあまり人がこないしな。」
この話し方…伊集院はよくここに来ているんだろう。
「横…良いか?」
「…はい。」
溜息をついて伊集院が横に座る。
この世界の人間は基本容姿が優れている者が多いけど、攻略対象者は更に色々と優れている。
それなのに…
「先輩、お疲れですか?」
「…何故そう思う?」
「だって…」
近くにいて分かったけど、少し肌が荒れてるし目の下に少し隈がある。
「フフッ、そんな心配してくれるのは…お前…だけだな。」
伊集院は少し疲れた顔を見せて笑った。
あれ?今俺のこと『お前』って、言った?
そっかぁ…素になる程疲れてんだな。
イケメンは色々と大変だよなぁ。
「ここは色々な企業の人間の子どもが集まっている。親から今後の有益な繋がりを持つように言われている者も少なくないだろう…」
伊集院の家は企業としてもかなり大きい。
確か伊集院と財前の親の会社は設定では国外でも企業展開をしている大手だったはずだ。
確かにその2人に学校にいる間に上手く取り入って繋がりを持とうというヤツもいるだろう。
「お前は…そんな事考えてなさそうだな。」
「は?当たり前でしょ。」
んなもん、親の会社であって俺のじゃないし継ぐつもりもない。
「プッ!」
「何ですか⁉」
「フッ…お前は全く…」
「わわっ!」
クシャクシャと頭を撫ぜられ、顔を上げると今まで見たことのない伊集院と目が合った。
「…なぁ…誠…副寮長になる気はないか?」
「ふぇ?」
コイツもかぁっ⁉
「アハハ、何て声出してるんだ。でも…俺は真剣だよ。」
「いえっ…そんな面ど…いえっっ、そんな大役は俺には無理っ…先輩?!」
___グッ…___
逃げようとしたら、伊集院に手を握られた。
「ん…先輩…痛ぃっ…」
「…ハッ…ゴメン。」
これは…いやいや、俺はお助けキャラだし勘違いだな☆
「俺は入学してからのお前を見てきたが、寮で困っているヤツをコッソリ助けていただろう?」
「…え?」
ユキのお助けキャラとしての役に立っていない居たたまれなさに、寮のヤツのフォローをコッソリやっていたんだけど…伊集院と絡んでいなかったよな?
「トラブルを聞いて本人達に聞いてみたらお前のアドバイスで解決したと聞いたり、1人で浮いてる寮生にお前が声を掛けて話を聞いていたりしていたんだろ?」
いや、後半のはただ単に1人でいるのがつまらんので偶然1人で食事していたヤツに声を掛けたんだけどね。
「あの2人に守られてるだけのヤツだと思っていたのに…フッ…」
「先輩?」
「…良いな…」
何が?
伊集院が俺の顔を見て微笑む姿に何となく既視感を覚える。
ん~…何だっけな、この表情…前に見た気が…いつだっけ?
一生懸命思い出そうとしている所にユキが走ってきた。
「マコッ!」
「…邪魔が入ったな。」
「ん?先輩何か言いましたか?」
「いや、何も。」
伊集院が何か言ったっぽいけど聞こえなかった。
「ハァ…ハァ…ここに…いた。」
「ユキ、大丈夫か?」
「どうした由樹、息を切らして?」
「マコ…いえ、部屋に戻ったら誠がいなかったので…」
あれ、またストレス溜まり始めてる?
「心配して探し回ったのか……仲が良いんだな。」
「ええ。」
___グイッ___
「わっ。」
「俺達は仲良しです…だから、俺達の邪魔はしないで下さい。」
伊集院から引き剥がしてくれたのは良いけど、何でユキに抱き締められないといけないんだ?
「…邪魔…ね。分かった、今日の所は諦めよう。」
「…行こ…マコ。」
「ユキ…あ…先輩、失礼します!」
グイグイ引っ張られて俺達は部屋へと戻って行った。
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