魔王少女の勘違い無双伝~中二病をこじらせて、配下の人間も守る誇り高き悪のカリスマムーブを楽しんでいたら、いつの間にか最強魔王軍が誕生していた

こはるんるん

文字の大きさ
1 / 39

1話。病弱少女は魔王に転生して、悪のカリスマヒロインを目指す

しおりを挟む
「ぁああ……もっとゲームがやりたかったなぁ」

 病室の天井を見上げながら、私はこれまでの15年間の人生を思い返していた。
 意識が徐々に薄れていき、何も感じなくなっていく。

『ゲームや漫画などで遊んでいる暇があったら、1問でも多くの過去問を解け! 不合格など我が家の恥だぞ!』

 お父さんから、私はそう厳しく勉強をさせられてきた。
 第一志望の女子高に合格さえすれば、好きなだけゲームと漫画を楽しんで良いと約束されて。

 でも、合格と同時に難病にかかり入院生活を余儀なくされた。

 ……ちょっと、ちょっと待てぇええ……ッ!
 それじゃ、これまでの私の苦労はなんだったのよ!?

 最初は、お父さんはすごく心配してくれたんだけど……

 私が回復の見込みがなく、余命いくばくも無いと知ると、パタリとお見舞いにやってこなくなった。

 合格祝いのポータブルゲーム機を与えられて以来、顔も見ていないわ。

 あぐうぅううっ……! と、取り戻さなくては、これまでの禁欲生活を……! 
 この身が、この手が動く限り! 最後の瞬間まで、ゲームで遊びまくるのよ!

 そう決心した私は、セットでプレゼントされたRPGゲーム【ルーンブレイド】にのめり込んだ。
 
 具体的には、ラスボスとして登場する美少女魔王アンジェラの生き様に魅了されたのよ。
 彼女は誇り高く、自由に生きていた。

 人間を奴隷にしてこき使い、気に入らない者は叩き潰し、贅沢な暮らしを謳歌し、どんなピンチにも優雅に高笑いして見せる。
 それでいて、大勢の配下に崇拝されていた。

 お父さんの言いなりになってきた良い子ちゃんの私とは、正反対の自由でカッコいい女の子……

 最後に勇者に打ち倒される瞬間まで、魔王アンジェラは誇り高く悪の美学を貫いて見せた。
 あぁっ、彼女の生き様こそ、私の理想よ。私も、もっと自分に正直に生きれば良かったわ。

「……も、もし生まれ変わることができたら。私もアンジェラのような悪のカリスマヒロインになりたいな……」

 来世があるなら、今度は誰に何を言われようとも、自分のやりたいことを思い切り楽しんで自由に生きたい。

 その強烈な願いと共に、ポータブルゲーム機を胸に抱いたまま、私の意識は闇に沈んでいった。

☆☆☆

 ……以上のような前世の記憶を、私は岩に頭をぶつけた瞬間に思い出した。

「おごぉうッ!?」

 視界に星が飛んで、痛みと衝撃にクラッとする。
 なにせ、馬車が横転して外に投げ出されての大激突よ。

 沈黙すること数秒……
 私の全身に歓喜がみなぎった。

「大丈夫でございますか、アンジェラ様!?」
「やったぁわあああああッ!」
「……ええっ!?」

 血を噴き出しながら飛び跳ねる私に、駆けつけてきた侍女のヴェロニカが唖然とした。

 今の私は魔王ベルフェゴールの1人娘アンジェラ、年齢は15歳。

 そう、病室で毎日やり込んだ大好きなゲーム【ルーンブレイド】の世界に──それも憧れのアンジェラに気付いたら転生していたのよ。

 ……昔から、なにか見聞きする度に、以前から知っているような不思議な感覚を覚えることがあったわ。

 それがまさか前世で、この世界をゲームとして体験していたからなんて……! ラノベや漫画でお馴染みの異世界転生が自分の身に起きるなんて、驚きというか、感動だわ!

「アンジェラ! 今の私はゲーム開始前の魔王アンジェラね!?」

 自分の身体を見下ろせば、貴族っぽいゴシックドレス姿だった。
 フリフリのフリルスカートが、かわいいじゃないの。
 血と泥で、盛大に汚れてはいるけれど。

「まさか、ご乱心!?」
「しっ、失礼ね。私は正気よ!」

 思わずヴェロニカに言い返してしまったけれど、今はそれどころじゃないわ。

「ヒャッハー! アレで死なねぇなんて、やっぱコイツらは相当な上位魔族だぜぇ!」
「ぶっ殺して魔石を手に入れれば、俺たちは大金持ちだぞぉおおッ!」

 馬に乗った十数名の荒くれ者たちが、私たちに弓矢を射掛けてきていたのよ。
 馬車が横転したのも、彼らが爆裂魔法で奇襲を仕掛けたからだった。

「ぬぁ……!?」

 体験したことの無い強烈な殺意を向けられて、思わず足が竦んでしまう。

 ゲーム【ルーンブレイド】では魔族を倒すと、高価なアイテムの材料となる魔石をドロップした。
 それはこの世界でも同じみたいね。

 強力な魔族ほどレアな魔石を落とすから、あの人たちにはきっと、私たちが金塊に見えているのだわ。

「アンジェラ様、お下がりください! この私が命に代えてもお守りいたします!」

 短剣を構えたヴェロニカが私を守るべく立ちはだかり、矢をことごとく叩き落とした。

 こ、この人間離れしたアニメキャラみたいな動き……そう、ヴェロニカは吸血鬼だわ。

 うわぁああっ、感激よ! 
 私は間違い無く【ルーンブレイド】の世界にいるんだわ。

「……って、そう。これはきっと魔王アンジェラの過去イベントね!?」

 今の私には、アンジェラとして生きてきた15年間の記憶があった。

 アンジェラは、人間とは決して関わってはならないと、魔王である父親から厳しく言い聞かされて育った。

 しかし、超わがままな性格で、強大な魔力を持って生まれたアンジェラは自分の力を過信し、立場の弱い侍女ヴェロニカに命令して、人間の街にお忍びで出かけたのよ。

 人間と魔族の最大の違いは、瞳の色。魔族は赤い目をしているのが特徴だった。
 私とヴェロニカの場合、それ以外の身体的特徴や外見は、人間とまったく同じだったわ。

 なら赤目であることさえバレなければOKと安易に考えて、大きな帽子で顔を隠しての冒険だった。
 その結果、今、こうして帰り道に襲撃されている。

 カッコいい悪のカリスマヒロインも、最初はおバカな失敗をしていたのね。

「おっ、お逃げください、アンジェラ様!」

 肩と足に矢を受けたヴェロニカが、懇願するように叫んだ。
 吸血鬼であるヴェロニカは、太陽の下では弱体化してしまうため、普段より動きに精彩を欠いていた。

「ヴェロニカ!?」

 ……ゲームシナリオでは確か、ヴェロニカはここでアンジェラを守って命を落とすのだったわ。

 運悪く岩に頭をぶつけたアンジェラは気絶し、殺されかける。その寸前で、魔王である父親──お父様に救われるのよ。

 そう、前世の私のお父さんと違って、この世界のお父様は、私を心の底から愛してくれていた。

 だって、愛する娘を人質に取られたお父様は手も足も出せず、命を落とすんだもの。

 アンジェラはこれが切っ掛けで、人間への復讐を決意し、1年後から侵略戦争を開始するんだっけ……
 う、うわっ、ヤバいなんて、もんじゃないじゃない。

「……だけど、私は今、気絶していないわ!」

 きっと私が前世の記憶を取り戻したおかげね。
 それでゲームシナリオにわずかな狂いが生まれたのだわ。
 
 敵は強面の男たち。一瞬、恐怖に身体が硬直したけれど……
 大丈夫。ラスボスであるアンジェラに生まれ変わった私の敵じゃ無い筈よ。

「ヴェロニカ、巻き込んでごめんなさい! 私の配下を傷つける者は、誰であろうと許さないわよ!」
「……えっ、ええ!?」

 私は勇気を振り絞って、前に出た。
 悪のカリスマヒロインに生まれ変わったからには、それにふさわしい誇り高い態度を取らなければね。

 どんなピンチであろうとも、優雅に高笑いして見せる。
 敵対してきた者は容赦なく叩き潰し、自分の配下を守り抜く。
 それが、カッコいい悪の美学というものよ。

「ひゃはッ! いただき!」
【氷結】フリージング!」

 私は魔法で冷凍波を放ち、ヴェロニカに槍を投げつけようとした男をカチンコチンに凍らせた。

「……ッ!? ロイドが一撃で!?」
「や、やったぁああああ! 私にも魔法が使えたわ!」

 自身の身体にみなぎる絶大な力に、高揚を禁じ得ないわ。
 病弱だった前世とは正反対じゃないの。

 男たちが放つ矢が、まるで止まっているように見える。
 私は高速の手刀で、ヴェロニカと自分を狙う矢をことごとく叩き落とす。

 なんか、頭の怪我もいつの間にか癒えてきているようだし……
 この身体、すごい、すごすぎるわよ。

 さらに私は反撃の【氷結】フリージングで、敵3人をまとめて氷漬けにした。
 うん、魔法の扱いにも慣れてきたわ。

「なにぃ!?」
「散れ! あの小娘、とんでもねぇ魔法の使い手だぞ!」

 後続の男たちが真っ青になって、散開する。
 固まっていたら、魔法の良い的になるものね。

「ふっふん! 当然よ、私は【氷獄の冥姫】フリージング・アビスロードアンジェラよ!」

 喜びのあまり、私は胸を反らして叫んだ。
 これこれ! このセリフは一度は言ってみたかったのよね。

 病院じゃ同好の士なんていかなったし、アンジェラのコスプレをするのも夢で終わったわ。

「愚かなる人間ども。我が氷の魔力の前にひれ伏すが良いわ!」

 もう超ノリノリで、ビシッと指を突き付ける。
 ああっ、気持ちいい。脳汁がドバドバ出るわ。今、私は夢を叶えていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! 圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。 そして、ショック死してしまう。 その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。 屋敷を逃げ出すのであった――。 ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。 スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

転生無双学院~追放された田舎貴族、実は神剣と女神に愛されていた件~

eringi
ファンタジー
「役立たず」と呼ばれ、貴族家を追放された少年エリアス。 すべてを失った彼が辿り着いたのは、見捨てられた古の神殿。 そこで眠っていた「神剣」ルミナと「女神」セリアに出会い、隠された真の力――“世界の法則を書き換える権能”を得る。 学院で最底辺だった少年は、無自覚のまま神々と王族すら凌駕していく。 やがて彼の傍らには、かつて彼を見下した者たちが跪き、彼を理解した者たちは彼に恋をする。 繰り返される“ざまぁ”の果てに、無自覚の英雄は世界を救う。 これは、「追い出された少年」が気づかぬうちに“世界最強”となり、 女神と共に愛と赦しとざまぁを与えていく物語。

処理中です...