42 / 75
第41話 菖人と桃李 ②不安
しおりを挟む
「帰るか」
「あ、うん」
「とりあえず、あおの居場所が分かってよかった。それに……俺たちがいなくても萩人さんが居れば大丈夫だろ」
「(本当は……俺があおの隣にいてやりたかった……。もう一緒にいることは出来ねぇのか?)」
昇降口を出た菖人は再び後ろを振り返る。
だが、そこに葵の姿はもうない。
「(もう、いねぇか。会えた……会えて嬉しい。けど、あそこまで拒絶されるのはキツイな……)」
「菖人はさ……葵に戻ってきてほしいとは思わないの?」
「……そりゃあ、戻ってきてほしいに決まってんだろ。あのことを知ってる奴らだって受け入れてくれるとは思う。だけど、肝心のあおがあんな調子じゃぁまだ難しいだろうな」
「だよね。いつか……葵が落ち着いたらゆっくり話したいな。あれは葵のせいじゃないんだから……1人で背負わないでほしい……っ」
桃李は下ろされた拳をきつく握りしめる。
あの日、葵を含めた龍華はとある倉庫にいた。
暫くして、あることをきっかけに鉄パイプの下敷きになった桜玖の姿が──
桜玖に駆け寄る葵。
柑太に名前を呼ばれ葵が振り向こうとした瞬間──
葵の後ろには血だらけの柑太の姿があった。
──慌ただしく逃げ出す人。
──動揺する仲間たち。
──そして、震えた声で泣き叫ぶ葵。
それをきっかけに龍華を去ることになった葵。
「そうだな。でもあおが生きてることが分かった。あいつら……桜玖と柑太が守った命だ。それだけ知れてよかった。な?」
菖人は拳を握り俯く桃李の肩に腕を回す。
桃李は菖人の問いかけに無言で頷く。
そして、2人はその場を後にした。
「出してくれ」
菖人と桃李は学校近くに停めさせていた真っ黒い車の後部座席に乗り込む。
そして、菖人は運転席に座る大塚一犀(オオツカ イッセイ)に声を掛ける。
「承知しました」
黒い髪をハーフアップにした一犀はミラー越しに菖人と桃李の姿を確認すると車を走らせた。
葵の学校から数十分かけ、龍華の倉庫に到着した。
「到着しました」
「サンキュー」
「ありがとう」
一犀が車を停めると菖人と桃李は礼を告げ降りていく。
「菖人さん、桃李さん! おかえりなさい」
倉庫の2階には幹部以上が入れる部屋がある。
そこを開ければ青髪の男が心配そうな顔を浮かべている。
部屋には茶色のローテーブル。
そして、テーブルを囲うように様々な大きさのソファーか置かれてていた。
3人掛け用のソファーに座る彼は倉田桔平 (クラタ キッペイ)、現幹部だ。
葵がいた時は下っ端リーダーだった。
祭りの目撃情報を菖人達に教えてくれた人物でもある。
「ああ」
菖人はそう口を開くと1人掛け用ソファーに腰掛ける。
「桔平大丈夫だから、そんな顔しなくても。葵はいたよ。……まだ、話せる状態じゃないけどね」
菖人の代わりに桃李が口を開く。
桔平の不安そうな顔を見た桃李はなるべく明るく話していた。
「葵さんいたんですね。よかった……」
"話せる状態じゃない"というのはあまり喜ばしいことではないが、"生きていた"その確認が取れたことに桔平は安堵の表情を見せた。
「あ、うん」
「とりあえず、あおの居場所が分かってよかった。それに……俺たちがいなくても萩人さんが居れば大丈夫だろ」
「(本当は……俺があおの隣にいてやりたかった……。もう一緒にいることは出来ねぇのか?)」
昇降口を出た菖人は再び後ろを振り返る。
だが、そこに葵の姿はもうない。
「(もう、いねぇか。会えた……会えて嬉しい。けど、あそこまで拒絶されるのはキツイな……)」
「菖人はさ……葵に戻ってきてほしいとは思わないの?」
「……そりゃあ、戻ってきてほしいに決まってんだろ。あのことを知ってる奴らだって受け入れてくれるとは思う。だけど、肝心のあおがあんな調子じゃぁまだ難しいだろうな」
「だよね。いつか……葵が落ち着いたらゆっくり話したいな。あれは葵のせいじゃないんだから……1人で背負わないでほしい……っ」
桃李は下ろされた拳をきつく握りしめる。
あの日、葵を含めた龍華はとある倉庫にいた。
暫くして、あることをきっかけに鉄パイプの下敷きになった桜玖の姿が──
桜玖に駆け寄る葵。
柑太に名前を呼ばれ葵が振り向こうとした瞬間──
葵の後ろには血だらけの柑太の姿があった。
──慌ただしく逃げ出す人。
──動揺する仲間たち。
──そして、震えた声で泣き叫ぶ葵。
それをきっかけに龍華を去ることになった葵。
「そうだな。でもあおが生きてることが分かった。あいつら……桜玖と柑太が守った命だ。それだけ知れてよかった。な?」
菖人は拳を握り俯く桃李の肩に腕を回す。
桃李は菖人の問いかけに無言で頷く。
そして、2人はその場を後にした。
「出してくれ」
菖人と桃李は学校近くに停めさせていた真っ黒い車の後部座席に乗り込む。
そして、菖人は運転席に座る大塚一犀(オオツカ イッセイ)に声を掛ける。
「承知しました」
黒い髪をハーフアップにした一犀はミラー越しに菖人と桃李の姿を確認すると車を走らせた。
葵の学校から数十分かけ、龍華の倉庫に到着した。
「到着しました」
「サンキュー」
「ありがとう」
一犀が車を停めると菖人と桃李は礼を告げ降りていく。
「菖人さん、桃李さん! おかえりなさい」
倉庫の2階には幹部以上が入れる部屋がある。
そこを開ければ青髪の男が心配そうな顔を浮かべている。
部屋には茶色のローテーブル。
そして、テーブルを囲うように様々な大きさのソファーか置かれてていた。
3人掛け用のソファーに座る彼は倉田桔平 (クラタ キッペイ)、現幹部だ。
葵がいた時は下っ端リーダーだった。
祭りの目撃情報を菖人達に教えてくれた人物でもある。
「ああ」
菖人はそう口を開くと1人掛け用ソファーに腰掛ける。
「桔平大丈夫だから、そんな顔しなくても。葵はいたよ。……まだ、話せる状態じゃないけどね」
菖人の代わりに桃李が口を開く。
桔平の不安そうな顔を見た桃李はなるべく明るく話していた。
「葵さんいたんですね。よかった……」
"話せる状態じゃない"というのはあまり喜ばしいことではないが、"生きていた"その確認が取れたことに桔平は安堵の表情を見せた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる