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3章。妹と合体する。風竜機神シルフィード

24話。幼馴染との最後の対決。前編

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「おおっ、これはヘルメス様! あなた様が我が息子となってくれると聞き及び、各国から祝いの使者が続々とやってきておりますぞ!」

 パーティ会場に近づくと、上機嫌の国王陛下が声をかけてきた。

「特に先日、伝説の魔獣を撃退した機神ドラグーンはすばらしいと評判です! あの機体の量産化に成功すれば、我が国はかのゼバルティア帝国を超えて、この大陸の覇者となれるのでは?」

 ゼバルティア帝国は8年前に俺たち一家を襲った暗殺者を放った国だ。にも関わらず、今回の婚約パーティーに、何の臆面もなく親善大使を派遣してきている。
 奴らの鼻を明かしてやりたい気持ちは、もちろんあるが……

「国王陛下、機神ドラグーンは対ドラゴン兵器です。人の手に負えない魔物を倒すのが目的です。国家間の戦争の道具にするつもりは、俺にはありませんが?」

 国王陛下の目が欲に濁っているのを感じ取って、俺は釘を刺した。

「む、無論! 無論です! ただ平和のためには抑止力も必要です。軍事パレードに機神を登場させたりする程度は……」
「それもお断りします。そもそも、この婚約はレナ王女から、ぜひにと頼まれた仮初めのものです。俺はいずれ王宮を去ります。そのことをお忘れなさらないでください」
「な……っ!? 何かヘルメス様のご不興を買うようなことが、ございましたか?」

 国王陛下は顔を引きつらせて、媚を売るような声を出した。
 ご不興も何も事前に約束していた通りのことなんだが……

「……お父様、実はロイ様の妹が、ヴァルム公爵家のアゼル様に手討ちにされかけたのです」

 レナ王女が父親にそっとささやく。

「な、なんと……!? これは申し訳ございませんでした。ヴァルム公爵家には、厳重注意をさせていただきます。また、今後は警備を厚くし、2度とこのようなことが無いように尽くします!」

 国王陛下は俺に深々と頭を下げた。
 その態度に、周りの人々は仰天している。一国の王が平民に頭を下げるなど、あり得ないことだ。

「ありがとうございます。ただ、俺や妹に必要以上の特別扱いはご不要に願います」
「はっ! 寛大なるお言葉に感謝いたします!」

 必要以上にへりくだる国王陛下に、俺は閉口してしまう。
 その時、俺の【クリティオス・カスタム】に緊急通信が入った。
 相手は【ドラニクル】のメンバーのメイドだった。

「どうしたんだ……?」
『大変です、ヘルメス様! 聖女ティアが王宮に不法侵入し、パーティ会場に向かっています!』
「ティア様が!? 何をしているのです、すぐに取り押さえなさい!」

 レナ王女が血相を変えて叫ぶ。

『はっ! し、しかし、ティアは自らの首にナイフを突きつけ、近づいたら自害すると!』
「なに……っ!?」

 これはさすがに予想していない展開だった。
 婚約パーティーを行えば、ティアはあきらめると思っていたのだが……

「……こ、この祝いの席を逆恨みからブチ壊すつもりか!? ゆ、許さんぞ聖女め!」

 国王陛下が激怒した。マズイな……
 ティアは今回のことで、確実に罪に問われるだろう。
 最悪のケースとして、他国の使者をトラブルに巻き込んだ場合、謝罪のためにティアの首を差し出すことになるかも知れない。
 幼馴染をそんな目に合わせる訳にはいかない。

「国王陛下、ティアの対処は俺に任せていただけませんか?」

 なら、ティアの感情はすべて俺にぶつけさせるべきだ。

「ヘルメス様が? もちろん構いませぬが……」
「ありがとうございます。それで、ティアは何と言ってきているんだ?」
『それが、自分こそ風竜機シルフィードの主であり、ヘルメス様の真の婚約者だとか。支離滅裂なことを……!』

 【クリティオス・カスタム】から、困惑した声が響いてきた。

「自分はお兄ちゃんを手ひどく振っておきながら、自分が振られたら周囲を巻き込んで暴れるなんてヤバ過ぎだよ。お兄……じゃなかった、ヘルメス様、どうするの?」

 シルヴィアが、顔を曇らせる。

「大丈夫だ。俺に考えがある」
 
 俺は妹の頭を撫でてやった。
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