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第20話 金魚すくいと竜
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「あれ? 柚佑達どこいったかな?」
「ほんとだ。射的やってる間にいなくなってる」
日向の問に葵は辺りを見渡す。
だが、柚佑たちの姿は見当たらなかった。
「なに? あの人だかり」
ふと、葵はひとつの屋台に目が止まった。
「金魚すくいだね。まさか……」
それは金魚すくいで、屋台を囲うように人だかりが出来ていた。
日向は人だかりを確認するなり、歩幅を早めるり
葵は必死にその後を追う。
「やっぱり、ここにいた」
人だかりをかき分けた日向は口を開く。
金魚すくいをしてる人物は、突然現れた日向に目もくれず、無心で金魚をすくいを続ける。
「日向達どこ行ってたんだよ。竜さん今年も凄いぞ!」
そんな日向に蓮は興奮気味に言った。
そう、金魚すくいをしていたのは竜だった。
「え、竜すごっ!」
遅れて人だかりの中に顔を出したのは葵だ。
竜が左手に持つボールの中身を見るなり驚愕した。
ボールの中にはたくさんの金魚が泳いでいた。
恐らく水槽の中にいる金魚の半分はお椀の中に入っていそうなほどだ。
それだけ掬っても、ポイに貼られている紙は一切破れていなかった。
「兄ちゃん今年も凄いね。また全部掬っちゃうんじゃない?」
「……」
屋台のおじさんが竜に話しかけるも無心で続ける。
「今年もって毎年来てるの?」
「そうだよ。一昨年からかな? たまたま来て竜さんが金魚すくいにハマったらしいよ」
葵の問に答えたのはいつの間にか現れた柚佑だった。
「すごいね。あれ? 柚佑いつ来たの?」
「俺はずっといたんだけどな。葵ちゃん酷いな」
「ごめん、気づかなかった」
葵は再び竜に視線を向ける。
水槽の中にいた金魚は残り数匹となっていた。
「お、兄ちゃん凄いな。また全部掬っちまったよ。今年もいいか?」
水槽の金魚を全て掬った竜は、おじさんにボールとポイを手渡した。
「ああ」
おじさんは竜の返事を聞くなりボールに入った大量の金魚を水槽に全て戻した。
「あ、戻すんだ」
「竜さんは毎年ただ掬うだけ。初めに金魚すくいした時におじさんから許可もらったみたい」
「へえ。凄いね」
「そのお菓子は?」
柚佑は葵が手に持つ袋に視線を移した。
「ああ、これは射的で取った」
「葵だって凄いじゃん」
「ありがとう」
葵は嬉しそうに口を緩める。
「じゃあ次行こうぜ」
蓮が先頭を切って歩きだす。
「おじさん、金魚すくいやる」
「僕も!」
「あのお兄ちゃんいっぱいすくってたから、僕も頑張る!」
「あたしもやる!」
竜が後にした金魚すくいの屋台では、たくさんの子供達で賑わっていた。
「ほんとだ。射的やってる間にいなくなってる」
日向の問に葵は辺りを見渡す。
だが、柚佑たちの姿は見当たらなかった。
「なに? あの人だかり」
ふと、葵はひとつの屋台に目が止まった。
「金魚すくいだね。まさか……」
それは金魚すくいで、屋台を囲うように人だかりが出来ていた。
日向は人だかりを確認するなり、歩幅を早めるり
葵は必死にその後を追う。
「やっぱり、ここにいた」
人だかりをかき分けた日向は口を開く。
金魚すくいをしてる人物は、突然現れた日向に目もくれず、無心で金魚をすくいを続ける。
「日向達どこ行ってたんだよ。竜さん今年も凄いぞ!」
そんな日向に蓮は興奮気味に言った。
そう、金魚すくいをしていたのは竜だった。
「え、竜すごっ!」
遅れて人だかりの中に顔を出したのは葵だ。
竜が左手に持つボールの中身を見るなり驚愕した。
ボールの中にはたくさんの金魚が泳いでいた。
恐らく水槽の中にいる金魚の半分はお椀の中に入っていそうなほどだ。
それだけ掬っても、ポイに貼られている紙は一切破れていなかった。
「兄ちゃん今年も凄いね。また全部掬っちゃうんじゃない?」
「……」
屋台のおじさんが竜に話しかけるも無心で続ける。
「今年もって毎年来てるの?」
「そうだよ。一昨年からかな? たまたま来て竜さんが金魚すくいにハマったらしいよ」
葵の問に答えたのはいつの間にか現れた柚佑だった。
「すごいね。あれ? 柚佑いつ来たの?」
「俺はずっといたんだけどな。葵ちゃん酷いな」
「ごめん、気づかなかった」
葵は再び竜に視線を向ける。
水槽の中にいた金魚は残り数匹となっていた。
「お、兄ちゃん凄いな。また全部掬っちまったよ。今年もいいか?」
水槽の金魚を全て掬った竜は、おじさんにボールとポイを手渡した。
「ああ」
おじさんは竜の返事を聞くなりボールに入った大量の金魚を水槽に全て戻した。
「あ、戻すんだ」
「竜さんは毎年ただ掬うだけ。初めに金魚すくいした時におじさんから許可もらったみたい」
「へえ。凄いね」
「そのお菓子は?」
柚佑は葵が手に持つ袋に視線を移した。
「ああ、これは射的で取った」
「葵だって凄いじゃん」
「ありがとう」
葵は嬉しそうに口を緩める。
「じゃあ次行こうぜ」
蓮が先頭を切って歩きだす。
「おじさん、金魚すくいやる」
「僕も!」
「あのお兄ちゃんいっぱいすくってたから、僕も頑張る!」
「あたしもやる!」
竜が後にした金魚すくいの屋台では、たくさんの子供達で賑わっていた。
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