力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します

枯井戸

文字の大きさ
117 / 140

ルーツ

しおりを挟む
 ネトリールの中心地。
 だだっ広く、人工的に作られた芝しか敷き詰められていない公園。そこからユウ、アーニャちゃん、パトリシア、ガンマ、そしてジョンの五人はそれぞれチョークを持って、それぞれに割り振られた位置へ散らばっていった。
 描く図形は五芒星ペンタグラム
 俺とヴィクトーリアはちょうどその陣の中心にいる。
 線を引く人数もちょうど。そしてこれから描く白線の延長線上には、何も障害物はない。
 これ以上ないほどの好条件だ。
 あとは全員が、きちんと白線を引けるかどうかがカギとなって──


「あいたっ!?」


 頭頂部に刺すような痛みを感じ、思わず情けない声を上げる。


「す、すまんユウト……痛かったか?」

「い、いや、大丈夫だ。続けてくれ」


 俺たちはいま、空いた時間を活用して俺の頭部への植毛を行っていた。ヴィクトーリアは戸惑いながらも公園の芝生から髪の毛を生成し、丁寧に俺の頭部へ移植してくれている。
 ……まあ、言いたいことはわかる。
 しかし、これしか方法がなかったのだ。背に腹は代えられないのとは違い、芝は毛に変えられるのだ。
 だったら変えるしかないだろう。
 

「あ、あの……、いいのか? ユウト」

「ん? なにがだ?」

「その……ここでこんな事をしていても……」

「こんな事とはなんだ。俺がいつまでもこんな頭だったら、それこそ色々と大問題だろ」

「ならいっそのこと、全部剃ってしまったほうが良かったのではないか? この方法だとその……むやみに私の魔力を浪費するだけになってしまうぞ」

「あのな、いいか? 魔力についてはおまえが心配する必要はない。言ったことなかったけど、こう見えて俺、魔力切れになったことがないから」

「そ、そうなんだな……! やっぱりすごいんだな、ユウトは。こういうのってなんだっけ、絶倫って言うんだったよな?」

「ブッ!? おま、意味わかって言ってんのか!?」


 俺が振り向くと、ヴィクトーリアは首を傾げながらきょとんとした目で、顔で俺を見ていた。


「……まあ、あながち意味合い的には間違ってないのか……? ……ていうか、いまさらそういう事に感心するって事は、普段は俺の事すごいって思ってないって事だよな」

「そ、そんなことはない! 私だってなんだかんだで感謝しているんだぞ! 今回の事だって、ユウトがいてくれなかったらアンは……ネトリールはどうなっていたか……。改めて、いろいろとありがとうユウト。ほんとに。この恩は必ず返すぞ」

「それにしてもアン・・か……、もうアーニャちゃんの事は完全にアン呼びなんだな」

「うん。ユウトやユウにバレてしまった以上、昔から呼んでいるこちらのほうが呼びやすいしな」

「そんなもんかね。……そうだ。アーニャちゃんで思い出したけど、なんでおまえは魔法を使えるんだ? すごい今更な質問なんだけど」


 ふと、ここネトリールに来てから疑問に思っていたことをヴィクトーリアに尋ねてみた。


「ん? どういう意味だ?」

「ネトリールの人間ってそもそも魔法を使えないんだよな?」

「そうだな」

「で、その中でもなんでおまえだけ普通に錬金術を使えてるのかなって思って。錬金術って陣を描いたりするのには魔力は要らないけど、物を作り変える時……反応を起こすときには魔力を使うだろ?」

「確かに使うな」

「……というか、アーニャちゃんの事はわかったけど、おまえの事はまだまだ謎なんだよ」

「それは……」


 言いかけて、ヴィクトーリアは言い澱んだ。そのまま数分返答を待ってみたが、ヴィクトーリアは口を開かなかった。


「……言いたくない事なのか? なら、ムリには聞かないけど」

「いや、どう答えるか考えてた」

「うん、それで?」

「じつはな、自分でもよくわからないんだ。昔から魔法ぽいのはなんとなく使えていた。けど、使うと周りの子に気味悪がられてて……それからユウトに会うまで自然と使わなくなってたんだ」

「自分だけ使えることに疑問を持ったことは?」

「ないな。……というか、それについて深く考えたことがなかった。というより、個性のひとつだと思ってたよ」

「うーん……そんなもんか。じゃあヴィクトーリアの両親は? 魔法使えたりとかはないのか?」

「それがわからないんだ。昔からお世話になっている国王様からは、私の両親は私を産んでまもなく亡くなった……と言われている」

「ちょっと待った。アーニャちゃんと幼馴染なのは知ってたけど、おまえも王族なのか!?」

「え? ……ああ、ちがうちがう。そうじゃない。たまたま国王様に引き取られたというだけだ」

「たまたま引き取られたって……もしかして、ネトリールで産まれた身寄りのない子供は全員国王に引き取られるとかいう決まりがあるのか?」

「いや、そういうわけではないのだが──……そうだな。うん、よくよく考えてみればおかしな話だな」


「――そう。私が引き取ったんだよ」


 完全に魂の抜けた置物のようだった国王が口を開いた。


「だ、大丈夫ですか、国王様!?」


 ヴィクトーリアが立ち上がろうとしたが、国王は手を軽く上げてそれを制した。


「……ああ、心配をかけたようだな、ヴィクトーリア……」

「そ、それで、なぜヴィクトーリアを引き取ろうと思ったのですか?」


 俺は構わず質問をした。国王は俺とは目を合わせず、ただ静かに目を伏せた。


「理由は……まだ言うべき時ではないだろうな……」

「言うべき時……というと?」

「私個人の判断で、軽々しく口にしていい問題ではない」

「そこをなんとか」

「………………」

「な、なるほど……」


 無言の圧力とでもいうのだろうか。俺はそれ以上尋ねることが出来なかった。


「……とはいえ、此度はユウト殿……貴殿をはじめ、多くの地上人に迷惑をかけた。謝って済む問題ではないが、ネトリールの王として、ここに謝罪させていただく。……すまなかった」


 国王はそう言うと、俺に向かって深く頭を下げてみせた。その様子にヴィクトーリアは慌てふためいている。


「こ、ここここ国王様!?」

「あ、頭を上げてください。何をやっているんですか、外部の人間とはいえ、王が簡単に頭を下げないでください。……それに此度も何も、悪いのは全部外道勇者ユウキです。俺がこんな事を言うのはおかしいですが、お気になさらず。国王からすれば、国民だけでなく大事な一人娘まで殺されたと思ってたんです。ここまで乱心なさるのも仕方がないと言えば仕方がないですよ……」

「すまない……」


 国王は俺が何を言っても頭を下げたままだった。俺が行って、無理やり頭を上げさせるのも違うし……、俺は居心地の悪さを覚えながらヴィクトーリアとの会話を続けた。


「……じゃあ、ヴィクトーリアは自分が何者かわからないわけか……ちなみにヴィクトーリアって名前は誰がつけたんだ?」

「私の両親だ」

「そこは断言するんだな」

「国王様がそう仰ったからだ」

「……それは疑問には思わなかったのか?」


 俺は国王には聞こえないよう、小さな声でヴィクトーリアに尋ねた。


「勿論だ。それにそんな事、自分で考えても仕方がないからな。なにせ答えを知らないわけだし」

「うーん……、そういうもんか? でも──それでも俺だったらそれなりに気になるかな。最低でも自分で色々と調べたりはするかも」

「あのなユウト。私はヴィクトーリアだ。アンの幼馴染で、親友で、ネトリール騎士団の一員。それで、今はおまえの仲間だ。それ以外には何もいらないだろ?」

「……ま、それもそうか」

「まあ、騎士っていっても、落ちこぼれなんだけどな……」


 ヴィクトーリアは自慢げに言ったのが恥ずかしくなったのか、ちょっとだけ俯いてみせた。


「……でもそうか。自分が何者なのかとか、どこから来たのか、なんて意味ないのかもしれないな」

「む、何か言ったかユウト?」

「いや、なんでもない」


 俺が会話を切ると、見計らったように目の前の線が淡い輝きを放ち始めた。
 そろそろ図形が完成する合図だ。
 俺は立ち上がってヴィクトーリアを見ると、ヴィクトーリアは静かに頷いてくれた。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...