70 / 75
第69話 光と絶望②
しおりを挟む
「鉄パイプの下敷きになったのは龍華だけじゃない! 黒猫もなんだよッ……」
男の悲痛な叫び声が静まり返った部屋に響き渡った。
「そうか。けど、あれは俺たちのせいじゃない。事故だったんだ」
「……っ! そんなことはわかってんだよッ! なんで……ここで会うんだよ!」
男は静かに涙を流す。
「けど、黒猫のお前がなんで黒蛇にいるんだ?」
「お前じゃない! 平川結紫だ! 凌駕が死んじまって……荒れた俺を拾ってくれたのが蛇塚さんだった……」
「そうか。……それで、今もその時の総長を……恨んでるのか?」
葵が後ろにいる手前、菖人の歯切れが悪くなった。
「それは……っ! 恨んでないっていうのは嘘になる。けど、あいつが避けなければ凌駕は……凌駕は……死ななかったんだ……!」
結紫は悲痛な叫び声を上げるとその場に崩れ落ちた。
「違うだろ? 避けた避けなかったの問題じゃない。もし……避けなかったとして殴られてあいつが吹っ飛んだらどうだ?」
「……っ! 鉄パイプが……崩れ、てた」
菖人を見上げる結紫の顔は涙でぐしょぐしょだった。
「そうだろ? 避けなかったら助かってた訳じゃない。理不尽な理由で相手を傷つけるな。言葉は凶器なんだから……それを聞いた奴が傷つく事も考えろ」
「……わる、かった……」
「俺も少し言い過ぎたな。でも、仲間を亡くしたのはお前たち黒猫だけじゃない。俺らも一緒だ」
「え……」
菖人の言葉に結紫の顔から血の気が引いていく。
「鉄パイプの下敷きになった奴は植物状態だ。……刺された奴は、そのまま死んだ」
「そう……だったのか……」
「いつまで仲良く喋ってんだ? こいつらは敵だってこと忘れるなよ? じゃなきゃ辞めろ!」
蛇塚はボロボロになった体で立ち上がると結紫を無理やり立たせる。
そして、蛇塚は結紫の肩に寄りかかった。
「……っ!」
「辞める時はちゃんとけじめ付けろよ~」
金髪の男は相変わらず寝っ転がったままだ。
「わ、わかってます……辞めませんよ。俺を拾ってくれた蛇塚さんには感謝しかありませんから」
「だよな? じゃあ、あいつ殺せ」
蛇塚の目線の先には葵がいた。
「え……」
「じゃなきゃ辞めろ」
「……っ!」
「ほら」
蛇塚から手渡されたのは1本の鉄パイプだった。
「……はい」
それを受け取った結紫の手は若干震えていた。
仲間がそれで帰らぬ人となったんだ。
トラウマになってもおかしくはない。
「うあぁぁぁ!」
結紫は声を上げながら葵目掛けて走る。
だが、そんな勢いも虚しく菖人と桃李に止められてしまう。
「なんでっ! なんで止めるんだよー!」
「止めるに決まってんだろ!」
蛇塚は菖人と桃李が結紫に気を取られている瞬間を見逃さなかった。
菖人と結紫が怒鳴り合う中、突如乾いた音が響き渡る。
男の悲痛な叫び声が静まり返った部屋に響き渡った。
「そうか。けど、あれは俺たちのせいじゃない。事故だったんだ」
「……っ! そんなことはわかってんだよッ! なんで……ここで会うんだよ!」
男は静かに涙を流す。
「けど、黒猫のお前がなんで黒蛇にいるんだ?」
「お前じゃない! 平川結紫だ! 凌駕が死んじまって……荒れた俺を拾ってくれたのが蛇塚さんだった……」
「そうか。……それで、今もその時の総長を……恨んでるのか?」
葵が後ろにいる手前、菖人の歯切れが悪くなった。
「それは……っ! 恨んでないっていうのは嘘になる。けど、あいつが避けなければ凌駕は……凌駕は……死ななかったんだ……!」
結紫は悲痛な叫び声を上げるとその場に崩れ落ちた。
「違うだろ? 避けた避けなかったの問題じゃない。もし……避けなかったとして殴られてあいつが吹っ飛んだらどうだ?」
「……っ! 鉄パイプが……崩れ、てた」
菖人を見上げる結紫の顔は涙でぐしょぐしょだった。
「そうだろ? 避けなかったら助かってた訳じゃない。理不尽な理由で相手を傷つけるな。言葉は凶器なんだから……それを聞いた奴が傷つく事も考えろ」
「……わる、かった……」
「俺も少し言い過ぎたな。でも、仲間を亡くしたのはお前たち黒猫だけじゃない。俺らも一緒だ」
「え……」
菖人の言葉に結紫の顔から血の気が引いていく。
「鉄パイプの下敷きになった奴は植物状態だ。……刺された奴は、そのまま死んだ」
「そう……だったのか……」
「いつまで仲良く喋ってんだ? こいつらは敵だってこと忘れるなよ? じゃなきゃ辞めろ!」
蛇塚はボロボロになった体で立ち上がると結紫を無理やり立たせる。
そして、蛇塚は結紫の肩に寄りかかった。
「……っ!」
「辞める時はちゃんとけじめ付けろよ~」
金髪の男は相変わらず寝っ転がったままだ。
「わ、わかってます……辞めませんよ。俺を拾ってくれた蛇塚さんには感謝しかありませんから」
「だよな? じゃあ、あいつ殺せ」
蛇塚の目線の先には葵がいた。
「え……」
「じゃなきゃ辞めろ」
「……っ!」
「ほら」
蛇塚から手渡されたのは1本の鉄パイプだった。
「……はい」
それを受け取った結紫の手は若干震えていた。
仲間がそれで帰らぬ人となったんだ。
トラウマになってもおかしくはない。
「うあぁぁぁ!」
結紫は声を上げながら葵目掛けて走る。
だが、そんな勢いも虚しく菖人と桃李に止められてしまう。
「なんでっ! なんで止めるんだよー!」
「止めるに決まってんだろ!」
蛇塚は菖人と桃李が結紫に気を取られている瞬間を見逃さなかった。
菖人と結紫が怒鳴り合う中、突如乾いた音が響き渡る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる