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第74話 蓮の過去 ③衝突
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「あ、蓮くん……ごめんなさい。私、時計割っちゃって……本当にごめんなさい」
母は後ろを振り向くと申し訳なさそうに眉間にシワを寄せ俯く。
蓮はしゃがみ込む母の隣に立つ。
「時計? え……な、なんで? これ……母ちゃんから貰った時計。なんで? なんで……こんなことするの?」
割れた時計を目にした蓮は唇を噛み締め必死に涙を堪えていた。
その手はきつく握りしめられ、手のひらに爪痕が残るほどだった。
「ご、ごめんなさい! わざとじゃなくて……」
「勝手に掃除しないでって言ったよね? なんで? なんで……壊すの。誕生日プレゼントに母ちゃんから最後に貰ったやつだったのに……」
母が割った時計は蓮が9歳の誕生日に実の母から貰ったものだ。
実の母が亡くなる前に貰った最後のプレゼントだった──
「本当にごめんなさい。弁償します」
母は立ち上がり蓮に近づく。
「やめて! 近づかないで! 弁償ってなに? 母ちゃんが買ってくれたやつじゃないと意味がないんだよ! でも、母ちゃんいないのに……もう、大嫌い……!」
蓮は涙を浮かべたまま部屋を飛び出した。
母はその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
蓮が荒れるようになったのはそれからだった。
毎日のように喧嘩をして、遅く帰ってきていた。
学校で問題を起こし、母が呼ばれることも多々あった。
「蓮くん。なんでそんなに喧嘩するの?」
「……」
ある日、夕飯を食べていた蓮に母が問いかける。
蓮は食事の途中にも関わらず、無言のままその場を後にした。
以前は、どうにか会話をしていた2人。
今ではそれは全くない。
***
「ただいま」
「おかえりなさい」
数日後、母は仕事から帰ってきた父を玄関で出迎えた。
「なあ、また蓮問題起こしたんだって?」
「はい、先生に呼ばれて学校に行ってきました」
母は父から上着と鞄を受け取ると父の後に続きリビングへ向かった。
「子供達の面倒を見るのも母親の役目だろ? なんで子供2人くらい面倒見れないんだよ」
「すいません」
「もういいや。先にご飯食べる」
「あ、ごめんなさい。今日は学校に行ってたのでこれから食事の支度をします。先にお風呂──」
「はぁ……子供の面倒は見れない。家の事もまともに出来ないのかよ。もうちょっとしっかりしてくれよ」
「すいません」
母は申し訳なさそうに頭を下げた。
「別に謝ってほしいわけじゃないの。それをちゃんと行動に示してくれればいいから。風呂入ってくる」
父はそう言うとリビングを後にした。
2人は新婚だ。
元々は仲のいい夫婦だった。
蓮が荒れ、母が学校に呼ばれるようになってから父は変わった。
怒りの矛先が蓮ではなく母に向くようになったのだ。
母は父に認めてもらおうと必死に家事をこなすも上手くいかない日々が続く。
蓮との仲は相変わらず。
ただ一つ変わったことは──母が目に見えて痩せたことだ。
フラフラになりながらも食事を作るだけ作った。
自分は食欲がないため、食べないことが多かった。
母は後ろを振り向くと申し訳なさそうに眉間にシワを寄せ俯く。
蓮はしゃがみ込む母の隣に立つ。
「時計? え……な、なんで? これ……母ちゃんから貰った時計。なんで? なんで……こんなことするの?」
割れた時計を目にした蓮は唇を噛み締め必死に涙を堪えていた。
その手はきつく握りしめられ、手のひらに爪痕が残るほどだった。
「ご、ごめんなさい! わざとじゃなくて……」
「勝手に掃除しないでって言ったよね? なんで? なんで……壊すの。誕生日プレゼントに母ちゃんから最後に貰ったやつだったのに……」
母が割った時計は蓮が9歳の誕生日に実の母から貰ったものだ。
実の母が亡くなる前に貰った最後のプレゼントだった──
「本当にごめんなさい。弁償します」
母は立ち上がり蓮に近づく。
「やめて! 近づかないで! 弁償ってなに? 母ちゃんが買ってくれたやつじゃないと意味がないんだよ! でも、母ちゃんいないのに……もう、大嫌い……!」
蓮は涙を浮かべたまま部屋を飛び出した。
母はその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
蓮が荒れるようになったのはそれからだった。
毎日のように喧嘩をして、遅く帰ってきていた。
学校で問題を起こし、母が呼ばれることも多々あった。
「蓮くん。なんでそんなに喧嘩するの?」
「……」
ある日、夕飯を食べていた蓮に母が問いかける。
蓮は食事の途中にも関わらず、無言のままその場を後にした。
以前は、どうにか会話をしていた2人。
今ではそれは全くない。
***
「ただいま」
「おかえりなさい」
数日後、母は仕事から帰ってきた父を玄関で出迎えた。
「なあ、また蓮問題起こしたんだって?」
「はい、先生に呼ばれて学校に行ってきました」
母は父から上着と鞄を受け取ると父の後に続きリビングへ向かった。
「子供達の面倒を見るのも母親の役目だろ? なんで子供2人くらい面倒見れないんだよ」
「すいません」
「もういいや。先にご飯食べる」
「あ、ごめんなさい。今日は学校に行ってたのでこれから食事の支度をします。先にお風呂──」
「はぁ……子供の面倒は見れない。家の事もまともに出来ないのかよ。もうちょっとしっかりしてくれよ」
「すいません」
母は申し訳なさそうに頭を下げた。
「別に謝ってほしいわけじゃないの。それをちゃんと行動に示してくれればいいから。風呂入ってくる」
父はそう言うとリビングを後にした。
2人は新婚だ。
元々は仲のいい夫婦だった。
蓮が荒れ、母が学校に呼ばれるようになってから父は変わった。
怒りの矛先が蓮ではなく母に向くようになったのだ。
母は父に認めてもらおうと必死に家事をこなすも上手くいかない日々が続く。
蓮との仲は相変わらず。
ただ一つ変わったことは──母が目に見えて痩せたことだ。
フラフラになりながらも食事を作るだけ作った。
自分は食欲がないため、食べないことが多かった。
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