106 / 148
104
しおりを挟む
さて、その”国からの返答”だが……。
「……まあ、そうなるだろうと思っていた」
「あー、そうなんだ?」
「総教国、ましてや何やら特別な愛し子だ。敵に回せないから受け入れるしかない、が……」
教会の一室で待っていた俺達にライアスが戻って来てから教えてくれたのは、
『討伐への参加は大変有難く歓迎』
するし
『愛し子様の護衛は王国側で用意した王立騎士団の特別部隊も協力』
させるので、どうか
『安心して欲しい』
という物だった。
そして、その特別部隊の隊長って言うのがガルゴドン王国の騎士団長。第三王子も来るそうだ。
「随分とあからさまだ」
「まあ、しょうがないかも。俺が無知過ぎただけだし」
例の絵姿と共に俺は総教国の政治に関わらない(俺の手を煩わせない為)存在だと通知されているらしいが、討伐の為とはいえ総教国の軍事力でもある聖騎士団をいっぱい引き連れて、他国で堂々と武力行使って普通に考えればかなり良くないなって事に気付いたのはライアスからガルゴドン側の返答を伝えられた、つい先程。
そりゃそうだわ、ここ現実世界だもん。ゲーム感覚の流浪の冒険者じゃ駄目だった。俺、RPGの勇者じゃなかった。
いやー、国の面子云々色々あるって事に気付いてなくて逆に申し訳ない事をしたと思うよ、今更だが。
護衛として特別部隊が来るってのも要は俺を監視する為だけど、ガルゴドンとしては『目的は魔物の討伐だけだし侵略行為なんてしませんよ』とこっちが言ったって信じられる訳ないから当然の事と言えるし。
「向こうが監視したいなら監視させておけばいいんじゃないの」
俺はそう思っていても盲目な聖騎士達は、『愛し子・リヒトの場所は玉座』だが『政には関わらず総教国とは別』だし、その『愛し子に付く護衛の聖騎士も総教国とは別』だと伝えているにも関わらず、このあからさまな感じを出された事に思う事が多々ある様子。いやいや、うーん……。国じゃなく教団の立場だって言いたいんだろうけど……。
俺以外倒せないんだからその条件を受け入れないと”表立って”はどうしようもないしなと思っていれば、ライアスが近寄って来て耳打ちされる。
「実は……」
ライアスが周囲に聞こえない様にこっそりと耳打ちしてきた内容に、何か面倒臭い事にならなきゃいいなあ、なるんだろうなあって思った。
++++++
ガルゴドン王国の特別部隊はトゥアンニコの領主邸にある転移門から来るらしく現地で合流となっている。
俺を護衛するっていうなら迎えに来るんじゃねぇの?と思わなくもないが、別に来て欲しい訳でもないしなって現地まで馬車に揺られながら考える。
何で馬車かって言うと、愛し子が現れて魔物を倒してくれるらしいって話を礼拝堂にいた人達が外に出て広めてしまった様で、歩いて行くには人が集まり過ぎてるっていう理由。でも、現地まで皆ずーっと付いてくるっぽい……。
「さっき、ライアスから何か言われていた様だが?」
「あぁ、あれね。ジェロイスさんから聞いた話らしいんだけど……」
耳打ちされた内容は、こちらからの『討伐』の話を聞いたあちらの反応の話。要はあの返答内容に至るまでの話なんだけど、あの腕輪って本当に色んな事を聞いてるみたいだなって遠い目をしてしまいたくなる。誰が身に着けてるの?やっぱり国王?
「なんかどうも騎士団長は、アシュマルナの存在を実は信じてなかったっぽくて、愛し子の俺の事を疑ってるらしいよ」
「ほう?」
「総教国の真横だけあって信者も多いし経済的に総教国の恩恵を受けている国らしいから、そういう所を隠してたらしいけど……」
今回の事で、国も討伐に乗り出そうとしているのに欠片も強そうに見えない俺が『討伐』するだなんて国軍を侮っているから始まり、総教国の言いなりになる訳にはいかない、そもそも神などいない、故に愛し子は詐欺師だ、化けの皮を剥がして人民を欺こうとした罪で捕まえるだとか何か色々と言い出して国王に詰め寄ったらしい。
「ふむ」
「で、第三王子はー……俺の事気に入ったらしくて欲しいんだって」
「何だと?」
わあ、一気に噴出した怒気がすごい……。
「化けの皮を剥がした詐欺師な俺を捕まえて『見事に騙されていたそちら(総教国やソランツェ)も公表されては困るだろう?』って事で優位に立ちたいみたいだよ」
そして、非公表の代わりに俺の身柄をゲットしようとしているらしい。騎士団長の考えに乗ればそういう事にして手に入れられると気付いたらしく、騎士団長と共に国王に……以下略。
「国王は押し切られたっぽいね」
ソランツェは呆れた様な顔で腕を組んで溜息を吐く。判るよ~その気持ち。筒抜けになってるなんて知らないから好き放題言ってたんだろうなあ。
「……大神官殿は他に何と?」
「ライアスに一応気を付けなさいって言っただけみたい」
「剥がれる化けの皮なんてないという事だからだろうが……リヒトはいいのか?」
いいのか?と言われても、ねえ?
「それ聞くまで監視もしょうがないって思ってたけど、裏を聞くとな……」
何か知らないけど斜め上から喧嘩売ってきた状態?まさかそう返ってくるとは思ってなかったっていう。
「喧嘩売られてるならちゃんと買ってあげようかなって」
どういう買い方になるかは判んないけど。
「……まあ、そうなるだろうと思っていた」
「あー、そうなんだ?」
「総教国、ましてや何やら特別な愛し子だ。敵に回せないから受け入れるしかない、が……」
教会の一室で待っていた俺達にライアスが戻って来てから教えてくれたのは、
『討伐への参加は大変有難く歓迎』
するし
『愛し子様の護衛は王国側で用意した王立騎士団の特別部隊も協力』
させるので、どうか
『安心して欲しい』
という物だった。
そして、その特別部隊の隊長って言うのがガルゴドン王国の騎士団長。第三王子も来るそうだ。
「随分とあからさまだ」
「まあ、しょうがないかも。俺が無知過ぎただけだし」
例の絵姿と共に俺は総教国の政治に関わらない(俺の手を煩わせない為)存在だと通知されているらしいが、討伐の為とはいえ総教国の軍事力でもある聖騎士団をいっぱい引き連れて、他国で堂々と武力行使って普通に考えればかなり良くないなって事に気付いたのはライアスからガルゴドン側の返答を伝えられた、つい先程。
そりゃそうだわ、ここ現実世界だもん。ゲーム感覚の流浪の冒険者じゃ駄目だった。俺、RPGの勇者じゃなかった。
いやー、国の面子云々色々あるって事に気付いてなくて逆に申し訳ない事をしたと思うよ、今更だが。
護衛として特別部隊が来るってのも要は俺を監視する為だけど、ガルゴドンとしては『目的は魔物の討伐だけだし侵略行為なんてしませんよ』とこっちが言ったって信じられる訳ないから当然の事と言えるし。
「向こうが監視したいなら監視させておけばいいんじゃないの」
俺はそう思っていても盲目な聖騎士達は、『愛し子・リヒトの場所は玉座』だが『政には関わらず総教国とは別』だし、その『愛し子に付く護衛の聖騎士も総教国とは別』だと伝えているにも関わらず、このあからさまな感じを出された事に思う事が多々ある様子。いやいや、うーん……。国じゃなく教団の立場だって言いたいんだろうけど……。
俺以外倒せないんだからその条件を受け入れないと”表立って”はどうしようもないしなと思っていれば、ライアスが近寄って来て耳打ちされる。
「実は……」
ライアスが周囲に聞こえない様にこっそりと耳打ちしてきた内容に、何か面倒臭い事にならなきゃいいなあ、なるんだろうなあって思った。
++++++
ガルゴドン王国の特別部隊はトゥアンニコの領主邸にある転移門から来るらしく現地で合流となっている。
俺を護衛するっていうなら迎えに来るんじゃねぇの?と思わなくもないが、別に来て欲しい訳でもないしなって現地まで馬車に揺られながら考える。
何で馬車かって言うと、愛し子が現れて魔物を倒してくれるらしいって話を礼拝堂にいた人達が外に出て広めてしまった様で、歩いて行くには人が集まり過ぎてるっていう理由。でも、現地まで皆ずーっと付いてくるっぽい……。
「さっき、ライアスから何か言われていた様だが?」
「あぁ、あれね。ジェロイスさんから聞いた話らしいんだけど……」
耳打ちされた内容は、こちらからの『討伐』の話を聞いたあちらの反応の話。要はあの返答内容に至るまでの話なんだけど、あの腕輪って本当に色んな事を聞いてるみたいだなって遠い目をしてしまいたくなる。誰が身に着けてるの?やっぱり国王?
「なんかどうも騎士団長は、アシュマルナの存在を実は信じてなかったっぽくて、愛し子の俺の事を疑ってるらしいよ」
「ほう?」
「総教国の真横だけあって信者も多いし経済的に総教国の恩恵を受けている国らしいから、そういう所を隠してたらしいけど……」
今回の事で、国も討伐に乗り出そうとしているのに欠片も強そうに見えない俺が『討伐』するだなんて国軍を侮っているから始まり、総教国の言いなりになる訳にはいかない、そもそも神などいない、故に愛し子は詐欺師だ、化けの皮を剥がして人民を欺こうとした罪で捕まえるだとか何か色々と言い出して国王に詰め寄ったらしい。
「ふむ」
「で、第三王子はー……俺の事気に入ったらしくて欲しいんだって」
「何だと?」
わあ、一気に噴出した怒気がすごい……。
「化けの皮を剥がした詐欺師な俺を捕まえて『見事に騙されていたそちら(総教国やソランツェ)も公表されては困るだろう?』って事で優位に立ちたいみたいだよ」
そして、非公表の代わりに俺の身柄をゲットしようとしているらしい。騎士団長の考えに乗ればそういう事にして手に入れられると気付いたらしく、騎士団長と共に国王に……以下略。
「国王は押し切られたっぽいね」
ソランツェは呆れた様な顔で腕を組んで溜息を吐く。判るよ~その気持ち。筒抜けになってるなんて知らないから好き放題言ってたんだろうなあ。
「……大神官殿は他に何と?」
「ライアスに一応気を付けなさいって言っただけみたい」
「剥がれる化けの皮なんてないという事だからだろうが……リヒトはいいのか?」
いいのか?と言われても、ねえ?
「それ聞くまで監視もしょうがないって思ってたけど、裏を聞くとな……」
何か知らないけど斜め上から喧嘩売ってきた状態?まさかそう返ってくるとは思ってなかったっていう。
「喧嘩売られてるならちゃんと買ってあげようかなって」
どういう買い方になるかは判んないけど。
応援ありがとうございます!
17
お気に入りに追加
3,332
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる