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39話。平和の実現
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1ヶ月後──
祝福を告げる鐘の音が、青空に響き渡る。王宮のバルコニーから、色とりどりの紙吹雪が舞い散っていた。
今日は、勇者王レオンと聖女ユリシアの結婚式よ。国中が、新たな時代の幕開けに熱狂していた。
王宮に詰めかけた人々の歓声が、私がいる控室にまで、響いてくるわ。
「アンジェラ様。今日という日を迎えられたのは、すべて、あなたのおかげです」
正装したレオンとユリシアが、やってきてお礼を述べた。
私はレオンに招待されて、【水の聖女】として結婚式に参加することになった。
本来のゲームシナリオでは、父王を殺害したレオンは罪悪感を打ち消すために国の復興に全力を注いで、ユリシアとの結婚どころではなかったわ。
「本当に、よく似合っているじゃないの2人とも! ところで、和平の条件については大丈夫よね?」
「はい。魔族を狩る者は、厳罰にする法律を作りました。魔石の供給については、自然死した魔族の魔石を魔王から売ってもらうということで、商人たちを納得させました」
アステリア聖王国と一時的な和平を結ぶにあたって、このような取り決めをしたわ。
ふふっ、魔石を売ることで、私は魔族たちを守れるだけでなく、莫大な利益を得ることができる。
これは私の悲願である大魔王復活を成し遂げるために、大いに役立つ筈よ。この世界のどこかに出現するであろう、水、風、火の聖女を見つけ出して、協力を取り付ける必要があるんだからね。
「ありがとう。もし、約束を破って魔族を狩る者がいたら、その個人だけでなく背後の組織ごと、すべて私の奴隷にするからね」
「もちろんです。そのような者は、僕たちの和平を壊す敵ですから」
レオンは迷いなく頷いた。
これなら和平を保ちつつ、私の奴隷をガンガン増やせるわ。
相手が悪人なら奴隷にするのに遠慮いらないしね。
なにより、私は人間が憎い訳じゃなかった。
私が悪を目指したのは、前世のお父さんに反発して、自分の好きなことを貫く、悪い子になりたかったから。だけど……
本当に欲しかったのは、私のことを愛してくれる家族と、真実の私を知っても嫌わない真の友達。前世でそれは、決して手に入らなかった。
前者は仕方ないとしても、後者に恵まれなかったのは、きっと自分を肯定して貫き通す「心の強さ」が私には欠けていたから。薄っぺらい陽キャの皮を被ったまま、真実の自分を見せずに他人と仲良くしようとしたから……
だから、レオンとユリシアには、本当の自分を隠すことなく見せた。
これには勇気が必要だったけど。
悪にとって最も重要なのは、何者にも縛られず、己の魂に正直に生きること。
今世で、私は堂々と悪を貫き、欲しいものを手に入れたわ。
だから、とても誇らしい気持ちになっていた。
「……お互いの利益となれる和平条約を結ぶことができて、本当に良かったですわ、アンジェラ様」
輝くほど美しいウェディングドレス姿のユリシアが、喜びに満ちあふれた目で私を見つめた。
「すべては、アンジェラ様がわたくしたちの友人となってくれたおかげです。今はまだ、アンジェラ様が魔王だったという真実は明かせませんが……」
ユリシアはレオンと視線を交わし、決意を込めて続けた。
「【薔薇十字団】を倒し、魔王への偏見が薄らいだら。真実を公表し、【魔王にして真なる聖女】アンジェラ様の伝説を漫画にして、語り継いでいきたいと思いますわ」
「【魔王にして真なる聖女】……なんだか、訳が分からない称号ね」
私は呆れたように言ったけど、漫画の主人公になれるというのは、悪い気はしないわ。
いや、むしろ、それって最高じゃないの?
だって、この私こそ、新たな物語に登場する悪のカリスマとなれるのだから。
そう、前世の私の胸をときめかせ、病室で勇気づけてくれた悪のカリスマに……
ユリシアの協力のおかげで、漫画を世界に広める計画も順調に進んでいるし、これから、ますます楽しくなっていくわね!
「ユリシア、そろそろ、行こうか」
「はい、レオン様。アンジェラ様、また後ほど」
新たな門出に立つ二人を、私は心からの笑顔で見送った。
やがて、今日一番の歓声が沸き起こる。その祝福の大渦の中で、私は一人、静かに呟いた。
「このゲームをプレゼントしてくれて、ありがとうお父さん」
【完結】
祝福を告げる鐘の音が、青空に響き渡る。王宮のバルコニーから、色とりどりの紙吹雪が舞い散っていた。
今日は、勇者王レオンと聖女ユリシアの結婚式よ。国中が、新たな時代の幕開けに熱狂していた。
王宮に詰めかけた人々の歓声が、私がいる控室にまで、響いてくるわ。
「アンジェラ様。今日という日を迎えられたのは、すべて、あなたのおかげです」
正装したレオンとユリシアが、やってきてお礼を述べた。
私はレオンに招待されて、【水の聖女】として結婚式に参加することになった。
本来のゲームシナリオでは、父王を殺害したレオンは罪悪感を打ち消すために国の復興に全力を注いで、ユリシアとの結婚どころではなかったわ。
「本当に、よく似合っているじゃないの2人とも! ところで、和平の条件については大丈夫よね?」
「はい。魔族を狩る者は、厳罰にする法律を作りました。魔石の供給については、自然死した魔族の魔石を魔王から売ってもらうということで、商人たちを納得させました」
アステリア聖王国と一時的な和平を結ぶにあたって、このような取り決めをしたわ。
ふふっ、魔石を売ることで、私は魔族たちを守れるだけでなく、莫大な利益を得ることができる。
これは私の悲願である大魔王復活を成し遂げるために、大いに役立つ筈よ。この世界のどこかに出現するであろう、水、風、火の聖女を見つけ出して、協力を取り付ける必要があるんだからね。
「ありがとう。もし、約束を破って魔族を狩る者がいたら、その個人だけでなく背後の組織ごと、すべて私の奴隷にするからね」
「もちろんです。そのような者は、僕たちの和平を壊す敵ですから」
レオンは迷いなく頷いた。
これなら和平を保ちつつ、私の奴隷をガンガン増やせるわ。
相手が悪人なら奴隷にするのに遠慮いらないしね。
なにより、私は人間が憎い訳じゃなかった。
私が悪を目指したのは、前世のお父さんに反発して、自分の好きなことを貫く、悪い子になりたかったから。だけど……
本当に欲しかったのは、私のことを愛してくれる家族と、真実の私を知っても嫌わない真の友達。前世でそれは、決して手に入らなかった。
前者は仕方ないとしても、後者に恵まれなかったのは、きっと自分を肯定して貫き通す「心の強さ」が私には欠けていたから。薄っぺらい陽キャの皮を被ったまま、真実の自分を見せずに他人と仲良くしようとしたから……
だから、レオンとユリシアには、本当の自分を隠すことなく見せた。
これには勇気が必要だったけど。
悪にとって最も重要なのは、何者にも縛られず、己の魂に正直に生きること。
今世で、私は堂々と悪を貫き、欲しいものを手に入れたわ。
だから、とても誇らしい気持ちになっていた。
「……お互いの利益となれる和平条約を結ぶことができて、本当に良かったですわ、アンジェラ様」
輝くほど美しいウェディングドレス姿のユリシアが、喜びに満ちあふれた目で私を見つめた。
「すべては、アンジェラ様がわたくしたちの友人となってくれたおかげです。今はまだ、アンジェラ様が魔王だったという真実は明かせませんが……」
ユリシアはレオンと視線を交わし、決意を込めて続けた。
「【薔薇十字団】を倒し、魔王への偏見が薄らいだら。真実を公表し、【魔王にして真なる聖女】アンジェラ様の伝説を漫画にして、語り継いでいきたいと思いますわ」
「【魔王にして真なる聖女】……なんだか、訳が分からない称号ね」
私は呆れたように言ったけど、漫画の主人公になれるというのは、悪い気はしないわ。
いや、むしろ、それって最高じゃないの?
だって、この私こそ、新たな物語に登場する悪のカリスマとなれるのだから。
そう、前世の私の胸をときめかせ、病室で勇気づけてくれた悪のカリスマに……
ユリシアの協力のおかげで、漫画を世界に広める計画も順調に進んでいるし、これから、ますます楽しくなっていくわね!
「ユリシア、そろそろ、行こうか」
「はい、レオン様。アンジェラ様、また後ほど」
新たな門出に立つ二人を、私は心からの笑顔で見送った。
やがて、今日一番の歓声が沸き起こる。その祝福の大渦の中で、私は一人、静かに呟いた。
「このゲームをプレゼントしてくれて、ありがとうお父さん」
【完結】
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