舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

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第71話 行方不明の蓮

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あれから2週間後の12月上旬。

街にはクリスマスの飾りが見られるようになった。

「蓮いたか?」
「ううん。こっちにはいないみたい」

柚佑と日向は寒空の中、蓮を探し回っていた。

吐く息は白く、2人の鼻は寒さからか赤くなっていた。

***

1時間前──

いつものように葵は白狼の倉庫にいた。

怪我も治り、普段通りの生活ができるようになっていた。

だが、そこに蓮の姿はなかった。

数日前から倉庫に姿を見せなくなった蓮。

「え……ごめん。電話でるね」

葵は数秒着信画面を見つめた後、電話に出た。

「もし、もし」
「もしもし。あお、元気か?」
「うん、もう良くなった」
「なら、よかった。それより、こっちで男が暴れてるって情報が入ってきて、それが蓮に似てるんだけど……違うよな?」

電話の向こうからは菖人の心配そうな声が聞こえてくる。

「え、蓮ずっと倉庫来てないから……違うとは言えない」
「蓮?」

葵の返答に竜が口をはさむ。

「あ、ちょっと待って。竜、菖人から電話で隣町で蓮に似た人が暴れてるらしい」

葵は菖人に待ってもらうと竜に今聞いた内容を伝えた。

「……隣町か。行けるか?」

竜の問いかけに3人は無言で頷いた。

「菖人ありがとう。あとはこっちで動いてみるよ」
「ああ」

葵の電話が終わると、4人は隣町へ向かった。

──そして、冒頭に戻る。

竜と楓も走り回って探すも蓮は見当たらなかった。

竜達が出て行ってからどれくらい経っただろうか。

下が騒がしくなり、葵は階段を下りる。

そこには暴れた蓮を下っ端たちが頑張って押さえ込んでいた。

「あいつ……」

それを見た葵は蓮を睨みつけ走り出す。

下っ端の間をすり抜け、蓮の頬を殴り飛ばした。

「痛っ……何すんだよ! え……葵──」
「蓮、お前は何やってんだよっ! 下っ端くん達傷つけて! こいつらがお前になんかしたのかよ? してねぇだろう!」

葵は倒れた蓮を無理やり起こすと服の襟元を掴み怒鳴りつけた。

「し、してねぇ……」
「だったら傷つけんな! 喧嘩するのは構わねぇ。けど、それは守りたいもんの為だけにしろ! 」

葵は一息つくとそのまま口を開く。

「自分を見失うな。本当に強え奴は何かを守ることができる奴なんだよっ!」
「わ、るかった」
「あたしじゃない。こいつらに言ってやれ」

葵はそう言うと蓮から手を離した。

蓮は身なりを整えると、下っ端達の前に立つ。

そして、深く腰を曲げた。

「悪かった……傷つけて、悪かった。」
「だ、大丈夫です」
「そうですよ! 俺たち怪我してないですし!」
「か、顔上げてください」

突然、幹部の人間に謝られた下っ端は動揺していた。

「それより、葵さん凄いかっこよかったっす!」

いつまでも顔上げない蓮を他所に、下っ端の1人が葵に視線を移した。

「え……」
「(あ、やっば! つい、昔みたいにやっちゃったけど、大丈夫だったかな?)」

下っ端の言葉に自分が何をしたか思い返し、血の気が引きそうになる。

葵は喧嘩する時や、怒鳴る時はどうしても男口調になってしまう。

だが、そんな葵の心配を他所に、目の前の下っ端3人は目を輝かせていた。

「本当すごかったです!」
「葵さん、俺たち一生付いて行きます!!」

葵を見つめた下っ端3人は声を揃えた。

「え、ありがとう……」
「(いや、君たちは総長に付いて行きなよ。竜が可哀想だよ)」

下っ端達の言葉に葵は苦笑した。

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