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温かい食事
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ふかふかの地面の上にいる。暖かさに全身を包められている。そんな違和感から目を開くとそこはいつも両親が使っているようなベッドの上だった。おかしい。私は確かに切り株の上で休憩していたはずなのに。
「もしかして、誘拐された?」
そんな不安がよぎる。もしそうならば、早急にここから逃げなければいけない。
ふかふかのベッドで寝かしてもらったから暴力的な人ではなさそう。でも変態おじさんかもしれない。
怖さに足がすくむが勇気を絞り出して寝室をでる。扉を開ければ、すぐに廊下が続いていた。右手側は襖がある。左手側はお洒落な洋風の壁紙が貼られていて、なんとも不思議な空間だ。廊下を観察しているといきなり視界に夜のような黒が写り込んできた。
「わっ!」
見つかってしまった。驚きと恐怖で思わず声が漏れ出る。恐る恐る見上げるとそこには綺麗なお姉さんがいた。服装が真っ暗なせいか、不思議な雰囲気を持っている。
「其方、起きたのかい」
独特な口調のお姉さんは、私に話しかけてきた。知らない人と、二人。やはり、怖い。慌てて声が出ない私とは対称的にお腹が「ぐぅぅぅぅ」と鳴る。私は思わず赤面する。
お姉さんの顔色を伺う。呆れられるか、怒られるか。だが顔を見れば微笑んでいるようにみえた。そして、しゃがんで私の身長に合わせてくれる。
「お腹か空いてるようじゃな。何か食べたいものはあるか?」
私は考える。家では何も食べさせてもらえない。だから給食で凌いでいた。
幸か不幸か私の地区は格段に給食がまずく、誰も食べたがらなかった。だから大量に余った給食を無理矢理食べていた。もし給食が美味しく人気のある地区ならば、私はとうに餓死していただろう。まあそんなわけで食べたいものなどない。食事は生きるためにお腹を満たすだけのことに過ぎなかった。
私が困り果てていると、お姉さんは何かを察したように頷いた。少し考えてメニューを決めたらしい。
「ポトフにしようかの」
ぽとふ? なんだその小難しい名前の料理は。と疑問を残したまま私は和室に連れて行かれた。室内にはちゃぶ台が一つ。座布団が二枚。部屋を取り囲む襖のどこからも日光は感じられなかった。灯が部屋をぼんやりと照らしているだけである。手持ち無沙汰になった私は自分の状況を考える。
名前もわからないお姉さん。全く見当もつかない場所。広い和室にただ一人。これだけ不安になる要素が綺麗に揃っている。だが不思議と恐怖はない。だから、逃げて正解だったと思う。たとえ今殺されようとも、あそこで生きるよりはマシだ。そう結論づけたところで お姉さんは帰ってきた。
襖は自動ドアのようにお姉さんが来ると開いた。両手で持ったお盆の上には白い陶器の器が乗っている
「待たせたの。お腹が減っているのじゃろ?お食べ」
どうやらポトフは野菜と肉を煮込んだものらしい。ニンジンやキャベツ、ジャガイモとソーセージが入っている。白い深皿からはモクモクと湯気が立っている。お姉さんと離れたのは体感でも、ものの数分。元から煮込んでいたのだろうか?
だがそんな疑問も空腹には勝てない。おそるおそる、スプーンを手に取る。まずは透き通ったスープをすくって一口。
「おいしい」
思わず声が出る。
「それはよかったのじゃ」
お姉さんも嬉しそうに微笑んでいる。それから一口食べる。
「おや?これは……珍しく美味しく作れたの」
何やら感慨深げに呟いていたが、私の耳を右から左に流れていった。温かい食事に心が緩みきっていたからだ。
「もしかして、誘拐された?」
そんな不安がよぎる。もしそうならば、早急にここから逃げなければいけない。
ふかふかのベッドで寝かしてもらったから暴力的な人ではなさそう。でも変態おじさんかもしれない。
怖さに足がすくむが勇気を絞り出して寝室をでる。扉を開ければ、すぐに廊下が続いていた。右手側は襖がある。左手側はお洒落な洋風の壁紙が貼られていて、なんとも不思議な空間だ。廊下を観察しているといきなり視界に夜のような黒が写り込んできた。
「わっ!」
見つかってしまった。驚きと恐怖で思わず声が漏れ出る。恐る恐る見上げるとそこには綺麗なお姉さんがいた。服装が真っ暗なせいか、不思議な雰囲気を持っている。
「其方、起きたのかい」
独特な口調のお姉さんは、私に話しかけてきた。知らない人と、二人。やはり、怖い。慌てて声が出ない私とは対称的にお腹が「ぐぅぅぅぅ」と鳴る。私は思わず赤面する。
お姉さんの顔色を伺う。呆れられるか、怒られるか。だが顔を見れば微笑んでいるようにみえた。そして、しゃがんで私の身長に合わせてくれる。
「お腹か空いてるようじゃな。何か食べたいものはあるか?」
私は考える。家では何も食べさせてもらえない。だから給食で凌いでいた。
幸か不幸か私の地区は格段に給食がまずく、誰も食べたがらなかった。だから大量に余った給食を無理矢理食べていた。もし給食が美味しく人気のある地区ならば、私はとうに餓死していただろう。まあそんなわけで食べたいものなどない。食事は生きるためにお腹を満たすだけのことに過ぎなかった。
私が困り果てていると、お姉さんは何かを察したように頷いた。少し考えてメニューを決めたらしい。
「ポトフにしようかの」
ぽとふ? なんだその小難しい名前の料理は。と疑問を残したまま私は和室に連れて行かれた。室内にはちゃぶ台が一つ。座布団が二枚。部屋を取り囲む襖のどこからも日光は感じられなかった。灯が部屋をぼんやりと照らしているだけである。手持ち無沙汰になった私は自分の状況を考える。
名前もわからないお姉さん。全く見当もつかない場所。広い和室にただ一人。これだけ不安になる要素が綺麗に揃っている。だが不思議と恐怖はない。だから、逃げて正解だったと思う。たとえ今殺されようとも、あそこで生きるよりはマシだ。そう結論づけたところで お姉さんは帰ってきた。
襖は自動ドアのようにお姉さんが来ると開いた。両手で持ったお盆の上には白い陶器の器が乗っている
「待たせたの。お腹が減っているのじゃろ?お食べ」
どうやらポトフは野菜と肉を煮込んだものらしい。ニンジンやキャベツ、ジャガイモとソーセージが入っている。白い深皿からはモクモクと湯気が立っている。お姉さんと離れたのは体感でも、ものの数分。元から煮込んでいたのだろうか?
だがそんな疑問も空腹には勝てない。おそるおそる、スプーンを手に取る。まずは透き通ったスープをすくって一口。
「おいしい」
思わず声が出る。
「それはよかったのじゃ」
お姉さんも嬉しそうに微笑んでいる。それから一口食べる。
「おや?これは……珍しく美味しく作れたの」
何やら感慨深げに呟いていたが、私の耳を右から左に流れていった。温かい食事に心が緩みきっていたからだ。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
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