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3章。魔王城、攻防戦
31話。聖女シルヴィア、軍勢を率いて出陣する
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「城塞都市ゼルビアに送り込んだ、試験部隊が全滅だと!?」
伝書鳩の知らせを受けたロイドお父様が、驚きに声を震わせていた。
「どうしたんですの、お父様?」
聖女である私の問いかけを無視して、お父様は食い入るようにメモ書きを読む。
「な、なんということだ……アルフィンによって、エンジェル・ダストの実験が中止に追い込まれたらしい。天兵を魔王城に送り込む計画は御破算だ!」
「はあ?」
私は間の抜けた声を上げてしまった。
「クソっ! 捕らえられた聖騎士どもの口から、俺の名前が出るようなことがあったら……お、俺の名声に傷がつくではないか!?」
お父様は腹立ち紛れに近くの壁を殴りつける。壁は陥没して、大穴が開いた。
名声ですって? そんなツマラナイことにこだわっている場合ではない。
「それはつまり、アルフィンお姉様の抹殺がうまくいっていないどころか。逆にこちらが攻め込まれている、ということじゃありませんの!?」
私は激怒してお父様に詰め寄る。
「あ、ありていに言えば、そういうことだが……」
お父様はしどろもどろになった。
まるで状況の深刻さを理解していないようだった。敵は先手を打って、こちらの切り札を潰しにきたんですのよ?
このまま手をこまねいていれば、防戦一方になる恐れがある。
「わかりました! 結構です! お父様になど、任せてはおけませんわ。私が出陣して、お姉様を討ち取ります!」
「い、いや、しかし、お前に万が一のことがあったら……」
「はぁッ!? 聖女である私が、魔王の娘ごときに負けるとお思いですの!?」
私は地団駄を踏んだ。
「それに私とエルトシャン殿下の仲は、現在最悪ですわ! 殿下は、熱に浮かされたように、毎日、毎日、アルフィン、アルフィンって! もう私、気がおかしくなりそうなんですのよ!」
お父様は私にエルトシャン殿下を落とせというけれど、そんなことは絶対に無理だった。
解決策はひとつしかない。
「一秒でも早く、あの魔女をこの世から抹殺しなければ、私に幸せな未来などありえませんわ。お父様、ヴェルトハイム聖騎士団の指揮権をいただきます!
それと傭兵を雇い入れて、魔王城を徹底的に叩きますのよ!」
「指揮権とは……お前が軍の指揮を取るのか?」
お父様は怪訝な面持ちになった。
「ええっ。腰抜けのお父様になど、任せてはおけませんわ。聖女である私が先頭に立って戦います!」
「こ、腰抜けだと……!?」
お父様は一瞬、怒気をにじませたが、怒りをぐっと飲み込んだ。
権力と名声が欲しいこの人は、そのための重要な駒である私に頭が上がらない。強気に出れば、簡単に折れる。
「し、しかし、それには聖王陛下から遠征のお許しをだな。マケドニア王国からも軍勢の通行許可をもらう必要がある。
聖王国軍を魔王城に差し向けるためには、準備に相当な時間が……」
アルフィンが魔王の血を引いていたことを隠したいお父様は、聖王国軍全体を動かすことを渋っていた。
そのために、子飼いの聖騎士たちを使って、天兵の実験などしていたのだが、もうそんな悠長なことをしている暇はない。
「そんなことをしている間に、アルフィンお姉様はどんどん力を付けていきますわ! 今ある動かせる私兵を使って、即刻叩きます! 魔王と戦うのに反対するような奴がいたら、聖女の権威で黙らせますわ!」
私が叩き付けるように言うと、お父様は勢いに呑まれて、コクコクと頷いた。
「わ、わかった……それなら俺も出陣しよう。アルフィンをこのまま放置しておけば、やがて俺の名声も危うくなるだろうからな……」
保身しか頭に無いお父様らしい物言いだった。
魔王ランギルスに勝てないにしても、勇者であるお父様が優れた駒であることは、間違いない。
その時、私の脳裏に閃く物があった。
天使の力を得るというエンジェル・ダストの実験については、私もある程度の話を聞いていた。
それによると、エンジェル・ダストによって得られる力には個人差があるらしい。
まったく力を得られずに副作用で廃人になってしまう者もいれば、爆発的な力を得た者もいたとか……
なら勇者であるお父様に大量投与したら、どうなるかしら? 勇者は『神に勝利を約束された者』と呼ばれる。天使との相性は良いハズ……
かなり上位の天使を降臨させることができるかも知れませんわね。
その結果、お父様は廃人になってしまう危険もあるけれど……尊い犠牲というものですわ。アルフィンさえ倒せれば、お父様はもう用済みですもの。
私は内心、ほくそ笑んだ。
「では、お父様、ヴェルトハイム聖騎士団5000にさっそく出陣の命令を。魔王を再び倒せば、お父様の名声は盤石となります。エルトシャン殿下も、きっと私に振り向いてくれますわ!」
「わ、わかったシルヴィア。この俺とお前の輝かしい未来のため、共に戦おうではないか!」
私は聖女としての力を磨き、天使の7番目の位階にある権天使を召喚できるようになっていた。
天兵と呼ばれる大天使より、上位の天使だ。
奥の手も確保したし、これであの憎き魔女アルフィンをズタズタにしてやれると思うと、笑みが溢れてくる。
さあ、思い知らせてやりますわよ、アルフィンお姉様……!
伝書鳩の知らせを受けたロイドお父様が、驚きに声を震わせていた。
「どうしたんですの、お父様?」
聖女である私の問いかけを無視して、お父様は食い入るようにメモ書きを読む。
「な、なんということだ……アルフィンによって、エンジェル・ダストの実験が中止に追い込まれたらしい。天兵を魔王城に送り込む計画は御破算だ!」
「はあ?」
私は間の抜けた声を上げてしまった。
「クソっ! 捕らえられた聖騎士どもの口から、俺の名前が出るようなことがあったら……お、俺の名声に傷がつくではないか!?」
お父様は腹立ち紛れに近くの壁を殴りつける。壁は陥没して、大穴が開いた。
名声ですって? そんなツマラナイことにこだわっている場合ではない。
「それはつまり、アルフィンお姉様の抹殺がうまくいっていないどころか。逆にこちらが攻め込まれている、ということじゃありませんの!?」
私は激怒してお父様に詰め寄る。
「あ、ありていに言えば、そういうことだが……」
お父様はしどろもどろになった。
まるで状況の深刻さを理解していないようだった。敵は先手を打って、こちらの切り札を潰しにきたんですのよ?
このまま手をこまねいていれば、防戦一方になる恐れがある。
「わかりました! 結構です! お父様になど、任せてはおけませんわ。私が出陣して、お姉様を討ち取ります!」
「い、いや、しかし、お前に万が一のことがあったら……」
「はぁッ!? 聖女である私が、魔王の娘ごときに負けるとお思いですの!?」
私は地団駄を踏んだ。
「それに私とエルトシャン殿下の仲は、現在最悪ですわ! 殿下は、熱に浮かされたように、毎日、毎日、アルフィン、アルフィンって! もう私、気がおかしくなりそうなんですのよ!」
お父様は私にエルトシャン殿下を落とせというけれど、そんなことは絶対に無理だった。
解決策はひとつしかない。
「一秒でも早く、あの魔女をこの世から抹殺しなければ、私に幸せな未来などありえませんわ。お父様、ヴェルトハイム聖騎士団の指揮権をいただきます!
それと傭兵を雇い入れて、魔王城を徹底的に叩きますのよ!」
「指揮権とは……お前が軍の指揮を取るのか?」
お父様は怪訝な面持ちになった。
「ええっ。腰抜けのお父様になど、任せてはおけませんわ。聖女である私が先頭に立って戦います!」
「こ、腰抜けだと……!?」
お父様は一瞬、怒気をにじませたが、怒りをぐっと飲み込んだ。
権力と名声が欲しいこの人は、そのための重要な駒である私に頭が上がらない。強気に出れば、簡単に折れる。
「し、しかし、それには聖王陛下から遠征のお許しをだな。マケドニア王国からも軍勢の通行許可をもらう必要がある。
聖王国軍を魔王城に差し向けるためには、準備に相当な時間が……」
アルフィンが魔王の血を引いていたことを隠したいお父様は、聖王国軍全体を動かすことを渋っていた。
そのために、子飼いの聖騎士たちを使って、天兵の実験などしていたのだが、もうそんな悠長なことをしている暇はない。
「そんなことをしている間に、アルフィンお姉様はどんどん力を付けていきますわ! 今ある動かせる私兵を使って、即刻叩きます! 魔王と戦うのに反対するような奴がいたら、聖女の権威で黙らせますわ!」
私が叩き付けるように言うと、お父様は勢いに呑まれて、コクコクと頷いた。
「わ、わかった……それなら俺も出陣しよう。アルフィンをこのまま放置しておけば、やがて俺の名声も危うくなるだろうからな……」
保身しか頭に無いお父様らしい物言いだった。
魔王ランギルスに勝てないにしても、勇者であるお父様が優れた駒であることは、間違いない。
その時、私の脳裏に閃く物があった。
天使の力を得るというエンジェル・ダストの実験については、私もある程度の話を聞いていた。
それによると、エンジェル・ダストによって得られる力には個人差があるらしい。
まったく力を得られずに副作用で廃人になってしまう者もいれば、爆発的な力を得た者もいたとか……
なら勇者であるお父様に大量投与したら、どうなるかしら? 勇者は『神に勝利を約束された者』と呼ばれる。天使との相性は良いハズ……
かなり上位の天使を降臨させることができるかも知れませんわね。
その結果、お父様は廃人になってしまう危険もあるけれど……尊い犠牲というものですわ。アルフィンさえ倒せれば、お父様はもう用済みですもの。
私は内心、ほくそ笑んだ。
「では、お父様、ヴェルトハイム聖騎士団5000にさっそく出陣の命令を。魔王を再び倒せば、お父様の名声は盤石となります。エルトシャン殿下も、きっと私に振り向いてくれますわ!」
「わ、わかったシルヴィア。この俺とお前の輝かしい未来のため、共に戦おうではないか!」
私は聖女としての力を磨き、天使の7番目の位階にある権天使を召喚できるようになっていた。
天兵と呼ばれる大天使より、上位の天使だ。
奥の手も確保したし、これであの憎き魔女アルフィンをズタズタにしてやれると思うと、笑みが溢れてくる。
さあ、思い知らせてやりますわよ、アルフィンお姉様……!
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