ごめん、大好きだよ。

織山青沙

文字の大きさ
上 下
8 / 20

第8話 情けねぇ

しおりを挟む
***


3日後の日曜日──


2人はとある場所に来ていた。


「はよう」
「おはよう」


家は隣同士だが、デート感を出す為か、現地集合した2人。


「じゃあチケット買い行くか」


翔はそう言うと入口近くにある券売機へ向かった。


「うん! チケットいくら?」
「俺払うからいいよ」
「でも……」


カバンから財布を取り出す愛を止めると、翔は大人2名のチケットを選択した。


「俺が誘ったんだから。な?」
「ありがとう」


そして、お金を投入すれば発券されるチケット。


「はい、チケット」


翔は、その発券されたチケットの内、片方を愛に渡した。


「ありがとう」


チケットを受け取り、ゲートを抜ける2人。

開園して間もないというのに園内は人が賑わっていた。


「翔! はーやーく! あれ乗ろう!」
「あ、おう」
「(あいつめちゃくちゃ楽しんでんじゃねぇか……)」


愛はマップを片手に後ろを歩く翔を急かした。


──2人が来ているのは遊園地。


「(あんなに俺とのデート恥ずかしそうにしてたくせに。俺のこと意識してたんじゃねぇのかよ)」


翔は寂しそうな顔を浮かべるも楽しそうにはしゃぐ愛を微笑ましそうに見つめた。


「まずはジェットコースター!」
「初めからそれ乗るのかよ」
「だめ?」
「いや、だめじゃねぇけど。まあ、楽しむか」
「楽しもう!」


ジェットコースターはそこまで混んでいなかった為、数分でゴンドラに乗り込むことが出来た。


「愛……今日は来てくれてありがとうな」


ゴンドラが動き出し急斜面を上昇中、翔は右隣に座る愛の手に自分のそれを重ねた。


「翔……って……キャー!」


愛が翔の方を向いた瞬間、ゴンドラは斜面を急降下した為、愛を含む人々の悲鳴に似た絶叫がこだまする。


「楽しかったー!」
「めっちゃ楽しいな」


ジェットコースターを乗り終えた2人は楽しそうに笑いあっていた。

2人はその後も、まるで子供に戻ったかのように遊園地を堪能した。


「よし、昼飯にするか。近くにフードコートあるからそこでいいか?」
「うん! 大丈夫だよ」


翔が広げるマップを横から覗き込む愛。

自然と距離は近くなり、肩と肩が重なり合う。


「じゃあ、そこ向かうか……っ! わりぃ」
「っ! あ、いや……あたしこそ……ごめん」


翔がマップから愛に視線を移す。


必然的に顔は愛の方を向き、鼻と鼻がくっつきそうな程の距離となる。

あまりの近さに慌てふためく2人。


賑やかな園内の中心で顔を真っ赤にし謝り会う2人は異様な光景だった。


「な、なに食べるか決めとけよ。先に席取ってくる」


翔は愛にマップを押し付けると足早に歩き出した。


「(あー! くそっ! なんで普通にできないんだよ! あいつに嫌な所ばっか見られてて……情けねぇ……)」


翔は右手を額に当て酷く落ち込んでいた。


今まで付き合ってきた彼女に出来ていた普通の事が愛が相手だと全て空回る。

好きだからこそかっこよく見せたい──


だが、悲しいくらいに翔にとって嫌な所ばっかり愛に見られてしまったようだ。


「翔! 待ってよ!」
「……もう決めたのか?」
「まだだけど……一緒に行こうよ。1人じゃ寂しいじゃん……」
「はぁ……」
「え? なんでため息? 食べたいもの決めてなかったから?」
「無自覚かよ。まあ、いいけど。さっさと飯食って……ここ行こうぜ」


翔はニヤリと笑みを浮かべながら愛にマップを見せ、とある場所を指さした。


「無自覚? 何が?」
「もういいから。ここ行くからな。OKってことでいいんだよな?」


愛は翔が指さす場所に視線を移す。


「え? ……ってお化け屋敷じゃん! 嫌だよ! あたしが怖いの苦手って知ってるよね?」


その場所を見た愛は声を上げた。


「知ってるけど。まあ、俺が一緒だから大丈夫だって」
「もう……酷い……」
「そんなに嫌かよ」
「嫌かって言われれば嫌だよ。それに……あたし誰かに掴まってないとお化け屋敷無理なんだけど……」
「じゃあ俺のこと掴んで入ればいいだろ? それなら大丈夫だろ?」
「いいの?」
「いいっていうか……俺は嬉しいけど」
「……っ!」


翔の言葉に再び赤くなる愛の頬。


しおりを挟む

処理中です...