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第50話 竜の過去 ⑤生きる理由
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「そうか。なら、今日からお前は俺の為に生きろ」
柾斗は竜の頭に手を乗せる。
「兄ちゃんのため……? なんで? 今日会ったばかりなのに。急に兄ちゃんの為に生きろって言われたって……」
金髪黒メッシュの男の言葉に竜は俯いていた顔を上げる。
「まあ、そりゃそうだよな。でも、俺が助けたんだ。だから……その命無駄にするなよ。な? お前にもちゃんと生きる理由が出来ただろ?」
「……じゃあ、俺は兄ちゃんが助けてくれた命を無駄にしない為に生きればいいのか……。助けてくれたのに酷いこと言ってごめんなさい。ありがとう、ございます」
「偉いな。俺は藤本柾斗だ。お前の名前は?」
口角を上げた柾斗の手の平は竜の頭を優しく撫でる。
「か、柏木竜……」
「竜か。竜は強くなりたいのか? それともむしゃくしゃして喧嘩してた?」
「わかんない。でも……多分両方」
「そうか」
「柾斗さん到着しました」
運転手はそう言うと車を停車させた。
「ああ。さんきゅうな」
車を降りると目の前には古びた倉庫があった。
竜は柾斗に連れられ倉庫の2階の部屋へ向かう。
「入って」
「ここは?」
柾斗がドアを開け、それに続き中へ入る竜。
部屋のど真ん中に茶色いローテーブルが置かれてあり、入り口を除き、囲うようにソファーが設置されていた。
「ここは白狼の倉庫。白狼は知ってる?」
「名前だけは……」
「そっか。俺は白狼の副総長……って言ってももうすぐ総長だけどな」
「総長……」
「そう。竜も入ってみるか? 白狼に」
「え、えっと……」
「まあ、それはゆっくり考えな。まずは治療しないとな。服脱げる?」
「服……」
「(服脱いだら……なんて思われるんだろ。このまま追い出されるのかな……)」
竜は自分の着ている服を見つめる。
身体中にはたくさんの痣や根性焼がある為、他人に身体を見られることに抵抗があった。
「どうした?」
なかなか服を脱がない竜に柾斗は問いかける。
「あ……な、なんでもない」
「(脱がなきゃだめか……)」
諦めた竜は何も言えず、服に手をかける。
そしてゆっくりと服を脱いでいく。
「……っ」
柾斗が息を呑んだのが竜にも伝わったのだろうか。
「(やっぱり、脱がなきゃよかった……)」
竜は脱いだ服を抱え俯いた。
小柄で骨ばった体に無数の傷跡。
「竜……嫌だったら答えなくていい。この怪我は喧嘩? それとも……」
柾斗は最後の方は声に出さず濁した。
後者でなければいいと思い問いかけた。
「お母さん。……俺が父さんに似てるから嫌いなんだって」
だが、返ってきた言葉は──後者だった。
冷たく放たれた言葉はまるで他人事のようだ。
「竜は歳いくつだ?」
「13歳で中1」
「え……そっか中学生か」
「……?」
黙り込む柾斗を竜は不思議そうに見つめる。
柾斗が驚くのも無理はない。
痩せ細り、小柄な竜の見た目は小学生だ。
去年まで小学生だったとしても今は夏。
もう少し大きくてもいいはずだと柾斗は心の中で思う。
「竜はさ……家出たいとか思わないのか?」
「家……?」
「(急になんだろう? )」
竜は分からず首を傾げる。
「そう。もし、竜さえ良ければ家に来ないか?」
「柾斗さんの家?」
「そう。俺の家で一緒に住まないか? って言っても俺も親に相談しないとだけど、多分大丈夫だと思う。竜は家出たい?」
柾斗の言葉に竜の瞳は大きく開かれる。
柾斗は竜の頭に手を乗せる。
「兄ちゃんのため……? なんで? 今日会ったばかりなのに。急に兄ちゃんの為に生きろって言われたって……」
金髪黒メッシュの男の言葉に竜は俯いていた顔を上げる。
「まあ、そりゃそうだよな。でも、俺が助けたんだ。だから……その命無駄にするなよ。な? お前にもちゃんと生きる理由が出来ただろ?」
「……じゃあ、俺は兄ちゃんが助けてくれた命を無駄にしない為に生きればいいのか……。助けてくれたのに酷いこと言ってごめんなさい。ありがとう、ございます」
「偉いな。俺は藤本柾斗だ。お前の名前は?」
口角を上げた柾斗の手の平は竜の頭を優しく撫でる。
「か、柏木竜……」
「竜か。竜は強くなりたいのか? それともむしゃくしゃして喧嘩してた?」
「わかんない。でも……多分両方」
「そうか」
「柾斗さん到着しました」
運転手はそう言うと車を停車させた。
「ああ。さんきゅうな」
車を降りると目の前には古びた倉庫があった。
竜は柾斗に連れられ倉庫の2階の部屋へ向かう。
「入って」
「ここは?」
柾斗がドアを開け、それに続き中へ入る竜。
部屋のど真ん中に茶色いローテーブルが置かれてあり、入り口を除き、囲うようにソファーが設置されていた。
「ここは白狼の倉庫。白狼は知ってる?」
「名前だけは……」
「そっか。俺は白狼の副総長……って言ってももうすぐ総長だけどな」
「総長……」
「そう。竜も入ってみるか? 白狼に」
「え、えっと……」
「まあ、それはゆっくり考えな。まずは治療しないとな。服脱げる?」
「服……」
「(服脱いだら……なんて思われるんだろ。このまま追い出されるのかな……)」
竜は自分の着ている服を見つめる。
身体中にはたくさんの痣や根性焼がある為、他人に身体を見られることに抵抗があった。
「どうした?」
なかなか服を脱がない竜に柾斗は問いかける。
「あ……な、なんでもない」
「(脱がなきゃだめか……)」
諦めた竜は何も言えず、服に手をかける。
そしてゆっくりと服を脱いでいく。
「……っ」
柾斗が息を呑んだのが竜にも伝わったのだろうか。
「(やっぱり、脱がなきゃよかった……)」
竜は脱いだ服を抱え俯いた。
小柄で骨ばった体に無数の傷跡。
「竜……嫌だったら答えなくていい。この怪我は喧嘩? それとも……」
柾斗は最後の方は声に出さず濁した。
後者でなければいいと思い問いかけた。
「お母さん。……俺が父さんに似てるから嫌いなんだって」
だが、返ってきた言葉は──後者だった。
冷たく放たれた言葉はまるで他人事のようだ。
「竜は歳いくつだ?」
「13歳で中1」
「え……そっか中学生か」
「……?」
黙り込む柾斗を竜は不思議そうに見つめる。
柾斗が驚くのも無理はない。
痩せ細り、小柄な竜の見た目は小学生だ。
去年まで小学生だったとしても今は夏。
もう少し大きくてもいいはずだと柾斗は心の中で思う。
「竜はさ……家出たいとか思わないのか?」
「家……?」
「(急になんだろう? )」
竜は分からず首を傾げる。
「そう。もし、竜さえ良ければ家に来ないか?」
「柾斗さんの家?」
「そう。俺の家で一緒に住まないか? って言っても俺も親に相談しないとだけど、多分大丈夫だと思う。竜は家出たい?」
柾斗の言葉に竜の瞳は大きく開かれる。
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