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「いや、完全に酔ってたな」

 目が覚めて第一声で言いたくなるくらい覚えてるよ。いい気分で飲み過ぎたって思う。

「おはよう、リヒト」
「……おはよ」

 先に起きていたらしいソランツェからおはようのキスをもらった後、もそもそと起き上がる。二人ともしっかりガウンに着替えていたけどそこの記憶は飛んでるっぽい。そもそもいつ寝たのか。まあ、いいや。頭が痛かったり吐きそうで気持ち悪かったりなどはもちろん無いのは助かる。

「えーっと、昨日言ってた事なんだけど……」
「あぁ」
「あれ、どう思う?」
「個人的な感情としては微妙な所だが、好きに動き易くなると思えば悪くはないな」
「だよな」

 俺がいらないって言ったから妥協案で今の運用になってるんだが?って話だけど、なんつーか、言い方が悪いけどライアスがいると色々と便利だなって思っちゃったから変えたい。
 旅先での地元民(主に平民)とのふれあい?みたいなのはいいけど、そうじゃない人達と接触する機会は極力減らしたい俺には、そうじゃない人達とのそこら辺の事を色々と勝手に処理してくれそうなライアスが必要かもって。
 っていうか、海蛇の事もの事も総教国への報告だとか、多分何かしらあったであろう処理は勝手にしてくれてるっぽいんだよな。出来る子だ。

「ライアスの事振り回してるのは申し訳ないんだけど……」
「それは気にする事じゃないな」
よ、一応」

 友達っぽい感じ。感じ、なだけ。






「まあ、やっぱりそういう訳で付いて来てよ」
「承知しました」

 下に降りて改めてライアスに『お前使えそうなんで有効活用したい』的な話をする。一応、オブラートに包みつつって感じだけど、要はそういう話……。

「思いっきり便利屋扱いなのが申し訳ないし、……嫌かもしれないけど」
「いえ、それは私の働きをリヒト様がお認め下さったという事ですので嬉しく思っておりますが……」

 チラッと目線をソランツェの方に向ける。ライアスが遠慮したいって言ってたのは、はっきり言わなくても伝わるあの問題。

「その問題はリヒトがただ気を付けていればいいだけの話だな」
「そうですね」

 ライアスの言いたい事をちゃんと汲み取ったソランツェにすぐさま同意を示し、『お前マジで頼むぞ』的な目をこっちに向けてくる。うん、判ってる。言いたい事は判ってるから。軽率な行動は慎むので、はい。

「いまいちラインが判んないけど(嫉妬心を煽らない様に)気を付けるよ」
「はい、(嫉妬心を煽らない様に)くれぐれもお願いします」
 
 種類は違うが俺とライアス二人の安全の為に気を付けよう。









++++++








 付いて来る事になったので、馬車の設備を紹介。反応としては驚きはするが、あんた神の子だしもう何でもありっスよねーみたいな感じだった。深く考えない、というソランツェの事前アドバイスが効いてるらしい。それがいい。鈍感に生きる方が楽しいよ。多分。
 
「そういえば、ライアスって何歳なんだ?」

 一通り説明も終え馬車の内部を改装してライアスの寝室を作ろうとした時に、ふと歳くらいは訊いておこうかと思い付く。ステータス詳細は、俺達と比べるとね、まあ、『人』なので特に訊かなくてもいいんだけど、年齢くらいは知っておこうかと。

「22歳です」
「え、若っ」
「思っていたよりも若いんだな」

 確実に俺よりは若いけど、ソランツェとは同じくらいかと思ってた。
 ここは成人が早いせいなのか、しっかりしてるっつーか、あれ?もしかしなくても最年長の俺が一番落ち着いてないとか?あはは。
 ……話変えよ。

「部屋の希望、何かある?」
「特にありませ……あ、」
「ん?」
「……いえ、お気になさらず進めて下さい」

 絶対何かありそうなのに、どうしたんだ?

「何かあるなら言えよ。何でも出来るし」

 外から見た大きさ以上の部屋作る事だって可能なんだし何でもいいぞ。どんと来い。

「……いえ、あの」
「どうした?」
「遠慮せずに言っていいんだぞ?」

 二人で顔を覗き込んで訊ねてみれば、非常に言い辛そうに声を絞り出して一言。

「音漏れを……その、はい」

 あー、はい。昨日の朝ね、はい。

「……おう、任せろ」
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