百合短編集

橘スミレ

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新米座敷童子の一目惚れ

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 新米座敷童子の翠はガッチガチに緊張していた。
 今日もまた誰かが内見に来ると聞いたからだ。

 翠は重度の人見知りだった。
 座敷童子なので適当にイタズラして遊んでいればいい。
 そうわかっていても知らない人がいると体が固まって動けなくなるのだ。

「あ、きた……」

 ガチャリと鍵が開く音がした。
 頭が痛い。

「お、お邪魔します……」

 気の弱そうな少女が来た。
 翠は珍しいこともあるんだな、と思った。

 前は金色の髪をした化粧が濃くて目付きの怖い女の人だった。
 その前は床を舐めようとして連行されていった性別不明の変態。臭かった。
 そのさらに前は案内してる人を理詰めにして泣かせた男の人。
 みんな怖かった。結局その人たちはみんな内見だけで済むことはなかったけど。

 でも今日は違う。すごく心優しそうな少女だ。
 翠は少女の長い黒髪に少し惹かれた。髪の伸びない自分にはできない髪型だ。

 少女は服をぎゅっと掴んでいる。手が震えている。
 少し早口なのが初めてここに来た時の自分にそっくりだ。
 この人は怖くない。むしろ親近感がわいた。

「この部屋はいいですよ。日当たりもよく、駅からもかなり近い。それに、もしこの部屋に選ばれたならあなたの元に幸運が訪れますよ」
「幸運、ですか?」
「はい。もし部屋の主があなたを選んだのなら幸運が訪れます。あ、事故物件ではないですよ」

 少女は唇を固く結んで黙ってしまった。
 まるで私は騙されないぞと言っているようだ。

 翠は少女を安心させたくて少女の足にぎゅっと抱きついた。
 少女がビクッとした。驚かせてしまったようだ。

 翠は慌てて離れて、少女を見上げる。足元を見る少女と目が合った。
 少女は目を丸くした後、ニコッと笑って案内の人と向き合った。
 翠はお腹の奥から喜びがわきあがってきた。
 この人に住んでほしいと思った。

「少し変な話をしてしまいましたね。次の物件へ移りましょうか」
「いえ。大丈夫です。私、ここに決めます。部屋の主に認めてもらえたようなので」
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