現実世界に魔物が現れたのでブラック会社を辞めて魔法少女になりました~PCをカタカタするよりも魔物をボコボコにするほうが性に合っていた私、今

枯井戸

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魔法少女派遣会社

バトる☆魔法少女vs魔法少女

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『では、はじめてください。この訓練はどちらかが〝参った〟〝降参〟と言うか、こちらのほうで、これ以上続行が不可能、もしくは危険だと感じられれば止めさせていただきますので、それまでは思う存分訓練なさってください』


〝思う存分訓練なさってください〟てのも、なんかおかしな気がするけど、とりあえず、相手を死に至らしめるようなこと以外は、基本的に何でもありという事だと私は受け取った。
 しかし、まさか模擬戦とはいえ、年下の子と、こう……戦闘をする事になるとは思ってなかった。それもちょっと、インドアみのある子と。
 ただ、年下と言っても、魔法少女としては霧須手さんのほうが、私よりもずっと先輩になるから、ここは舐めた事はしないで、胸を借りるつもりでやったほうがいいのかもしれない。

 それに、霧須手さんが持っているあの得物。紅紫とかいうポン刀。
 魔法少女の勘というか、昔ヤンチャやってた頃の勘というか、あの刀からは何かこう……危険なニオイがプンプンする。
 すごく抽象的で、曖昧で、具体的にはっきりとは言い表せないんだけど、あの刀は──ヤバい! ……まあ、そもそも、研いである刀自体がヤバいのは当たり前なんだけど。

 ──カランカランカラン……。
 霧須手さんが手に持っていた白鞘を無造作に放り捨てると、両手で刀の柄を持ち、切っ先を私に向けてきた。

白鞘・・之紅姫って呼ばれてる割に、白鞘の扱いは雑なんだね……』

 ──なんてツッコめる雰囲気じゃない。
 うん。明らかに、さっきまでの霧須手さんとは雰囲気がまるで違う。
 ビリビリと殺気を帯びた視線が、刀そのものが纏っている威圧感が、正面の私にひしひしと伝わってくる。
 それに、霧須手さんの構え。
 膝は軽く曲げられており、それでいて、足の裏から床に根が張られているような、まるで、大木の枝の先から刀が生えているような感じ。
 隙が無い。
 これが歴戦の魔法少女。


「フゥ……ッ」


 私は息を短く吐くと、腰を落とし、右足を軽く引き、両手を開いて前に突き出すと、腕を軽く曲げて前傾姿勢をとった。
 私が学生時代によく使っていた、プロレスでもよく見られる構えだ。
 ここから掴み技にも派生しやすいし、相手の攻撃の受け流しにも使える。私が使っていて、一番しっくりきた構えだ。
 もっとも、学生時代に相手の攻撃を受け流したことは一度もないんだけど……。


「参る」


 ユラリ。
 霧須手さんの体が左右に揺れ、一瞬にして気配が、存在が、になる。
 さっきまで目の前にいた筈なのに、というか、今もいる筈なのに、目が、頭が、うまく霧須手さんを認知出来ない。
 例えるならまるで、霧と対峙しているよう。どこに攻撃していいか、どこから攻撃が来るかもわからない。
 しかし、その有り余る殺気だけは相変わらず、私の体の正面から感じられる。

 どうする?
 防御するの?
 でも、どこを?
 どんなふうに?
 そもそも、刀をなんの防具も無しに、体一つで防御することなんて出来るものなの?

 学生時代、フルスイングされた金属バットを、前腕で受け止めた事はあるけれど、あれは鈍器で、これは鋭器。同じように前腕で防御しようものなら、最悪の場合、腕どころかそのまま首も落とされてしまう。
 なら、ここは格好良く白刃取りで……と、言いたいところだけど、そもそも刃の出所がわからない。上から振り下ろされるのか、横一閃に薙ぎ払ってくるのか、あるいは下から伸びてくるのか。そもそも、どの速度で刀が振られるのか。
 それがわからない以上、点で刀を捉える、見様見真似の白刃取りは現実的ではない。
 ならここは、一旦距離をとったほうがいい。
 私はその結論に至ると、正面にいる霧須手さんに背を向け、その場から逃げ出そうとした。が──


「な、なんで……!?」


 私の背後には、霧須手さんがすでに回り込んでいた。依然、私は正面(現在は背後)から殺気を受け続けて・・・・・いるのに、いつの間に──


「──後ろにござる」


 背後から霧須手さんの声が聞こえてきた。
 私はすぐに振り返ったが、そこには誰もいない。


「──衝撃に備えよ」

「へ?」


 ──ガツン!
 首の後ろに物凄い衝撃を加えられる。


「痛ッ!?」


 霧須手さんの遠慮のない攻撃に、思わず顔が歪む。
 バット?
 木刀?
 いや、これは霧須手さんが持っていたのは金属。刀。
 未だに首と胴体が繋がっているの見るに、たぶん峰の部分だ。たしかに痛いけど、まだ、戦闘の続行が不可能になるようなダメージは負っていない。

 私はそのまま前へ倒れ込むと、地べたに手を突き、逆立ちするよう感じで、背後にいるであろう霧須手さんに蹴りを放った。

 ──チ!
 掠った。かかとに、微かな手応え。
 直撃を当てるのは無理だったけど、私の攻撃は当たるんだ。

 私は逆立の体勢から、背中から倒れ込むと、足が地べたに接地する瞬間、その反動を利用して地べたを思い切り蹴った。
 狙いは当然、さっき感じた、わずかな手応えのある場所。
 私は上半身に捻りを加えると、その場所に向かって水平にチョップで薙ぎ払った。


「──わわっ!?」


 感触はない。
 けど、あの声は明らかに動揺していた。
 つまり、あと少し。
 それに、今のチョップで、霧須手さんが後ろへ下がる足音は聞こえた。依然、目では霧須手さんを捉えることが出来ないけど、それはただ見えていないだけ・・・・・・・・
 私はしっかりと両足で立つと、両眼を閉じ、耳に全神経を集中させた。


「な、なるほど……拙者の位置を音で視るつもりでござるな。暗闇の中、目ではなく耳で得物を狩る……キューブロ殿はまさに梟。そして拙者は、さしずめ、狩られるのを待つだけのネズミ……」

「でも、まだ手はあるんでしょ?」

「然り!」


 霧須手さんがそう言うと──
 ザ……ザザ……ザザザ……ザザザザザザザザ……!!
 一方向からしか聞こえてこなかった足音が、増えて、広がり、雑踏へと変わった。
 雑踏は私の周りを取り囲むと、ピタッと足を止めた。


「……なるほど。二段構えってわけね」


 私は観念して目を開けた。


「刀はあくまでも刀で、本命は……白鞘之紅姫あなたの能力は、この増えたり消えたりする体裁きなんでしょ?」

「左様。刀とは即ち一撃必殺の武器にござる。名のある刀工が信念を以て打ち、完成した刃を、魔法少女たる使い手の拙者が義を以て振るえば、インベーダーの心の臓にも届く武器となる。ゆえに、〝どう斬るか〟ではなく〝どう追いつめるか〟が重要になってくるのでござる。追いつめてしまえば、後はただ斬り捨てるのみ……刀を振り下ろすのみ。そう、斬ってしまえさえすれば、対象はただの肉塊となり果てるのでござる。そしてこれこそが、拙者の得意とする型のひとつ〝多重濃霧たじゅうのうむ撃攘ノ型げきじょうのかた〟にござる」

「……えっと、その、ごめん。ちょっと早口だったから、後半あんまり理解できてないかも」

「あ……ご、ごめんなさい……ま、まだ、本番はこれから、なな、なので、か、覚悟、しててください……ね……」
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