現実世界に魔物が現れたのでブラック会社を辞めて魔法少女になりました~PCをカタカタするよりも魔物をボコボコにするほうが性に合っていた私、今

枯井戸

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魔法少女誕生

キミ☆女の子だったの!?

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〝プロレ素手喧嘩ステゴロ

 プロレ素手喧嘩とは、私が学生時代に確立させた(私しか使っていなかったけど)喧嘩スタイルだ。プロレスリングから着想を得たド派手な技と、相手の攻撃を躱さないというスタイルで、相手を華麗に沈めるというもの。
 このスタイルの長所は、相手の心に強烈な敗北感を植え付けてやれるところだ。喧嘩なので、当然こちらから相手に攻撃を加えるのだが、相手の攻撃も真正面から受け止める。そのため、技術というよりも根性が特に重要となってくるので、負けたほうはフィジカル的にも、メンタル的にも自分が下だと思ってしまい、二度と私に歯向かわなくなる。

 短所は言わずもがな。
 生傷が絶えないという事。
 今ではほとんどがぱっと見塞がってはいるけど、お酒を飲んだり、興奮したり、何らかの要因で血の巡りが活発になると、古傷が浮かび上がってしまうのである。そのせいでおちおち温泉にも、飲み会の二次会にも行けないのだ。悲しい。
 そして、改めて考えてみると……、ものすごくネーミングがダサい。〝ステゴロ〟でも十分ダサいのに、そのうえ悪魔合体させてしまうなんて……プロレスにも申し訳ないし、なにより玄間さんのネーミングセンスのなさをあまり強く叩けない。

 でも、なんでそんな懐かしいフレーズをこの子が……? どうみても高校生くらいだし、世代的にも、地域的にも知っているはずはないと思うんだけど……。
 もしかして、高校時代の友達の娘さんとか?
 あ、やばい。
 マジで凹んできた。私、もうお母さんって歳なの……?


「う、うおぉぉ……! アネさん……アネさん……っスよね?」


 金髪不良娘は、なぜかプルプルと震えたまま、中腰の姿勢で私のほうに近づいてきた。
 ていうか、ここS.A.M.T.の事務所のはずだよね……なんで一般人の子が普通に出入り出来てるんだろう。


「〝アネさん〟って? あなた、誰かと間違えてない?」

「いやでも、鈴木さくらさん……っスよね?」

「え? じゃあもしかして、本当に高校の時の友達の……!?」


 あ、頭がくらくらしてきた。
 同世代の友達に、かなり早い時期とはいえ、もうこんなに大きな娘さんがいるなんて……しかも私よりも身長高そうだし。ああ、ダメだ。立ち直れない。今日一番の深刻なダメージを受けた気がする。


「や、やっぱ本物だ……! 変な髪型だけど、あの喧嘩スタイル……あのマイクパフォーマンス……ウチが間違えるハズがねェ……! ウチが憧れてた、あの時のアネさんだ!」

「あ、あの時の……?」

「うス! アネさん! お久しぶりっス!」


 金髪不良娘は私の前までやって来ると、深々と、腰をきっかり九十度曲げて挨拶した。


「久しぶりって事は……私の、学生時代の時の友達の娘さんって事じゃないんだよね?」

「は、はい? 娘?」

「あなたのお母さんと、私って同い年なんだよね……?」

「いえいえ! ウチの母ちゃんより、アネさんのほうがひと回り年下っスけど……」

「な、なんだ……。あ、ごめん、ちがったんだね……って、それじゃあ誰……?」


 そうなってくると、ますますわからない。プロレ素手喧嘩を確立させたのは私が高校時代の時。私の高校時代はおよそ十年前……十年前!? マジで!?
 いや、それは今は置いておこう。……それで、この子が高校生だとして、年齢は十五から十八歳、その十年前だから〝小学校に入る前〟か、〝低学年〟ということになる。高校時代の私に、そんな年頃の女の子の知り合いなんていたかな……?


「ええ!? う、ウチの事覚えてないんスか?! アネさん!!」


 不良娘は私の両肩をガッと掴むと、ゆっさゆさと体を前後に揺らしてきた。もしかして、私を誰かと勘違いしてるんじゃないのか、この子。


「あのさ、もしかして誰かと勘違いしてるんじゃない? 自分で言うのもなんだけど、鈴木桜なんて名前、結構いると思うし……」

「でもプロレ素手喧嘩を使う鈴木桜なんて、アネさん以外考えられねっス!」

「それもそうだよね……って、そろそろ揺するの止めてくれない?」

「ああ!? す、すんません! アネさんになんて事を……!」


 不良娘は何度も謝ってくると、埃を払うように何度も私の肩をポンポンと叩いた。


「フム……」

「あ……、な、なんスかアネさん? 人の顔をじっと見て……、もしかして、思い出してくれたっスか?」


 ……いままでその派手な髪や、冗談みたいに長いスカートにしか目がいかなかったけど、よく見るとこの子、スゴく綺麗だな。目つきはちょっと鋭いけど、瞳が大きくて鼻筋も通ってて、『モデルやってます』とか言われても普通に信じちゃう。あと、無駄に出るとこも出てる。


「おや、鈴木さん。芝桑シバクワさんとお知り合いでしたか」

「し、芝桑……?」


 凄い名前だな。
 ……あ、でも、なんか出そう。思い出しそう。今、喉の上くらいまで出かかっている。軽く嘔吐えずいたら、そのまま出てくるのだろうか。……なんてふざけてみたものの、芝桑という名前と目の前の女の子。私の記憶とどこかが食い違っているのか、名前を言われてもまだピンとこない。そもそも私の知り合いに、こういう金髪の不良なんて数えきれないほど・・・・・・・・いたし・・・


「おうコラ、ダ眼鏡! アネさんの名前を軽々しく呼んでンじゃねェよ!!」


 芝桑さんが一喝すると、玄間さんはシュンと俯いてしまった。弱い。
 この慣れたやりとりを見るに、ふたりが初対面じゃない事はなんとなくわかったけど、という事は、芝桑さんも魔法少女なのだろうか?


「うーん、どうすれば……あ、ほら、アネさん! ほらほら!」


 芝桑さんはそう言うと、ショートヘアだった髪をさらに手で束ねて短くし、楽しそうに私に顔を近づけてきた。
 うわ、まつ毛長っ! 唇もツヤツヤだし、動揺してる私の顔が映るくらい目が大きいし。しかもこの子、全く化粧してない。それでここまで肌が綺麗なのは反則だろ。今でもこんなに美人なんだから、子どもの頃なんてただの天使だったんじゃないか?
 生憎私には、天使の知り合いなんている筈がなく、芝桑さんの可愛らしい顔を見れば見るほど、混乱してい──アレ?
 そういえば、近所にひとりだけ坊主頭のヤンチャそうな男の子がいたけど── 


「──もしかして……きみ、ツカサ……くん・・?」
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