舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

文字の大きさ
69 / 75

第68話 光と絶望①

しおりを挟む
「おいっ! あおを返せ!」
「葵大丈夫!?」

葵の目の前に現れたのは──龍華だった。

数十人と戦ったであろう菖人と桃李は息も切らさずドアの前に立っていた。

菖人と桃李はそのまま葵に駆け寄る。

そんな2人を阻まもうとする男達は菖人と桃李の後ろにいた桔平を含む3人によりボコボコにされた。

「なんで……?」

葵は自分の手首のロープを解く菖人に問いかける。

その声は切なく今にも消えてしまいそうだ。

「なんでって電話かけたら呼び出されたから?」

菖人はそう言うと安心させるかのように笑って見せた。

「え、待って……龍華じゃん」

ボコボコにされた黒蛇の1人がそう口にする。

「白狼はどこだ!」

床に寝転んだままの蛇塚が血相を変え怒鳴り散らす。

「呼んだか?」

声のする方を見ると、ドアの前には竜達がいた。

「え……。みんな……」
「(無事でよかった)」

竜達の姿を確認した葵は安堵の表情を浮かべる。

「え、なんで龍華がいるの!?」

日向は驚き声をあげると竜に視線を移す。

「なんでいる?」

竜はそう言うと菖人をじっと睨みつけた。

「こいつと知り合いで、電話かけたら呼び出されたからここにいる。あおが白狼のお姫様だっていうのは知ってたからちゃんと電話しただろ?」
「電話?」
「理事長から連絡あったのがそうなんじゃないっすか?」

眉間に皺を寄せる竜に後方から蓮が口を挟む。

「あれか……」
「白狼の連絡先なんて知らねぇからな」

あの時、電話を終えた菖人はすぐさま萩人に連絡をした。

そして、萩人から白狼に連絡が行き、竜達が来たというわけだ。

「な、なんで龍華がいんだよ!!」

応援にでも来たのだろうか。

まだ元気な様子の男が竜達を押しのけドアから顔を出す。

「結紫(ユウシ)?」

床でくたばる金髪は突然現れた茶髪の男を見上げる。

息を切らした様子の男、その口元には銀色のピアスが付いていた。

「おい! 龍華の総長は誰だ?」
「俺だ」 

菖人はそう言うと葵の前に立つ。

その隣には桃李がいて、2人で葵を隠した。

「お前じゃない! いただろ黒猫に攻めて来た時にフードを被った奴が!」

男の返答に菖人と桃李が互いの顔を見合わせる。 

「(黒猫……っ! なんで、黒蛇が龍華の総長だったあたしを探してるんだ?)」

わけがわからない葵はただ目の前に立つ2人を見上げることしかできなかった。

膝の上に置かれた両手はきつく握りしめられていた。

「黒猫……俺の前にやってた総長か?」
「そうだ! どこ行った! なんでお前が総長なんだ!」
「(菖人が総長やってるのはあたしが指名したからなんだけど……酷い言われようだな)」
「どこ行ったかは俺も知らない……。急に辞めちまったから」
「なんだよそれッ……! お前たちの……お前たちのせいで! 凌駕(リョウガ)は死んじまったんだよ!」
「……!」

菖人と桃李は驚きのあまり声が出ないでいた。

その後ろには青ざめた顔をした葵がいた。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

王子が好みじゃなさすぎる

藤田菜
恋愛
魔法使いの呪いによって眠り続けていた私は、王子の手によって眠りから覚めた。けれどこの王子ーー全然私の好みじゃない。この人が私の運命の相手なの……?

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...