【機神の錬金術師】「無能のあんたが憧れの錬金術師なわけない!」と俺を振った幼馴染。俺が結婚したかった人だと知り死ぬほど後悔してるがもう遅い

こはるんるん

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4章。ホムンクルスのルーチェ

37話。ランディ、ロイの贈り物の価値に気づく

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【聖女ティア視点】

「あっ、ああ、やっちゃったわ!?」

 ひとりになった私は頭を抱えた。
 もっと、素直にロイに今までのことを謝って、またパーティーを組んで欲しいと考えていたのに……
 ついプライドが邪魔して、エラソーな態度を取ってしまったわ。

「ふんッ! あいつったら、私がヘルメス様のことが好きだからって、嫉妬しているのね」

 私は起き上がって、精一杯強がった。
 ロイとは腐れ縁の幼馴染。なんだかんだで、私との関係は続くものと思っていたけど……
 もしかすると、その考えは甘いのかも知れない。
 不安と自らの至らなさを誤魔化すために、私は怒鳴り散らす。

「……何か忙しいとか言っていたけど、幼馴染の私より優先すべきことって何よ? レナ王女と冒険に行くとか? ふんッ! レナ王女なんて、ちょっと美人で胸が大きくて、Sランク冒険者なだけじゃないの!」

 ……って、私ってば、全部負けているんじゃないの!?
 なんとか気を取り直すために、私はテーブルに戻って、ロイからもらった箱を開けた。

「でも、私のためにプレゼントを用意してくれるなんて、ロイってば、やっぱり良い奴よね……」
 
 中には、なにやら銀製の腕輪と指輪が入っていた。私の大好きなヘルメスブランドに似たデザインで、どちらもなかなかオシャレだわ。
 へ、へぇ……またちょっとロイのことを見直したわ。

 どうやら、何かの魔法効果を持つ魔導具のようね。説明書も同梱されていた。
 私は説明書に目を通す。

「なになに……腕輪は【空を自由に飛びたいな腕輪】。魔力を通すだけで空を飛ぶことができる。魔物に襲われたら、これで飛んで逃げろ、ですって?」

 ロイの錬金術オタクぶりは相変わらずのようね。アイツは変な魔導具を作っては、無様な失敗を繰り返していたわ。

 だけど、まあ、この腕輪のデザインは……結構、私好みだし。身に着けてみようかしら。
 私は腕輪を右腕にはめて、魔力を通した。
 すると……

「ぶぎゃ!?」

 私の身体は勢い良く飛んで、冒険者ギルドの天井に頭をぶつけた。
 そのまま落下して、ビタンと床に叩きつけられる。その拍子に、腕輪が外れて転がった。

「ティアさん、大丈夫ですか!?」

 ギルドの受付嬢が目を丸くしていた。

「だ、だだいじょうぶよ……!」

 冒険者ギルドのあちこちから、失笑が聞こえてくる。
 ぐぅうううう……! ロイのせいで大恥かいちゃったじゃないのよ。

「何よ! とんだ失敗作だわ!」

 ロイの冒険者としての実力はSランク級かも知れないけれど、錬金術の腕前はやっぱり下手の横好きだわ。
 こんなんじゃ、指輪の方のデキもお察しだわね。

「か、風の魔法を使わずに空を飛んだだと……?」

 冒険者ギルドに入ってきたランディが、何やら怖い顔をしていた。

「おい、聖女様。今、あんたは天井に頭をぶつけていたよな? どうやったんだ?」
「はぁっ!? 見てたの……ッ!? ちょ、ちょっと、その腕輪に魔力を通したら、空にぶっ飛んだのよ! も、もう恥ずかしいから、この話はおしまい!」
「ちょっと魔力を通しただけだと……?」

 ランディは深刻な様子で、考え込んだ。
 ロイの腕輪を拾いあげて、ランディは何やら勝手にいじりまわしている。その顔は真剣そのものだった。

「ちょっと、勝手に触らないでよ! それは私のモノなんだからね!」

 私はランディの手から、腕輪をひったくった。
 失敗作ではあるものの、装飾品としてはなかなかだし……ロイも私のためにがんばってくれたみたいだから、大事にしてあげても、まぁ、いいかなと思う。

「なあ、この腕輪をどこで手に入れたんだ?」
「話はおしまいだって言ったでしょ! ロイからもらったのよ! ロイから!」
「何……? まさか」

 ランディは目を見張った。
 私は失敗を誤魔化すために、強引に話題を変える。

「そ、それで、私が攻略できそうなA級ダンジョンは、見つかったの!? ヘルメス様に一刻も早く認めていただくのよ!」
「……はぁ、そんなもんはねぇよ。だが、ビックニュースだ。ゼバルティア帝国との国境付近、ラクス村のあたりで、新たにA級ダンジョンが出現したみてぇだ」
「ラクス村ですって……!?」

 それは私の実家のある村じゃないの。
 近くにA級ダンジョンなんかできたら、強力な魔物が溢れ出てきて、お父さんとお母さんが危ないわ。
 す、すぐに帰らないと。

「わかったわ! とにかく、そこに行ってみましょう!」
「おいおい、まさかアンタの実力でいきなりA級ダンジョンに潜るとか言うじゃないだろうな?」
「違うわよ! そこは故郷の村なの! 様子を見に行くわよ。ついて来て!」

 私はそのまま冒険者ギルドを飛び出した。
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