天界へ行ったら天使とお仕事する事になりました

mana.

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本編

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アルさんとのカフェはとても有意義だった。
パンケーキはクマの顔の形で可愛かったし、見た目も味も美味しかった。
それにドリンクも美味しかった。


……でも、周りの視線が痛かった……


確かにイケメンなアルさんの見た目と食べた時の幸せそうな顔のギャップに周りの女の子達は釘付けだったと思う。
でも、同伴者は俺だもんなぁ…
あ~んって、するのもヘミーなら見た目はキラキラしたカップルなんだけど…

アルさんがお会計をしている間に通路で待っていると、女の子達に声を掛けられた。

「…あの…」

「はい?」

「…っ…あのっ……突然お声を掛けてスミマセンッ…芸能界の方ですか?」


___芸能界の方ですか?___


いえ、界の方です…あ、違うか。

「………」

「突然失礼ですよねっ、あまりにお綺麗だったからっ。」

「えっと…違うんです。気を悪くしたんじゃなくて…あぁ、あの人のことですよね。確かにカッコイイですもんね。」

うんうん、分かるよ。
一瞬理解出来なかったけど、アルさんを芸能人と間違えたんだよね?
モデルって言っても通りそうだもん。

「いえっ、貴方もですっ!」
「日本のメディアでは観ないし…海外で活躍されてるんですか?」

「えぇっ、俺⁉」

えぇっ、こんな俺が⁉
いやいや、いくらなんでもそれは……

「失礼。」

___グイッ!___

「わっ!」

___キャア!___

女の子達にジリジリと詰め寄られていると、横からアルさんの腕が伸びて俺を引き寄せた。

「すまないね、久し振りの日本で今日は俺のワガママに付き合ってもらったんだ。この辺で、開放してもらえるかな?」

「あっ、スミマセン!」

「良いんだ、でも……」

アルさんが女の子達の顔に近付く。

「プライベートを楽しみたいから……内緒でね。」

「…ハイ♡」

うわぁ…イケメン&イケメンボイスのダブルパンチ。
女の子達が一気に大人しくなった。

「さぁ、ルカ。今の内だ。」

俺達は急いでカフェを出た。


**************


「アルさん、芸能人と間違えられてたね。」

「あぁ。今の時代は俺の姿の印象が良いのか、よく声を掛けられるんだ。」

俺が生きていた時もイケメンだったと思うけどなぁ。
時代によって美への感覚は微妙に変わるとは思うけど、今も昔もアルさんはカッコイイと思う。

「……ルカ…」

「何?」

「その…そんなに見詰めないでくれ……少し…心臓に悪いんだが…」

「あっ、ゴメンね。久し振りの人間の姿を見たから心に焼き付けようと思って。」

「……っ……ルカこそ……」

___ギュッ!___

「わっ!」

「…久し振りの姿だ…この黒髪も…今の姿も懐かしくて…良いな。」

___ギュ…___

アルさんが私を抱き締めて、髪の匂いを嗅がれた。

「ぁ…何か匂う?」

「いや、お前から香るのはいつも甘い香りだけだよ。」

「甘い?さっき甘いのを食べたからかな…まぁ、変な匂いじゃないなら良いんだけど。」

アルさんは、天上界へ行ってから特にスキンシップが激しくなった。
多分怖がられる事が多かったし、今まで出来なかったことを怖がらない俺にしたいんだろうな。
俺も、他のスキンシップはヘミーやネル姉さんくらいだからこのくらいは大歓迎だ。
そういえば、ゼスさんにされた時は何故か怒ってたな。
ゼスさんはアルさんの反応を楽しむ為に俺にしてる感じだけど。

「…あの…アルさん…」

「何だ?」

「ちょっと、注目浴びてる。」

気付けば遠巻きに女の子達がスマホ片手に写真を撮られていた。
話からすると撮影と間違えてる様だ。

「…後で消さなければ。」

「あっ、そうだね。俺達の存在を知られたら危ないもんね。」

「ん……あぁ、そんな所だ。」

俺達はアルさんが地上界にいる時のマンションに戻り、俺が食事を作っている間にアルさんはネル姉さんに連絡を取って記憶操作と写真の消去を頼んでいた。


***********


「おはよ~。」

「おはよ、ルカ。昨日はアルと出掛けたの?」

「うん、可愛いカフェに行ってきた。」

「あぁ、あの人本当に可愛いもの好きだよね~……で、お泊まりしてきたの?」

「ん、うん。空いてる部屋を使わせてもらったよ。」

凄く可愛い壁紙に、可愛い小物やベッドだったけど。

「え゛っ?同じ部屋じゃないの⁉︎」

「何で一緒の部屋なの?」

「え゛ぇ~……一緒じゃなかったのかぁ…」

「フッ、だから言っただろう?」

「あ、ゼスさん。おはようございます。」

「おはよう、ルカ。アルの機嫌が良いのはお前のお陰だな。では、ヘミー。」

「あの人は全く……はい、ど~ぞっ。」

ブスッとしたへミーがゼスさんに光るビー玉を手渡した。

「ん、それって魔法玉?ゼスさんに借りてたの?」

天上界には紙幣等のお金は無い。
代わりに魔法玉等で等価交換が行われる。

「いや、違…」

「あぁ、アルがどれだけルカを大事にしているか…再認識しただけだ。」

俺がアルさんに大事にされてるからへミーがお金を払うの?

「もうっ、アルはさぁ…地上界で言うところの『ヘタレ』なんだよっ!」

「いや、アルは地上界ではそれなりに付き合いはあるはずだぞ。」

話が見えない。

「さぁ、そろそろ仕事の時間だ。ルカ、この書類を異世界事業部の大天使からサインをもらってきてくれ、そして、また悪いんだが地上界へ行ってネルへ届けてくれないか?」

話を深く聞こうとした所でゼスさんに仕事を割り振られてしまった。

「はい。」

「その後アルの手伝いをしてくれ。アルのサポート担当がこの前体調を崩してしまってな。長期出張という形で行ってほしい。」

「え、俺が?」

まだまだ足を引っ張りそうなのに。

「無自覚にも程があるな、ルカ。お前はしっかりとこの仕事をこなしている。へミーにはまだ届かないが、お前にはこの先期待をしているんだ。」

「えぇぇ…」

「ルカ、加護のせいもあると思うけど、最近特に綺麗になってるよね。気付いてないの?人間の美しさは仕事への献身さでも加護は違うよ。頑張りを認められる程、どんどん加護を与えられて綺麗になっていく。今では僕達と同じ天使と間違われる程だよ?」

「それは羽根が大きくなったからじゃなくて?」

この数年で小さかった背中の羽根は今では長年いる元人間の羽根のサイズより一回り大きい。
俺が天使と間違われるのは髪と羽根のせいだと思ってたけど…顔も?
あんまり鏡見ないからなぁ…
天上界ではお風呂はあるけど、乾燥はお風呂から上がったら優しい風が身体を纏ってすぐに乾く。
髪もサラサラなので櫛を通すこともないから鏡を見ることはほとんどない。
人間界のガラス越しではマジマジと見ないしなぁ…

「…なるほど…ズルい…ゼス…知ってたでしょ?」

「何のことだ?俺は何も聞いていない。見ていただけだ。」

「一緒でしょっ!」

プンプン怒っているへミーに一見無表情に見えるけど、口の端が少し笑ってるゼスさん。
この2人と少し離れるのか…ちょっと寂しいな。

「ルカが帰ってくる頃にはへミーの進級試験の結果も出ているだろう。良い結果が出るようにお前も頑張らないとな。」

「分かってるっ!見とけよっ、受かってゼスよりカッコイイ中級天使になってやるんだからなっ!」

…サラサラヘアの中級天使…進級試験より難しいかも…

「何、ルカ?」

「ううん、何でもないっ!頑張ってね、へミー‼︎」

俺はこのままいるとウッカリと何か失言しそうになったので、いそいそと書類を持って異世界事業部へと移動した。
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