ジパングハザード

OTAKE

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危険指数 【蒼】

紬糸ノ譚

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   死んでやる。

   焦茶色の髪の間から見せるマラカイトカラーの眼光は、まるでその意思を周りに放っているかのようにギラギラと光を発している。
   何処かの軍人か、深緑と黒茶の入り交じった軍服を着込み、片足をずるずると引きずりながら粉々になった廃材の中で歩みを進める   ……死に場所を求め。
   
   「……ここまで来れば人なんていないか……。」

   幾里か歩き回り、男は寂びた遊園地……であったであろう残骸達の前で立ち止まった。辺りは赤錆とツル状植物が蔓延はびこり、鉄骨が剥き出しになった遊具はほとんど原型が残っておらず手探りで確認しなければただの廃棄された粗大ゴミにしか見えない。
   「…ははっ、ゴミにはお似合いの死に場所だ。」
   男は皮肉たらしげに笑った。
   「ゴミはゴミ箱に……ってか。」
   と、どこか悲しげに呟くとゆっくりとゴミでまみれたコーヒーカップの中へ倒れるように寝転んだ。
   せめて遺書でも作ればよかったなぁ……
   ひんやりとした床から体温が抜けてゆくのを感じながら、ぼんやりと心にもないことを考える。
   そして出血跡が濃く残る瞼を、ゆっくり、ゆっくりと閉じ……

   「つまらん。」

   「……!!!!!????!!!」

   る、前に頭上から野太い声が聞こえ、倒していた身体が跳ね上がる。

       ゴォンッッ!!

   「ぎゃあッ!」
   跳ね上がった衝動でハンドル部分に思い切り頭をぶつけ、半球鉄製のドーム内に声が響いた。一連の動作を見ていた声の主はくっくっと呑気に笑い、
   「さっきの陰気な自虐ネタよりも、こっちの方が何倍かおもしれぇぞ。」
   とよくわからない感想を述べている。
   「~~~ッッ────……」
   男はまだ頭が回らないのか、必死に頭を擦りながら涙で滲んだ二つの瞳で声の主をただじっと睨みつけている。
   「っていうかよぉ、自害だか何だか知んねぇけど、他所でやろうぜ。」
   コーヒーカップの縁にしゃがんでコッチを憮然と眺めている声の主─ フードの男は、そう言いながら斜め左方向をくいくいと顎で示す。
   コーヒーカップから身を乗り出し、その方向を見ると、散乱した無機物の集団の中にぽつんと古ぼけた木製の看板が立ててあることに気づく。
   「俺、此処で依頼屋やってんだから。不吉すぎんだろ?店内に仏さんなんてよ…置物にもしたくねぇわ。」
   「ど、どういうことだ……?此処は、だって、もう使われていない遊園地じゃないのか?」
   「あ~…?」
   依頼屋を名乗る男はぴょんと縁から飛び降りたのち、コンコンと金属音を鳴らしながら男に近づいて、ぐっと顔を寄せる。
   「わっかんねぇかな~?リサイクルだよ。リ、サ、イ、ク、ル。」
   「はぁ……?」
   「嫌だねこれだから軍人は、生真面目が多いこと多いこと。訓練のしすぎで脳味噌まで精密な造りになっちゃってなぁ」

   「ッ俺はもう軍人じゃない!!!」
   その言葉が言い終わらないうちに、軍服の男は憤りながらコーヒーカップのボディをガァン!と力強く殴った。
   ゴィィ─   ……ン…………

   静まった廃遊園地に鈍い金属音が波紋のように響いていく。
   驚き目を見開いていたフード男は、少し経った後元の死んだ魚のような目に戻り、ふぅふぅと荒い呼吸でギュッと拳を握り続ける男をじっと見つめる。

   「……じゃあなんだよ?お陀仏必死な死にかけのオッサン。」
   第一声がそれ。謝罪も弁明も無しなフード男をギリギリと睨みながらも、
   「…俺は、俺はまだオッサンって年じゃねぇ……。」
   と皮肉で返した。
   「そこかよ。まぁまだ口答えできる生命力があるなら、まだお陀仏必死とは言わねぇか。」
   その皮肉めいた返事が気に入ったのか、ボサボサに伸びた黒髪の中からキラリと黒紫色の瞳を嬉しげに覗かせ男は振り返る。
   「で、違うなら違うでさ。自己紹介とかないの?」
   「俺は……メロイ連邦スキヴシティ出身の、デント・ジークリオだ……。」
   一呼吸ついて、デントと名乗った男はゆっくりと拳をほどく。
   「へぇー、何座?」
   「何座まで聞くのか?!いいだろ出身と名前だけで!!」
   「チッ、ツマンネ。」
   「は??」
   フード男はちっちっ、と口でいいながら人差し指を立てて左右に降ってみせる。
   「俺はつまらんのは嫌いだ。面白いのが好きなんだよ。つまらなくするなボケ。」
   そう言い切るとぴっと人差し指の先端を、デントの鼻に触れるか触れないかの距離までに突きつける。
   わけがわからない……この巫山戯た行為を続けたことによるのか肩の力がふっと抜けると、その瞬間目からほろほろと熱液が垂れるのが分かった。
急いで土や泥、誰の物かもわからない黒血で染み汚れた袖口で拭うが、その汚れが視界に入るたびに、熱液の量が増していく。
   その行為を見ていた男は、被っていたフードをぐいっと頭から取る。鼻先まで伸びたその黒髪のてっぺんをボリボリと掻きむしりながら、男は不敵な笑みを零して見せた。


   「俺は依頼屋ドドメキ。お前おもしれぇな、ちからンなってやるよ。」


memo:タイトル変えました。内容は変えてないので、ご了承下さい。


 
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