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第42話 蓮と大雨
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「うわっ! 雨凄いな」
「本当だ。そういえばテレビで台風が近づいてるって言ってた気がする」
学園祭から数週間後、昇降口で蓮と葵は立ち止まり空を見上げている。
その視線の先には土砂降りの雨が地面を叩きつける。
「絶対それのせいじゃん! 今迎え呼ぶから待ってろ」
「迎え?」
「車の方がいいだろ? 単車じゃ濡れちまう」
「ありがとう。他のみんなは大丈夫なの?」
「他は男。お前は女だ。濡らすわけにはいかないだろ?」
「……」
葵は蓮を見つめ瞬きを数回繰り返す。
「なんだよ」
「いや、蓮って優しいんだなって思っただけ」
「あったりまえだろ? 俺は優しいんだよ!」
葵の言葉に蓮は満面の笑みを浮かべる。
そして、携帯でどこかへ連絡をする。
「お、来た」
数分後、校門の前に真っ黒い車が横付けされる。
さすがに中には入れない為、昇降口から校門までは雨に濡れてしまう。
「よし、行くぞ」
「え、ちょっと」
蓮は葵の手を掴むと走り出す。
車の後部座席のドアを開けた蓮は葵を先に乗せると、自分はその後に乗り込む。
「くそっ! 濡れたな」
「蓮さん、どうぞ使ってください」
「あ、ありがとう」
蓮は凌から手ぬぐいを受け取ると頭と肩あたりの水げを拭う。
「葵は大丈夫か?」
「あーそんなに濡れてないから大丈夫」
葵は自分の体を見渡し濡れていないことを確認した。
「到着しました」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
凌が車を停め、降りる2人。
「うわっ! また雨酷くなってるっ!」
葵は右側の後部座席のドアを開けると、車を飛び出し倉庫へ走り出す。
「あ! おいっ!」
「(あーあいつびしょ濡れじゃねぇか。傘あったのにな……)」
蓮は右手で差す傘を見つめる。
車の中に入っていた傘を差す蓮は土砂降りの雨でもほとんど濡れてない。
だが、葵はこの雨の中傘も差さずに走り出した為、びしょ濡れだ。
「めっちゃ濡れた。最悪だ」
「待てって言っただろう。傘あったんたから」
「それだったらもっと早く言ってよ」
「葵が先に行ったから言えなかったんだよ。お風呂場でタオル取ってこいよ」
「んー、荷物置いたら持ってくる」
葵はそう言うとそのまま2階へ上がって行く。
「ただいまー」
「うわっ! 凄い濡れてるね。大丈夫?」
「葵ちゃん、大丈夫!? ちゃんとタオルで拭きなね」
いつもの部屋を開ければ柚佑と日向が心配そうな顔を浮かべる。
「うん。ありがとう。お風呂場行ってくる」
「行ってら」
そう言って、葵と入れ替わりに入って来たのは蓮だ。
この倉庫の2階には幹部以上が入れる部屋の他、寝室が1部屋。
そして、風呂、トイレが設置されている。
「あれ? お風呂って竜さん入ってなかったっけ?」
「そうだっけ?」
そんな日向と柚佑の会話は既に部屋を出た葵の耳には届いていなかった。
「(タオル、タオル。雨に濡れるのは久々だな)」
そんな事を考えながら葵は脱衣場のドアを開ける。
「本当だ。そういえばテレビで台風が近づいてるって言ってた気がする」
学園祭から数週間後、昇降口で蓮と葵は立ち止まり空を見上げている。
その視線の先には土砂降りの雨が地面を叩きつける。
「絶対それのせいじゃん! 今迎え呼ぶから待ってろ」
「迎え?」
「車の方がいいだろ? 単車じゃ濡れちまう」
「ありがとう。他のみんなは大丈夫なの?」
「他は男。お前は女だ。濡らすわけにはいかないだろ?」
「……」
葵は蓮を見つめ瞬きを数回繰り返す。
「なんだよ」
「いや、蓮って優しいんだなって思っただけ」
「あったりまえだろ? 俺は優しいんだよ!」
葵の言葉に蓮は満面の笑みを浮かべる。
そして、携帯でどこかへ連絡をする。
「お、来た」
数分後、校門の前に真っ黒い車が横付けされる。
さすがに中には入れない為、昇降口から校門までは雨に濡れてしまう。
「よし、行くぞ」
「え、ちょっと」
蓮は葵の手を掴むと走り出す。
車の後部座席のドアを開けた蓮は葵を先に乗せると、自分はその後に乗り込む。
「くそっ! 濡れたな」
「蓮さん、どうぞ使ってください」
「あ、ありがとう」
蓮は凌から手ぬぐいを受け取ると頭と肩あたりの水げを拭う。
「葵は大丈夫か?」
「あーそんなに濡れてないから大丈夫」
葵は自分の体を見渡し濡れていないことを確認した。
「到着しました」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
凌が車を停め、降りる2人。
「うわっ! また雨酷くなってるっ!」
葵は右側の後部座席のドアを開けると、車を飛び出し倉庫へ走り出す。
「あ! おいっ!」
「(あーあいつびしょ濡れじゃねぇか。傘あったのにな……)」
蓮は右手で差す傘を見つめる。
車の中に入っていた傘を差す蓮は土砂降りの雨でもほとんど濡れてない。
だが、葵はこの雨の中傘も差さずに走り出した為、びしょ濡れだ。
「めっちゃ濡れた。最悪だ」
「待てって言っただろう。傘あったんたから」
「それだったらもっと早く言ってよ」
「葵が先に行ったから言えなかったんだよ。お風呂場でタオル取ってこいよ」
「んー、荷物置いたら持ってくる」
葵はそう言うとそのまま2階へ上がって行く。
「ただいまー」
「うわっ! 凄い濡れてるね。大丈夫?」
「葵ちゃん、大丈夫!? ちゃんとタオルで拭きなね」
いつもの部屋を開ければ柚佑と日向が心配そうな顔を浮かべる。
「うん。ありがとう。お風呂場行ってくる」
「行ってら」
そう言って、葵と入れ替わりに入って来たのは蓮だ。
この倉庫の2階には幹部以上が入れる部屋の他、寝室が1部屋。
そして、風呂、トイレが設置されている。
「あれ? お風呂って竜さん入ってなかったっけ?」
「そうだっけ?」
そんな日向と柚佑の会話は既に部屋を出た葵の耳には届いていなかった。
「(タオル、タオル。雨に濡れるのは久々だな)」
そんな事を考えながら葵は脱衣場のドアを開ける。
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