ジパングハザード

危険指数 【蒼】

兆ノ譚

   大帝國ジパング。

   とある球形惑星の陸地の4割を占める大陸アスカンビア。その大陸の北西部の山間部にその國は誕生した。
   古くから鉄鉱石や石炭の産出が他国よりも群を抜いていた事もあり、何年も続く兵器製作は國の経済の根底となっていた。
   帝國は栄えた。他の領地を奪い、支配する征服行為が衰えることは無く、栄華が枯れることは世界中の知的生命体の脳内をよぎることさえない。完璧な中央集権帝國家。
   合言葉は｢完全独占、完全征服｣。
白黒の身体を持つ帝國民全てがその言葉を心情に生活をしている中、
歯の浮くようなその金言にどれほどの他民衆が不満を募らせたのか……───

   何世紀過ぎただろう、資金が那由多余った國家は考えた。
｢もっと強力な兵器を造ったら、この世界全てを征服できるだろう｣
   その計画に手を付けるのは早かった。
軍事国家の全霊を尽くした最先端技術を全て駆使して、早5世紀。
幾度の試行錯誤、幾度の生物実験を終え生まれたのは、人間の体に埋め込む形で搭載する、人工異能力発動装置【シキサイ】。

   【シキサイ】の威力は強大だった。
その完成度に國家権力全てが危惧し、そして酔いしれた。
   まるで国教と化したかの如く、國民はその装置に最大の敬意を示し、始動される日まで祭り騒ぎを繰り返した。

   しかし、幸には必ず凶がまとわりつく事を、誰一人考えやしなかった。

   帝國全体が心を踊らせる始動の日

   東国との決戦の日

   最初に送り込まれた兵器は

   その能力を奮った。

   奮った。

   その能力は

   東国さえも

   自国さえも

   全てを破壊し尽くした。

  ｢全軍撤退！！！！｣
   黒煙と鮮血が飛び散る戦場に
虚しく響いた司令の声を、
逃げ惑う軍人の海の中聞き流した危険分子達は拙い頭で思う。
   戦争は終わった。

   さぁどうしようか？


   敗退に終わった帝國には、もう余り余った資金も、誇りにしていた兵器達も無くなった。残ったのは飢餓に苦しみ、怒りに狂う國民達の非難の声と、血と炎に塗れ焼け焦げてしまった國土だけであった。

   ｢絶対に許す訳がない…探せ！！！例え四肢が見当たらなくなろうとも、探し出して、回収しろ！！！｣

   その発令は國内、植民地内に留まらず、他国、そして全土へと言い渡された。
   見つけた者には最大級の褒美、
見つけられなかった者には最高級の罰。
その兵器の危険指数が高ければ高いほど、賞金額は跳ね上がった。
   他国の軍、他民族や平市民、ギルドや自警軍、果てには犯罪者達までもがその発布に躍起した。
   それから2年ほど経った、アスカンビア大陸の端の端。廃棄場と化した娯楽施設の中に、


   ｢今日も誰も来ねぇか……｣

   青年は廃材と露出した鉄骨の中に1人ぽつりと皮肉を零した。
周りにあるのは手書きの｢依頼屋｣の看板と荒廃しきった遊具だけ。



   ｢じゃあ…一眠りでもすっか。｣



   隷属スレイヴと彩いろを失った大帝国との聖戦に至るまでを紡ぐ
隷属兵器達の冒険と戦いの噺。



memo：内容を少々修正致しました。