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3章。妹と合体する。風竜機神シルフィード

33話。アゼルの協力

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「おおっ、ヘルメスよ! 我が息子よ! よくやってくれた!」

 国王陛下が作戦司令室に顔を出して、感極まって叫んだ。

「おぬしが勝利してくれたおかげで、いけ好かないゼバルティア帝国の使者を黙らせることができたぞ! 我が国の軍事力の強大さを国内外の貴族に見せつけることができたな! ワハハハハハッ」
「王国の発展は、すべてヘルメス様のおかげですわ! その上、機神ドラグーンの力を知れば、帝国もおいそれとは、王国に邪心は抱かないでしょう! 我が国の平和は守られたのです!」
「お兄ちゃんは、この国に無くてはならないスーパーヒーローだね!」

 レナ王女も俺の手を取って喜ぶ。シルヴィアも無邪気に賞賛してくれた。
 結果として、国王陛下の望む武威の誇示にも貢献してしまったな……

「もし機神の開発や運用に必要がモノがあれば、何でも言ってくれ! 何よりも優先して、手配しよう!」

 国王陛下が胸を叩いて請け負った。
 
「……それでは【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】という組織について、調べていただけませんか? 今回の事件の黒幕です」

 俺が今、なによりも知りたいことだった。
 国王陛下は浮かれているが、敵の力を知った俺はとてもそんな気分にはなれない。早急に対策を立てていく必要があった。
 
「なぬっ? 【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】とな……?」

 国王陛下は顔を引きつらせた。何か知っているようだ。

「お父様、お心当たりが……?」
「う、うむ。実在するかは確かではないのだが【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】とは、世界各地の伝説にたびたび顔を出す魔法秘密結社だ。神の血を引く人間だけをメンバーとし、古代魔法の英知を継承しているという。時の権力者と結びついて、歴史を自分たちの都合の良いように動かしているとかなんとか……」
「神の血を引く人間だけをメンバーに……?」

 そう言えばオデッセは俺のことを【資格無き者】などと呼んでいたな。
 自分たちの血統を特別視し、それ以外の人間を、そのような俗称で呼んでいる可能性がある。

「神の血を引く人間は、【薔薇の紋章】が身体に浮き出るらしい」
「【薔薇の紋章】? まさか……俺の両親を殺した男の手にもあった痣のことですか?」
「ちょっと、お兄ちゃん……!」

 俺が深刻な顔をしたためか、シルヴィアが心配そうな声をかけた。

「ただ、ワシは王位を継いで20年になるが……未だに【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】などという輩から接触されたことはない。時の権力者と結びつくというのに……ワシが小国の王だからか? ヘルメスのおかげで我が国は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだというのに……」

 国王陛下は、しょんぼりしていた。
 今の話は、オデッセの言葉と合致する部分がある。
 あの【機械仕掛けの神】ルドラも、古代魔法の英知で造られたと考えれば、納得できた。

「その【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】が、我が国とヘルメス様を危険視して攻撃を仕掛けてきたということでしょうか?」

 レナ王女は不安そうな顔になる。

「可能性としては、かなり高いと思う。歴史を自分たちの都合の良いように操っているとしたら、この国の急激な発展や、機神ドラグーンのような超兵器の存在は許せないのかも知れないな」
「なんで!? お兄ちゃんの開発した魔導具のおかげで、私のような足の不自由な子もふつうに生活ができるようになったし、冒険者も命を落とすことが減って、みんな助かっているのに? なんで、それが許せないの!?」

 シルヴィアが怒りに拳を握り締めた。

「力を独占し、特権的な立場を得た者は、それを脅かす存在が許せんのだよ。ワシも王だから、良くわかる」

 国王陛下がウンウンと頷く。

「そんな組織の好きにさせるわけにはいきませんわ。あっ、もしかすると、ドラゴンやケルベロスの襲来も【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】の仕業では?」
「……その可能性は高いだろうな」

 奴らは、王宮に攻撃を仕掛けてくるような危険な組織だ。法を犯すことや、他人を傷つけることを何とも思っていない。
 そんな組織の暗躍を許す訳にはいかないな。
 それに、あの男も一連の事件に深く関わっている気がする。

「国王陛下、【聖竜機バハムート】の開発を急ぎたいと思います。希少金属の聖銀(ミスリル)が足りていないので、追加で10トンほど、提供していただくことはできませんか?」
「10トンものミスリルじゃと!? お、おぬしは毎回、とんでもない無茶を言うのう。ミスリルは今、世界的に不足して値段が高騰しておるのだ……」

 ミスリルは、悪魔やアンデッドといった邪悪な魔物を滅ぼすことのできる聖なる武器の材料となる。
 【聖竜機バハムート】の開発に、必要不可欠な素材だった。

「それは俺様が提供しよう!」

 それまで、俺たちのやり取りを黙って見ていたアゼルが声を上げた。
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