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第59話 紹介
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***
「(先生に呼び出された理由何にするかな? この前のテストは……満点だったから何も言われることないし。友達関係……先生ってそこまで聞いてくるか? よし、無難にこれでいこう)」
理事長室を出た葵は屋上までの道中、呼び出された理由を頭の中で必死に考えていた。
「遅くなってごめん!」
葵は屋上のドアを勢いよく開ける。
「あー! お前おっせぇぞ!」
「葵ちゃん待ってたよー!」
葵の姿を確認するなり、蓮と日向が声を上げた。
屋上のフェンスの手前辺りには、白狼のいつものメンバーが地べたに円を描くように座っていた。
「葵ちゃん先生に呼び出されることしたの?」
「(やっぱりその質問来るよね)」
柚佑の問いかけに、葵は内心ドキドキしながら口を開く。
「ここの理事長と知り合いでさ、それで学校に慣れたか確認で声掛けてくれたみたい」
葵はそう言うと空いている柚佑と日向の間に座った。
「理事長って……あの立河?」
「そうだよ」
葵がそう答えれば柚佑を含む5人が"すごい"、"すげぇ"等と興奮したように口を開いた。
「ねぇねぇ! なんで知り合いなの?」
日向はまるで宝箱を見つけた子供のように目を輝かせていた。
「友達の知り合いで仲良くなった感じ?」
葵は表情を変えずにそう言った。
「(本当は友達の知り合いではないけど、いいよね?)」
ここに来て2つ目の嘘だ。
「へーそうなんだ!でも──」
「なんで気にかけるんだ?ここに来たのってたまたまか?」
日向の言葉を遮った蓮は興奮気味に問いかけた。
「え? あー、萩ちゃん……理事長がこの学校紹介してくれたからね」
そんな2人のやり取りを見た葵は、笑みを浮かべた。
「紹介とか凄いな!」
「だから葵ちゃん頭いいのに、この学校来たんだ」
柚佑は"そうか"と心の中で手を叩いた。
西山高校に行ってた程の頭脳だ。
自主退学になったからって、なんでこんな偏差値の低い学校に来たのか不思議でしょうがなかった柚佑。
だが、理事長の紹介となれば、葵がこの学校に来たのも納得がいったようだ。
「前の学校は自主退学になっちゃったからね。その時にこの学校来ないかって誘ってくれたんだ」
葵はそう言うと遠くの方を見つめた。
***
──半年前。
これは、葵が転校してくる2ヶ月前のお話。
葵は買い物を終え、リビングのソファーでくつろいでいた。
ピンポーン──
すると、インターフォンの音が聞こえ、葵は重い腰を持ち上げた。
「誰だろ? あーおじいちゃんが近々来るって言ってたっけ?」
葵はそう言いながら玄関のドアを開けた。
訪ねてきた人の顔も確認せずに──
「(先生に呼び出された理由何にするかな? この前のテストは……満点だったから何も言われることないし。友達関係……先生ってそこまで聞いてくるか? よし、無難にこれでいこう)」
理事長室を出た葵は屋上までの道中、呼び出された理由を頭の中で必死に考えていた。
「遅くなってごめん!」
葵は屋上のドアを勢いよく開ける。
「あー! お前おっせぇぞ!」
「葵ちゃん待ってたよー!」
葵の姿を確認するなり、蓮と日向が声を上げた。
屋上のフェンスの手前辺りには、白狼のいつものメンバーが地べたに円を描くように座っていた。
「葵ちゃん先生に呼び出されることしたの?」
「(やっぱりその質問来るよね)」
柚佑の問いかけに、葵は内心ドキドキしながら口を開く。
「ここの理事長と知り合いでさ、それで学校に慣れたか確認で声掛けてくれたみたい」
葵はそう言うと空いている柚佑と日向の間に座った。
「理事長って……あの立河?」
「そうだよ」
葵がそう答えれば柚佑を含む5人が"すごい"、"すげぇ"等と興奮したように口を開いた。
「ねぇねぇ! なんで知り合いなの?」
日向はまるで宝箱を見つけた子供のように目を輝かせていた。
「友達の知り合いで仲良くなった感じ?」
葵は表情を変えずにそう言った。
「(本当は友達の知り合いではないけど、いいよね?)」
ここに来て2つ目の嘘だ。
「へーそうなんだ!でも──」
「なんで気にかけるんだ?ここに来たのってたまたまか?」
日向の言葉を遮った蓮は興奮気味に問いかけた。
「え? あー、萩ちゃん……理事長がこの学校紹介してくれたからね」
そんな2人のやり取りを見た葵は、笑みを浮かべた。
「紹介とか凄いな!」
「だから葵ちゃん頭いいのに、この学校来たんだ」
柚佑は"そうか"と心の中で手を叩いた。
西山高校に行ってた程の頭脳だ。
自主退学になったからって、なんでこんな偏差値の低い学校に来たのか不思議でしょうがなかった柚佑。
だが、理事長の紹介となれば、葵がこの学校に来たのも納得がいったようだ。
「前の学校は自主退学になっちゃったからね。その時にこの学校来ないかって誘ってくれたんだ」
葵はそう言うと遠くの方を見つめた。
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──半年前。
これは、葵が転校してくる2ヶ月前のお話。
葵は買い物を終え、リビングのソファーでくつろいでいた。
ピンポーン──
すると、インターフォンの音が聞こえ、葵は重い腰を持ち上げた。
「誰だろ? あーおじいちゃんが近々来るって言ってたっけ?」
葵はそう言いながら玄関のドアを開けた。
訪ねてきた人の顔も確認せずに──
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