舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

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第40話 菖人と桃李 ①再会

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「ここだな」
「ここに葵がいるのか……」

学園祭で賑わう校門前には2人の男がいた。

これは葵と菖人、桃李が再会する数分前のこと。

「桃李が見つけた掲示板、桔平のダチの目撃情報からして、この町にいるのは確かだろう」
「そうだね……」
「それに、ここには萩人さんがいるはずだ。あおがいるとしたらここだろ」

菖人は校門に設置された学校銘板を見つめる。

金属板には"立河学園"と彫り込まれている。

「立河学園……萩人さんと同じ名字だね」
「ああ。行くか」

2人は校門を抜け、昇降口へ向かう。

「凄いな。看板たくさん出てんな」
「そうだね。葵がここにいるとしたら何やってるんだろう」
「元男子校だし、ホストだったりしてな」
「ありえそう。逆にメイドかもしれないな……って菖人?」

メイド喫茶の看板の前で立ち止まる桃李。

桃李の視界からはいつの間に菖人がいなくなっていた。

「(あれ? 菖人どこいった?)」

葵を探しに来たはずの桃李。

菖人まで見失い辺りを見渡す。

一方、昇降口の中へ入り下駄箱の影で廊下を歩く人を目で追う菖人。

「(あお……本当にここにいるのか。会ってどうする? 拒絶されたらどうする? 戻ってきてほしい……けど、あおがそれを望むのか?)」

菖人は難しい顔をしながら葵を探す。

「(え……)」

すると、昇降口を一瞬覗きに来た人物と目が合う。

「……あお」
「(本当にいた……。名前呼んじまったけど、どうするか。何話すか何も考えてなかったな……)」
「え……」

菖人が名前を呼ぶとその人物は振り向く。

「あお、やっと会えた」
「(いや、何も話せなくてもいい。こうしてあおの顔が見れただけで嬉しいな)」

菖人は葵に会えた嬉しさから顔を緩ませる。

「菖人……」

葵は驚き目を見開いている。

「菖人、急に居なくなるよ……って葵! 本当にいた……っ!」

菖人から少し遅れて桃李が下駄箱に顔を出す。

葵の姿を目にした桃李はまるで化け物でも見たかのように驚く。

「……え、桃李……」

再び目を見開く葵。

「な、なんで……。どうし…て、ここが……わかった…の?」

葵は震える声で必死に問いかける。

震えていたのは声だけではなく、手も同じだった。

それを隠すかのように右手に反対の手を重ね、きつく握りしめる。

「掲示板……あれ、あおだよな? 浴衣着たまま男ボコボコにしたのは」
「(あ……萩人さん。やっぱりここにいた)」

葵を見つめる菖人は一瞬視線をずらす。
そこには萩人の姿があった。

「……」
「何も言わねぇってことはそうなんだな。あおだと思ったから探しに来た。この学校には萩人さんがいるからな」

菖人は再び葵から視線を移す。

「正解だ。よく俺がこの学校にいるってわかったな」

葵の背後にいた萩人はそう言うと一歩前に踏み出し、葵の隣に立つ。

「しゅ……しゅうちゃ…ん」

萩人は弱々しく自分の名前を呼ぶ葵の肩を抱き寄せた。

「来てもらったとこ悪いが、こいつこんな状態だし今日は帰ってくれ」
「……分かりました。失礼します」
「失礼します」

菖人と桃李は名残惜しそうに葵を見つめた。

掲示板で葵らしき情報を見つけ、隣町の学園祭へ来た菖人と桃李。

だが、2人を見た葵は取り乱し話せる状態ではなかった。


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