菓子パンくれた先輩の家に連れてかれた

橘スミレ

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出会い

連行された

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菓子パンを貰ったことで。久しぶりに集中して授業を受けれた。空腹は敵だ。今日は用事がないのでさっさか帰ろうと思っていた。だが
「あ、いたいた!山田君、やっほー!」
と声をかけられた。僕の名前だ。この声は菓子パンをくれた先輩だ。
「何でしょうか?」
忙しない先輩に問うと
「今日空いとる?」
といきなり聞かれた。周囲もヒソヒソ声で話している。視線の矢がグサグサと突き刺さる。痛い。それも仕方ないだろう。こんな美人と存在してる(?)状態の僕が話しているという事実が異常だ。脳が日常が終わりかけていると警報を鳴らしている。そんな現実逃避のうちに僕は
「あ、まぁ、はい」
と答えてしまった。脳が完全に非日常に突入したことを告げた。やばい、今日、なにかある。何かわからないけど重大な事件が僕を待ち受けている。そんな僕を気にせず彼女は続ける。
「よかったー。ほな今日一緒に帰ろ。てか一緒に帰るで!」
幾らなんでも乱暴すぎる。確かに予定は無いが、強制連行とは何事か。周りも騒めいている。僕の彼女ではない、と一応心の中で叫ぶが聞こえる訳がない。手を引っ張られた。
「え、ちょ、ちょっと待ってください」
「早よ帰るで」
いろいろ困る。だがどうやら拒否権は無いようなので諦める。彼女に急かされながら靴を履き、学校を出る。門を出てから説明があった。歩きながら彼女は話す。
「いやー視線が痛いね」
肩についたゴミを払うような仕草をしながら話す。
「そうですね」
「だから傷だらけにならないうちに飛び出して来たわけ」
成る程、そういうことなのか。でもなんで僕を連れてきたのだろう。疑問が残る。すると、僕の脳内を読んだように
「あんた、全然ご飯食べてへんやろ。見たら分かるで。ひょろひょろやもん」
「あ、はい」
「やから家来て、そんでとりあえずご飯食べさせようと思った」
「え?」
突拍子すぎない?この人普通じゃないな。と困った顔をしていると
「あ、うちも親はもうおらんから安心してや」
と言われた。何か勘違いされたようだ。
「じゃあなんか食べたいもんある?」
「、、、」
「なんでもええで」
「うどんが食べたいです」
「了解!じゃあ出発!」
僕の脳の理解が追いついていない。でもとりあえず先輩の家に行くことになった。暫く歩きながら、先輩の名前を聞いていないことに気がついた。先輩は上靴に名前を書いていないので全くわからない。
「あの、先輩、名前ってなんですか?」
「あ、忘れてた。ごめんね」
彼女は笑いながら答える。
「私の名前は御厨二葉みくりやふたば、二葉って呼んで。よろしくね」
「よろしくです」
独特な苗字だ。後で調べたところ「御厨」というのは大阪のどこかの地名らしい。
珍しい苗字の彼女。でも、二葉、は可愛らしい名前だな、と思った。
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