舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

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第69話 光と絶望②

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「鉄パイプの下敷きになったのは龍華だけじゃない! 黒猫もなんだよッ……」

男の悲痛な叫び声が静まり返った部屋に響き渡った。

「そうか。けど、あれは俺たちのせいじゃない。事故だったんだ」
「……っ! そんなことはわかってんだよッ! なんで……ここで会うんだよ!」

男は静かに涙を流す。

「けど、黒猫のお前がなんで黒蛇にいるんだ?」
「お前じゃない! 平川結紫ヒラカワ ユウシだ! 凌駕が死んじまって……荒れた俺を拾ってくれたのが蛇塚さんだった……」
「そうか。……それで、今もその時の総長を……恨んでるのか?」

葵が後ろにいる手前、菖人の歯切れが悪くなった。

「それは……っ! 恨んでないっていうのは嘘になる。けど、あいつが避けなければ凌駕は……凌駕は……死ななかったんだ……!」

結紫は悲痛な叫び声を上げるとその場に崩れ落ちた。

「違うだろ? 避けた避けなかったの問題じゃない。もし……避けなかったとして殴られてあいつが吹っ飛んだらどうだ?」
「……っ! 鉄パイプが……崩れ、てた」

菖人を見上げる結紫の顔は涙でぐしょぐしょだった。

「そうだろ? 避けなかったら助かってた訳じゃない。理不尽な理由で相手を傷つけるな。言葉は凶器なんだから……それを聞いた奴が傷つく事も考えろ」
「……わる、かった……」
「俺も少し言い過ぎたな。でも、仲間を亡くしたのはお前たち黒猫だけじゃない。俺らも一緒だ」
「え……」

菖人の言葉に結紫の顔から血の気が引いていく。

「鉄パイプの下敷きになった奴は植物状態だ。……刺された奴は、そのまま死んだ」
「そう……だったのか……」
「いつまで仲良く喋ってんだ? こいつらは敵だってこと忘れるなよ? じゃなきゃ辞めろ!」

蛇塚はボロボロになった体で立ち上がると結紫を無理やり立たせる。

そして、蛇塚は結紫の肩に寄りかかった。

「……っ!」
「辞める時はちゃんとけじめ付けろよ~」

金髪の男は相変わらず寝っ転がったままだ。

「わ、わかってます……辞めませんよ。俺を拾ってくれた蛇塚さんには感謝しかありませんから」
「だよな? じゃあ、あいつ殺せ」

蛇塚の目線の先には葵がいた。

「え……」
「じゃなきゃ辞めろ」
「……っ!」
「ほら」

蛇塚から手渡されたのは1本の鉄パイプだった。

「……はい」

それを受け取った結紫の手は若干震えていた。

仲間がそれで帰らぬ人となったんだ。

トラウマになってもおかしくはない。

「うあぁぁぁ!」

結紫は声を上げながら葵目掛けて走る。

だが、そんな勢いも虚しく菖人と桃李に止められてしまう。

「なんでっ! なんで止めるんだよー!」
「止めるに決まってんだろ!」

蛇塚は菖人と桃李が結紫に気を取られている瞬間を見逃さなかった。

菖人と結紫が怒鳴り合う中、突如乾いた音が響き渡る。

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