天界へ行ったら天使とお仕事する事になりました

mana.

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本編

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「ルカ、今日は残業か?」

「アルさんも?」

カスタマーに転生者の追加付与の申請結果の書類を届けて自分の席に戻ろうとしたら、アルさんが書類を持ってやって来た。
転生者達がそれぞれの地へ転生後、エリア監査担当の天使が状況を見て追加付与の有無を判断してカスタマーへ申請を上げて来たものを再審査するものだ。
クレジットカードで例えるなら増額審査みたいなものだろう。
転生勇者への付与で極希に自分が付与対象となるウッカリ天使もいるので、審査するこちらも気が抜けない。
なので毎回書類内容はダブル、トリプルチェックだ。

最近のアルさんは地上にいる事が多く、こちらに来ても報告処理での残業が多い。
ここ最近、天国の門を潜る人が多く、そして霊体回収も追いついていないようだ。

「今は少し人手不足でな…まぁ、お互い様か。」

「フフッ、そうだね。」

「ルカ。」

「何?」

「今度の休みはいつだ?」

「えっと、3日後かな?」

天界だけあって比較的ホワイトな職場だから休みの申請は通るけど、今月は特に申請してなかったな。

「俺もその日は休みだ。その…悪いんだが…ちょっと付き合ってくれないか?」


___トクン___


あれ?

「…え?」

「あっ…いや…そのっ……行きたい場所があって…だな。」

珍しく顔を赤くしてアルさんが挙動不審になっている。
一瞬ドキッとしたのは、珍しいアルさんの挙動に驚いたのかな?

「行きたい場所?」

「あぁ…それは地上なんだが…」

キョロキョロと周りの人目を気にしていたせいか、私の耳元でコッソリ教えてくれた。


「……行ってみたいカフェがあるんだ。」


***************


___3日後___



天界に行ってからはお盆で霊体の状態で地上へ行く事はあるけど、実体は久し振りだ。
今日は天使の付き添いという名目で実体化の許可を取り、久し振りに地面に足を着けて歩いている。
久し振りだと身体が少し重いかも。

アルさんは久し振りに地上へ降りる俺を心配して、わざわざ天界へ戻ってきてエスコートしてくれた。
毎年お盆に霊体で来ていたとはいえ、迷いそうだったからありがたかったかも。

「ここだ。」

「そうなん…んん?」

目の前に見えるのはファンシーなピンクに可愛らしいクマのキャラクターの看板のあるカフェ。
そのカフェに沿って並んでいる可愛らしい女の子達の行列を整備するのはこれまた可愛らしいメイドさんだ。

「…アルさん……俺…場違いじゃ…」

「いや、ルカじゃなきゃ駄目だ。」

「ヘミーの方が良かったんじゃ…」

「いや、アイツはこういう店は苦手らしくて…」

いや、こんな可愛らしいカフェにイケメンと俺?

………浮いてる………

「こんにちは~、お2人様ですかぁ?」

「あぁ、2人だ。」

「かしこまりましたぁ。」

メイドさんが順番用のボードにアルさんの地上用の名前と人数を記入する。
そして、何事も無いようにニッコリ笑って次のお客へ聞いていた。
う~ん、プロだ。
結構な長蛇の列で覚悟をしていたが、アルさんと話していたらあっという間に席に通された。

「…アルさん、ここって…」

そういや、全く聞いてなかったな。

「あぁ、ここは…」

アルさんがメニューを広げて言った。

「ここは、くまくまカフェと言うんだが…その……クマをモチーフにしたスイーツが美味しいらしいんだ。」

……くまくま………スイーツ……

「先日、ネルの店に来た客に教えてもらってな……実は…恥ずかしいんだが……甘いものと…可愛いものに目がなくて……」

顔を真っ赤にしてしどろもどろと話すアルさん。

何だろう………可愛い………

「フフッ、1人では恥ずかしかったの?」

「まぁ、そんな所だ。こんな厳つい俺だけでは場違いだからな。」

「そんな事ないと思うけどな。アルさん、カッコいいもん。」

「そんな事を言うのはルカだけだ。」

「そうかなぁ…まぁ、いいや。今日は沢山食べよ♪」

「そうだな……あ、スミマセン。」

アルさんが手を挙げるとメイドさんがやってきた。

「じゃあ……俺は…」

ふと、周りを見ると顔を赤くした女の子達がこちらをチラチラ見ている。
アルさんの事が怖かったらあんな赤くして見ないよね。
うんうん、分かるよ。アルさん、カッコいいよね。

「……でお願いします。ルカは何にする?」

「あぁっ、俺ね!」

俺も慌てて注文したんだけど………

「はぁい、お待たせ致しましたぁ☆『ある日森の中で出逢ったくまさんにときめいちゃったの☆』…と、『蜂蜜飲みたい気分なの♡』……の、お客様~♡」

「……はい……俺……です…」

「失礼しま~す♡」

メイドさんがテキパキとアルさんの前にベリー系の果物が乗った生クリームたっぷりのパンケーキと、ホットレモネードが置かれる。

「では、こちらのぉ…『くまさんに追い掛けられてドッキドキ☆森の中での鬼ごっこ♡』…と、『くまさんと情熱的なダンスを踊りましょ♡』…は、お客様でございますね♪」

「……はぃぃ……」

…このメニュー、恥ずかし過ぎるよ…

「失礼しまぁ~す☆」

もう1人のメイドさんが俺が頼んだ生クリームと小豆の乗った抹茶のパンケーキにローズヒップティーを置いた。
こういうお店って…何でこうタイトルが長いんだろ…メイドさん達もよく覚えるよね。
メイドさん達が他のテーブルへと注文を取りに離れたのを見計らって、私達はおずおずと顔を上げた。

「アハハ…確かに1人は恥ずかしいね。」

「だろう?」

注文自体は横に解説と写真があるので指差しで出来るが、配膳は正式名を言われるので気恥ずかしさが倍増だ。

「でも、味はかなり美味いらしいんだ。」

「確かにそうだね。じゃあ、いただきま~す。」

ローズヒップに蜂蜜を入れて甘さを少し足し、パンケーキを切って一口食べると、口の中で上品な抹茶と小豆の香りが広がった。

「…っ…美味しいっ!」

「……っ…確かに!」

2人で顔を見合わせて微笑んだ。

「この抹茶、良いお茶屋さんのだよ。味がしっかりしてるのに苦味も少ないの。」

「あぁ、このパンケーキも上質なバニラビーンズを使っていて生クリームともよく合っている。それに果物はどれも甘い。」

「そうなの?」

「あぁ、食べてみるか?」

「……っ…」

「…どうした?」

…アルさん……何事も無い様にフォークに果物突き刺して俺に食べさせてくれてるけど……

………周りの視線が……痛いです………

「ハッ…すまない!俺が口にしたフォークでは嫌だよなっ。」

「あっ…違うよっ!」

アルさんって、結構視線に鈍感なのかな?
その後、シュンとしてしまったアルさんが可哀想になり、一口だけもらう事にした。
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