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「ええ、驚いてしまうのは当然だと思います」
「なぁ~~~にが『当然だと思います』だコラァ!!アホか!!!」
「ッ!」

 魔法の力もぶっちぎって怒鳴り上げた俺にめっちゃビックリしてる。ざまぁ。
 うん。一応、脱げかけてたけど被ってたらしい猫も逃げてったよね。思わずだよ。
 だって、コイツ言いながらちょっとドヤったからな。見逃さんぞ俺は。
 つーか、コイツ、まずやるべき事忘れてんじゃないか?俺には必要ないって思ってんのか?

「おい、お前」

 思ったより低い声が出る。
 俺よりデカい図体でちょっとビクついているアシュマルナにイラっとくる。

「さっき選べとか言ったのは何の事だ。どう考えても俺の存在とあのペガサスみたいなやつを消すのは決定事項なんだろーが」

 何を俺に選べと言うんだ、言ってみやがれとアシュマルナを睨み上げる。

「一応、お聞きしますがここでただ漂い」
「たくはねぇな」
「ですよね」
「調子乗んなよお前」
「いえいえ、そんなつもりは……」
「で? どうせ時間を止めていられる間に決めないといけないんだろ? 時間ないんならさっさとしろ」
「察しが良くて助かります」




++++++



 さてさて、生と死の狭間の空間に俺が漂うのは都合が悪いらしい。そりゃそうだ。良くはないだろう。俺だって嫌だよ。
 だから、俺の魂を自分の管理する別の世界に送ってしまいたい。転移した事にすればその世界で引き続き魂を継続出来て予定されている死の時まで生きられるからだ。
 ちなみに調べた結果俺は父さんよりもかなり長生き出来る予定だったそうな。
 それで選んで欲しいというのは、どの世界がいいかという事。やっぱりもう初めっから転移が決定事項だったんじゃん。


「エイリアンみたいなのがいる世界は嫌だな……」

 お勧めとしては剣と魔法の世界な某RPGみたいな世界だそうだ。俺達の世界のゲームを見て面白い事を考えるものだと思って色々採り入れ作ってみたらしい。……どうなんだ、それは。
 過去に何人かに神の加護を気紛れに与えてみた事があったりして、お詫びとして俺が能力とかもらって特別な感じで世界に紛れ込んだとしても、加護とかそういう事にしておけば良さそうな緩い世界らしい。色々と現代日本みたいにはいかないらしいけれど。

「お父様の夢も背負い日本を旅される予定だった染谷さんにとって、どこを選んでも知らない世界なのでその代わりとはなりませんが、自由に旅するという事においては他の世界よりも出来る世界です」
「ふーん、じゃあもうそこでいいか。どこであっても俺が困らない様にしてくれるんだろ?」
「ええ、それはもう『何があっても困らない』様にさせていただきます」

 突然死んで未練しかないけど、まだ生きられるというなら違う世界ででも生きてやる。

「ちなみに俺がそのまま死ぬ、あれもそのままにしておけって言ったらどうしてた?」
「あの後起こるであろう事を予測した結果、すぐ大騒ぎになり染谷さんは未知の脅威による悲劇の事故被害者として有名となり、貴方を捨てたあの母親がしゃしゃり出て来て、お父様を自分から子供を奪った悪役にどうにか仕立て上げて生き別れた息子にこんな形で会うなんてと悲劇のヒロインの様に振る舞い同情を引き金儲けを画策し、その上お父様から貴方が受け継いでいたものも全て手にするという予測が立ってますよ、とお伝えします」
「アイツマジブッコロシタイ」

 うん、想像に容易い。そんな事になる予定だったんなら問答無用で『なかった事』になるわ、俺。アイツの厚顔無恥さすごいからな、血が繋がってんのが本当に嫌だ。

 ——が、しかし、それはそれとしてだよ。アシュマルナ、忘れてないか?
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