現実世界に魔物が現れたのでブラック会社を辞めて魔法少女になりました~PCをカタカタするよりも魔物をボコボコにするほうが性に合っていた私、今

枯井戸

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魔法少女派遣会社

カルマスペシャル☆昨日の友は今日の敵

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 霧須手さんの持ってきたスマホの画面に釘付けになる、私とツカサ。
 それもそのはず。
 なぜならその内容が、ミス・ストレンジ・シィムレスが魔法少女派遣会社に所属するというものだったからだ。


「い、インベーダーが魔法少女に……」

「ど、どういう事っスか、アネさん!」

「いや、私も訊かれても……霧須手さん、これ中継なんだよね?」

「そ、そうでござる。他の職員の人から緊急の連絡があって、それで、見てみたらインベーダーが映ってて、急いでキューブロ殿のところまでやってきたのでござる。いま、クロマさんたちも会議室……じゃなくて、事務所のほうで、テレビを見てるでござる」

「あ、アネさん、インベーダーの野郎、なにか話すみたいっスよ!」


 ツカサに言われ、私は意識を手元のスマホに集中させた。が、背後から何やらひょこひょこと気配がする。見てみると、霧須手さんが鼻の下を伸ばしながら、何とかして私の手元を見ようとしていた。なんて顔だ。


「あ、ご、ごめん。見づらかったよね……」


 そっか。ツカサは私よりも身長が高いから大丈夫だけど、霧須手さんは私よりも若干身長が低いから……。
 私は少しだけ身を屈めると、霧須手さんにも見えやすい体勢をとった。


「これで見える?」

「は、はい、あ、ありがとう……ございます……」

「いいよいいよ、もともと霧須手さんが持ってきてくれたんだし」

『──さて、あたくしが、ここに所属する理由、でしたわね……』


 レンジは固定してあったマイクのひとつを、わざわざ手に取ると、カメラ目線で話し始めた。


『あたくしが、今度はインベーダーとしてではなく、魔法少女として、あえて同じ土俵で、憎きあのキューティブロッサムを、けちょんけちょんにするためですわ!』


 レンジに名指しで挑発される私。
 あまりにも予想外なレンジの言動に、ツカサも霧須手さんも、私を見てきた。
 そして、レンジのこの発言に、画面の向こうにいる人たちがざわつき始める。


『……キューティブロッサム、見ていまして? いえ、あなたなら絶対、見ているはずですわ。あたくしにはわかりますわよ。……ですから、あなたがこれを見ている前提でお話しさせていただきますの』


 レンジはそう前置きをしたうえで、改めてカメラに向き直った。


『あなたからのお誘い、お断りさせていただきましてよ!』

「うん、まあ知ってた……」


 私の返事なんて、あっちに聞こえる筈は無いんだけど、いちおう相槌はうってみる。


『とても驚きましたが、それと同時に、とても光栄であるとも感じました。……ですが、あたくし、あなたとは到底、相容れる事が出来るとは思っておりません。あたくしたちの関係はまさに、水と油、光と影、キューティブロッサムとミス・ストレンジ・シィムレス……』

「どういう事だよ」

『つまり、好敵手ライヴァルという関係上、仲良しこよしで同じ組織に所属するわけには参りませんの。〝両雄並び立たず〟……この国は斯様な言葉があるようですわね。まさにその言葉通り、あたくしは、あなたの所属している組織に対して、宣戦布告をしている組織に所属させて頂くことになりましたの』

「ややこしいな」

『……少しややこしいですわね』

「なら言い換えなよ」

『ま、いいですわ』

「よくないでしょ」

『ですので、よろしいですか、キューティブロッサム! 首を洗って、足を洗って、きちんと身を清めてから、待っていてくださいまし! 今度こそ、あなたを握りつぶして差し上げますわ! うぉーーーーーーーーーーーーーーっほっほっほっほ!』


 レンジは言いたいことだけ言い終えると、高らかに、まるで勝利を宣言するようにして、大声で喚いた。


『……あの、ミス・ストレンジ・シィムレスさん、話の腰を折るようで申し訳ないのですが……貴女が所属されている魔遣社では、一方的に武力を行使しないと宣言していますが……これに関してはどうお考えなのでしょうか?』


 ひとりで気持ちよくなっているレンジに対し、その場にいる記者から、この会見を見た、誰もが思っていた疑問を投げかけられる。レンジは耳障りな高笑いを引っ込めると、その記者に対して、質問し返した。


『……え? そうなんですの?』

『は、はい……。我々が記憶している限りですと、そういった声明が魔法少女派遣会社から出されていたはずですが……』

『うふふ、でしたら簡単な事ですわ! ……聞こえていますか、キューティブロッサム! あなたが先にあたくしを殴りなさい! そうすれば、正当防衛という形であなたをボッコボコに──』


 ──バタバタバタ。
 急にワラワラと、個性豊かな服を着た女の子たちが乱入し、レンジを拘束し始めた。


『はーい、会見はおしまいでーす! 皆さん、これから、ミス・ストレンジ・シィムレスさんの活躍にご期待くださいねー! それではー!』
『ばいばーい!』

『あ、ちょっと! なにをするんですの!? あなたたち、離さないと、ぶち転がしま──』


 ──ブツン。
 中継が切られた。
 おそらく最後にレンジを止めに入ったのは、魔遣社所属の魔法少女たちなのだろう。なんというか、慌ただしい会見だったけど、レンジがあの子たちと仲良くやってそう(?)で、ちょっと安心した。


「な、なんか……すげえ事になってたっスね、会見場……」

「だね。でも、うーん、インベーダーが魔法少女に、ねえ。なんで魔遣社はインベーダーのレンジを引き入れたんだろ? 会社、団体としてのイメージアップを狙うんだったら、むしろ逆効果な気もするんだけど……」

「デュフフ、実はそうでもないのでござる」

「どういう事?」

「説明しよう! ……キューブロ殿は知ってるかどうかわからぬでござるが、ミス・ストレンジ・シィムレスはいままで、破壊活動という名の侵略行為をしたことがないのでござる。今まで手をかけた人数もゼロ」

「うん、それは聞いてる」

「そう。従って、一般人の認識としては、〝インベーダーだけど、無害で、ちょっと変わったヘンなヤツ〟くらいでござる。それに、その見た目も相まって、一部の人外好きからの人気も高い」

「高いんだ……まあ、分からなくもないけど……」

「この事から、魔遣社が行ったミス・ストレンジ・シィムレスの引き入れは、それほど悪くない戦略だと思われ。むしろ、このタイミングといい、狙ってやったものでござろうな」

「うーん……でも、よくよく考えてみると、いくら見た目がいいからって、ひょっとしたら、滅ぼしてくるかもしれない相手なんだよね。そんなのを好きなるって、それでいいのか……? 人として」

「むしろ、人であるからこそ、でござろうな」

「そんなに業が深かったっけ、私たちって……」

「いやあ、それにしても、この短時間で〝男の娘〟と〝人外〟を取り揃えるとは……よくわかっておる。魔遣社、おそるべしにござる!」

「いやいや、感心してる場合じゃないでしょ。この状況、どうにかしなきゃ」

「どうにかするといっても……ミス・ストレンジ・シィムレスがいい感じに内部崩壊を引き起こして、勝手に計画が頓挫する、くらいのを期待するくらいでござろうな」

「それもう神頼み……ていうか、レンジ頼みじゃん!」

「兎にも角にも、ここにいたって拙者らに何が出来るわけでもなし。拙者は一旦、事務所に戻るでござるが……キューブロ殿と、芝桑殿は如何するつもりにござる?」

「私ももう気分が落ち着いてきたし、霧須手さんと一緒に戻るよ。……ツカサはどうする?」

「ウチは……まあ、会議の内容は気になるっちゃ気になるっスけど、家に母ちゃん待たせてあるんで。もう帰るっス」

「ん。了解。もう暗いし、気をつけてね」

「ありがとうございますっス! アネさんもお気をつけて! ……あと、霧須手もな」

「うむ!」


 ツカサはそれだけ言うと、今度こそ、振り返ることなく帰っていった。私と霧須手さんはそれを見送ると、事務所に戻ろうとした。


「──さて、戻ろっか霧須手さん」

「うーむ……」

「……どうしたの? 霧須手さん?」

「戻る前に、ちょっと、いいでござるか、キューブロ殿」

「なに? 改まっちゃって?」

「じつは、芝桑殿が居た手前、あまり大袈裟なリアクションを取らなかったのでござるが……あの会見、ミス・ストレンジ・シィムレスの会見で、暴走したミス・ストレンジ・シィムレスを止めようとした女の子たち、いたでござろう?」

「あ、うん。いたね。たぶん、あの服装の感じからして、同じ魔遣社の魔法少女だと思うんだけど……」

「じつは……その、すこし見覚えがあるというか、面識がござって……」

「え? 本当に!? 誰? どの子?」

「全員……」

「……どういう事?」

「あの時テレビに映っていた、ミス・ストレンジ・シィムレス以外の女の子全員、じつは心臓破坂のアイドル……なのでござる」

「ええ!?」
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