私が魔女になるまで

橘スミレ

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焼き菓子作り

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私は台所で買ってきた材料を整列させる。小麦粉、バター、卵、お砂糖、ホチエキの粉を用意した。
「あら、クッキーを作っているの?」
「ああ。手伝ってくれるかえ」
部屋から出てきたローズに手伝ってもらいながら調理する。ヘラで材料をダマにならないようにかき混ぜる。まとまったら薄く伸ばして冷やす。普通にすれば二十分ほどかかるが私だって魔法使い。ここは三分で終わらせる。鉄板に薄く油を塗る。冷やした生地を四つに分ける。型抜きを持ってくる。
「恵里、バーミー、型抜きする故居間へ来んかね」
すぐさまバーミーが目を輝かせてやってきた。対して恵里はイマイチピンときていないようだ。
「あ、あの~型抜きってなんですか?」
キョトンと首を傾げる恵里。
「あれ、知らない?こうやってね好きな形を選んで押し込んで、抜くと……ほらできた」
ローズが手本をやってみせる。
「可愛い!私もやる」
目の彩度が明らかにあがった。一方バーミーは黙々と作業を進めている。
「さて、妾もするか」
しばらく雑談をしながら大量のクッキーの型抜きを行った。
「可愛いでしょ」
「うんうん、可愛いよ」
すっかり打ち解けた様子のローズと恵里。最初あった時はビビってたのにこんなにはやく仲良くなるとは驚きだ。本当はもう少しバーミーとも仲良くなってほしいのだが。
「おや?恵里のはハートが多いのぉ」
「ハートは可愛いもん」
可愛いは正義!など不思議なことを叫んでいる。
「対してバーミーは星が多いね」
「俺は可愛いのより綺麗でかっこいいのが好きだから」
少し自慢げに話す彼。赤いネクタイがかすかに揺れる。
「じゃあここに並べておくれ」
恵里とバーミーが生地を鉄板に並べる間に私は窯を暖める。魔法を使うのでものの数秒であたたまる。
「ほらほら、二人ともはやく並べて」
とローズが急かす。そうしてできた第一弾の鉄板を窯に入れ、魔法で三分ほどで焼き上げる。甘い香りが漂ってくる。
「美味しそうな匂いがする」
「お腹減るね」
そう話す可愛らしい小鳥達に焼き上がったものを取って一枚ずつくわえさせる。
「甘い。これが焼き菓子……」
そうか。恵里は焼き菓子は初めてか。ならば一層弟子にしたいと思ってしまう。
「なんか疲れが取れるな」
「気づいたか。その焼き菓子にホチエキの粉を混ぜておるのじゃよ」
「そういや茜は魔法薬だけは得意だったね」
だけは余計だと思うが事実と言われれば否定できない。悔しい。
「ホチエキの疲労回復効果か」

難しい話についていけなくなった恵里は一人思う。ずっとここに居たい、と。
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