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第51話 竜の過去 ⑥もう一つの家族
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「い……つもお腹すいてたし、殴られるし、煙草は熱いし嫌だった。けど、大好きだって言ってくれたから耐えられた。俺も大好きだった……。で、でも……もう俺の大好きなお母さんはいない。家にいても俺はいないもの扱いされる。もし、出られるなら家を……出たい」
竜は俯きその声は頼りなく震えていた。
当時のことを思い起こした竜は酷く辛そうな表情をしていた。
「そうか。よく話してくれたな。それとお前はよく頑張った。じゃあ、手当したら俺の親と会ってくれるか?」
柾斗はそう言うと口角を上げ、竜の頭を思いっ切り撫でた。
「わっ……えっと、今から?」
竜はびっくりしながらも、どこか嬉しそうな表情を浮かべる。
「なるべく早い方がいいだろ」
「うん」
立ち上がった2人は柾斗の自宅へと向かう。
時刻は20時。
「ただいまー」
小料理屋に隣接された自宅の引き戸を開け、中へ入る柾斗。
「おかえりなさい……え? 誰その子」
出迎えたのは長い髪を1つに束ねた綺麗な女性だ。
柾斗の後ろにいる竜が恐る恐る覗き込んでいた。
「たまたま助けた子。柏木竜。母さん中入れていい?」
柾斗の言葉に竜は軽く会釈する。
「いいけど……」
出迎えた女性は柾斗の母だった。
柾斗の母は竜を下から上にゆっくりと視線を動かす。
「この子はどうしたの?」
リビングに入るなり、対面の椅子に座る柾斗の母は問いかける。
「街で複数人にやられてる所を助けた。それで竜を家で預かりたいんだけど……」
「家で預かる? なんで?」
「竜言っていい?」
柾斗が問いかければ竜は小さく頷く。
「竜が怪我してたから手当てしようと思って服脱いでもらったんだ。そしたら洋服着てたら目立たない所に傷跡が沢山あった。……喧嘩じゃなくて、母親にやられた傷跡が……だから、俺は竜と母親を引き離したい」
「そう。竜くん、竜くんはそれでいいの?」
「うん……はい。お母さんに産まなきゃよかったって言われたんで俺が居なくなれば喜ぶと思う」
それは酷く冷めた声だった。
「……っ! そっか。じゃあ、いいよ。家に住みな。でも、竜くんのお母さんには一度話に行かないとだから今度お家に行ってもいい?」
「はい」
「ありがとう。それと、もし……家に帰りたくなったらいつでも帰っていいから。この家はもう一つの家族だと思ってくれればいいからね」
「か……ぞく」
「そう。これから一緒に住むんだから。困った事があったらなんでも相談してね」
「ありがとう……ございます」
軽く会釈した竜の瞳には涙が浮かび、今にも零れ落ちそうだった。
次の日、竜は柾斗と柾斗の母と共に自分の家を訪れた。
「あ、あの初めまして私、藤本ゆりと申します。本日はお願いがあり、参りました。───」
柾斗の母は事の経緯を説明し、竜を預かりたいことを伝えた。
竜は俯きその声は頼りなく震えていた。
当時のことを思い起こした竜は酷く辛そうな表情をしていた。
「そうか。よく話してくれたな。それとお前はよく頑張った。じゃあ、手当したら俺の親と会ってくれるか?」
柾斗はそう言うと口角を上げ、竜の頭を思いっ切り撫でた。
「わっ……えっと、今から?」
竜はびっくりしながらも、どこか嬉しそうな表情を浮かべる。
「なるべく早い方がいいだろ」
「うん」
立ち上がった2人は柾斗の自宅へと向かう。
時刻は20時。
「ただいまー」
小料理屋に隣接された自宅の引き戸を開け、中へ入る柾斗。
「おかえりなさい……え? 誰その子」
出迎えたのは長い髪を1つに束ねた綺麗な女性だ。
柾斗の後ろにいる竜が恐る恐る覗き込んでいた。
「たまたま助けた子。柏木竜。母さん中入れていい?」
柾斗の言葉に竜は軽く会釈する。
「いいけど……」
出迎えた女性は柾斗の母だった。
柾斗の母は竜を下から上にゆっくりと視線を動かす。
「この子はどうしたの?」
リビングに入るなり、対面の椅子に座る柾斗の母は問いかける。
「街で複数人にやられてる所を助けた。それで竜を家で預かりたいんだけど……」
「家で預かる? なんで?」
「竜言っていい?」
柾斗が問いかければ竜は小さく頷く。
「竜が怪我してたから手当てしようと思って服脱いでもらったんだ。そしたら洋服着てたら目立たない所に傷跡が沢山あった。……喧嘩じゃなくて、母親にやられた傷跡が……だから、俺は竜と母親を引き離したい」
「そう。竜くん、竜くんはそれでいいの?」
「うん……はい。お母さんに産まなきゃよかったって言われたんで俺が居なくなれば喜ぶと思う」
それは酷く冷めた声だった。
「……っ! そっか。じゃあ、いいよ。家に住みな。でも、竜くんのお母さんには一度話に行かないとだから今度お家に行ってもいい?」
「はい」
「ありがとう。それと、もし……家に帰りたくなったらいつでも帰っていいから。この家はもう一つの家族だと思ってくれればいいからね」
「か……ぞく」
「そう。これから一緒に住むんだから。困った事があったらなんでも相談してね」
「ありがとう……ございます」
軽く会釈した竜の瞳には涙が浮かび、今にも零れ落ちそうだった。
次の日、竜は柾斗と柾斗の母と共に自分の家を訪れた。
「あ、あの初めまして私、藤本ゆりと申します。本日はお願いがあり、参りました。───」
柾斗の母は事の経緯を説明し、竜を預かりたいことを伝えた。
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