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白銀編
美人有能?秘書エウリー
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龍空城。
それは白亜の浮城。
その城はエストリア城より巨大にして、荘厳。
城に無駄な装飾は一切なく、年代を感じさせる外壁には、傷や損傷の一切が見受けられない。
龍たちの居城にして、タカシの旅の終着点。
タカシはそこで、龍を統べる王『神龍王』との面会に臨むべく、長い廊下をズンズンと突き進んでいた。
そしてタカシの先頭をサキではなく、別の、ひとりの女性が歩いていた。
女性は長く、艶やかな紫色の髪を、シニヨンに結っており、眼鏡をかけている。
そのキリッとした顔立ちと、纏っている知的な雰囲気には隙が無いように見えた。
「こんな時になんだけど、おまえ、エウリーなんだよな?」
「そうだが……、なんだ、どうかしたのか?」
「いや、ちょっと言動と外見が合わないっていうか……、有能秘書にしか見えないというか……」
「クハハ、よくわかったな。我は『軍神』として部下の龍共の教育をしながら、秘書としてもこの辣腕を振るっているのだ。どうだ、恐れ入ったか」
「恐れ入りはしないけど、おまえに秘書なんて任せて大丈夫なのか、この国は?」
「ど、どういう意味だ、それは!?」
「あ、いや、なんていうか、労働過多になってやしないかと、おまえの辣腕とやらの行方を案じてるんだ」
「クハハハハ! なるほどな。バカにされていたのかと思ったぞ! ……問題はない。普段は特にやることがないのだからな」
「なるほど、それでか……」
「おい! 聞こえているぞ!」
「おっと、わるい」
「まったく、貴様というやつは! 同じ神龍だからといって、我を軽んじ過ぎだぞ! せめてこう……、仲良くおしゃべりできないのか!」
「仲良くおしゃべりしたかったのか……」
「え? あ、いや、そういう事ではなくてだな……、我は神龍とはあまり話す機会がないから、貴様とこれを機に仲良くなろうなんて、これっぽっちも思ってもいないのだからな。かかか……、勘違いするなよ!?」
「わかった。わかったから、そんなに興奮すんな」
「だだ、だれが興奮なぞ……!」
「ていうか、おまえ普段しゃべる機会がないとか言ってるけどさ、『軍神』とかって役割を受け持ってるんだろ? だったら、部下と話したらいいじゃねえか」
「わ、我は神龍なのだぞ? それに対し、部下は全て龍。対等におしゃべりできるワケがなかろう?」
「あれ? ここって神龍だけで構成された国じゃねえのか?」
「やれやれ、次から次に呆れたな。記憶を失っているとはいっても、これではまるで部外者ではないか。いいだろう。特別に教えてやるとだな――」
そう言ってエウリーは嬉々として語りはじめた。
「神龍は謂わば、選ばれし龍。龍の中でも、生まれつき高い能力を備わっている龍にのみ与えられる称号だ」
「んだよ、別種族かと思ったけど、称号って……。結局、選別してるだけか」
「いや、そうではない。事実、称号とはあるが、別種族なのだ」
「なら別種族なのに、称号って、どういうことだよ」
「差別問題に配慮した結果だ。仮に種族として神龍と名乗ってしまった場合、非神龍である龍の立場を貶めてしまうだろう? なにせ神の龍だからな。おまえたちの世界に照らし合わせてみれば、外見ではあまり差異のない人間が『我々は王である』と名乗っているようなものだ」
「ややこしい問題だな……だから龍ってことで一括りにしてんのか。そういえば、別種族とは言ってるけど、神龍と普通の龍の差ってどれくらいあるんだよ」
「そうだな。ひとつ例を挙げるとするなら、普通の龍が鍛錬に鍛錬を重ね、幾つもの死線を潜り抜け、歴戦の龍となったとしよう。――だが、それでも生まれてきたばかりの神龍には勝てんのだ」
「……は? 何で? 戦闘で?」
「ああ。それほどまでに、別格。能力も生まれも、何から何まで違う。いくら問題に配慮しても、この差はかなりデカいのだ。そんな存在に対し、ごく普通の一般龍や一兵卒などが、軽々しく口を利けると思うか?」
「無理だな」
「……そ、そうだろう……な」
エウリーはタカシの回答を聞くと、視線を落とし、唇を噛んだ。
「でも、アレだな。それくらい違ってくると、待遇も変わってくるんだろうな。どのみち、普通の龍からしたら、羨ましい限りだろう」
「それが、望まぬものだとしてもか?」
「え?」
「いや、なんでもない。いまのは忘れてくれ。……つまりは、そういうことだ」
「……ちなみになんだけど、神龍って龍空にはどれくらいいるんだ?」
「完全に把握してはいないが、城に所属しているのは、貴様を入れて十体だ」
「無理やりかよ。って、そんなに少ないのか!?」
『そんなに少ないってことは、把握していない分の神龍も少なそうですね。それにタカシさんを神龍って勘違いすることは、やっぱり能力以外では、その差は曖昧だから? それとも、タカシさんの正体が本当に神龍だったとか』
「ちげーよ。でも、たしかにそこはおかしいよな。……なあ、エウリー」
「なな、なんだ……いきなり名前で呼ぶなんて……!?」
「オレが言うのもなんだけど、オレみたいな身元不明の神龍を、こんなにも簡単に城へ招き入れて大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。問題ない」
「なんでだ」
「なんでだ……と言われも、だな……争う理由が見当たらないからだ」
「……まあ、いいや」
『いいんですか? もう追究しなくても?』
「いいんだ。たぶん、ここらへんは価値観の違いだろう。理解できないことは、無理に理解しなくていい。……でもエウリー、やっぱり神龍と龍の違いが曖昧だよな」
「いや、それはない。おまえが神龍たらしめる理由はさきほど言ったばかりではないか」
「いや、それは分かるんだけどさ、なんというか、根拠が弱いんじゃないか?」
「根拠薄弱……? なにを言っているのだ。これ以上ない根拠だと言えるだろ」
「そんなにすごいもんなのか……? その『失われた魔法』って」
「自覚なしに使っているのか!? 貴様は!」
「え、いや、たしかに範囲は出鱈目だし、下手したら国を潰せる魔法だし、地形も変えるし、触れればまず助からないし……――たしかに、やべえな」
「今頃気付いたか、それに、『失われた魔法』はな。我ら神龍以外が使おうとすると、死んでしまうのだ」
「は? 死ぬ?」
「さきほど言っただろう。我ら龍は、神龍と龍とで、その能力が全く違うと」
「あ、ああ……」
「ということは、生まれつき持てる魔力の最大容量も違ってくる。『失われた魔法』は使用するのに、膨大な魔力を必要とする。そのうえ、術者の体にも多大な負担をかける。それは神龍であっても同じだ。そのような魔法を、普通の者が使ったらどうなると思う? 例えるなら、一リットルしか入らない容器から、二リットルの水を取り出すようなものだ。不可能だ。……しかし、それでも無理に出そうとしたら、どうなるかわかるか?」
「どうなるって……、死ぬんだろ?」
「ああ、そうだ。しかし、正確に言うとひっくり返る」
「ひっくり……?」
「ああ。無いものを無理やり出そうとした結果だ。術者は全てがひっくり返る。皮や鱗は体内に潜り込み、内臓は体外へ飛び出す。まるで、靴下を裏返すようなかんじだ。それが術者の体には起こるんだ」
「まじか……」
「まじだ。……だから、わかっただろう? いかに失われた魔法が凄まじいかを」
「これからはできるだけ使用を控えます」
「うむ。そうしてくれ」
「それにしても、十体か……」
「ああ……、いや、王女はもう……いないから、九体だったか……」
エウリーはそう言うと、露骨に肩を落としてみせた。
「あのさ、さっきも話にでてきたけど、王女って誰なんだよ。おまえら三姉妹のうちの誰かじゃねえのか?」
「そんな! 畏れ多い! あの方はもう――はぁ……、王女の話、聞きたいか?」
「え? ああ、頼む。なんか心当たりがなくはないんだ。もしかするとアイツのことかもって……」
「……どういうことだ?」
「オレの同居人――知り合いに、龍がいたんだよ。いままで仲良くしてやったのに、そいつ、最近になって記憶を取り戻したとか言って、消えやがってよ。それも、絶対についてくるなって言葉だけ残してな」
「最近人間界から、龍空へ……だと? き、貴様……! その龍の名前は何て言うのだ!?」
「え? なんだよ、いきなり……?」
「言え! 名前だ!」
「……ドーラだけど……」
「ど、ドーラ……だと……!?」
「ッ!? し、知ってんのか!?」
「いや、知らん」
「うおい!!」
「紛らわしくてすまんな、しかし、ドーラという名前に心当たりはない。こちらからも、知り合いや部下にそれとなく訊いておこうか?」
「あー……いや、大丈夫だ」
「なに、遠慮するな。我と貴様の仲ではないか」
「どんな仲だよ」
「え? 友達じゃないの?」
「馴れ馴れしいわ! 出会ってすぐ友達とか、どこのブラザーだよ、おまえ――」
「ち、ちがうのか……そ、そうだな……馴れ馴れしいよな、こんな龍。鬱陶しいよな……」
「あ、い、いや、ちがわない。今日から、オレたちはソウルブラザーだぜ! へ……ヘイヘイ! ヨウヨウ!」
『ちょ、なんて恥ずかしいことしてるんですか、タカシさん。恥を知ってください、恥を』
「く……クハハハハ! よし、では、そうるぶらざーの仲だ。忌憚なく、その龍の特徴を述べるがよい! 鱗の色は? 牙の型は? 翼膜はどうだった? 爪の形は? 鉤爪型か?」
「いきなりノートとペンを持ち出して、質問攻めにするな! 鬱陶しい! ……そうだな、牙とか翼はよくわからなかったけど、鱗は白銀色だったな」
「白……銀……? 白ではなくて、か……?」
「ん? ああ、たしかに光ってたぞ。ただの白じゃなくて、白銀だ。朝日が差し込んだ雪原みたいな色だったな」
「それは見間違い、ではなくてか……?」
「たしかに一回しか見てなかったけど、その時のことはちゃんと覚えてる。あれは白銀だった。……もしかして、知ってんのか?」
「その龍の名前は……?」
「……ドーラだ」
「シラネ」
「だーかーら! ややこしいわ! なんなんだよ、おまえは! この質問も重複してんじゃねえか!」
「だって、本当に知らないんだもん」
「だもんっておまえな……。てか、なんでそんなに鱗に食いついてたんだよ」
「いや、それが妙でな。白銀の鱗を持っている龍といえば、我は王女しか知らない。もしや、とも思ったが、今度は名前が違うの。だから龍違いかと……」
「白銀の鱗の神龍は、他にはいねえのか?」
「ああ、いないな。神龍で白銀なのは王女様だけだった」
「普通の龍の中ではどうだ?」
「知らぬ。というか、ないな。ないない。普通の龍は、基本的に暗い色のやつしかおらん。黒や限りなく黒に近い緑や、限りなく黒に近い青などだ。普通の龍は、我ら姉妹のように鮮やかな紫色の鱗などには成り得ないのだ。おっと、そういえば、鮮やかな龍鱗もまた、神龍である証拠だった」
「……なあ、ちょっといいか?」
「なんだ? 翼膜の模様を思い出したか?」
「いや、その王女が偽名を使ってた……ってのは可能性としてどうなんだよ? というか、おまえの話を聞いてる限り、そうだとしか思えないんだけど……」
「クハハハハ、まさか! あの腕白で実直な王女に限って、万が一、いや、億が一にでも、そんな小賢しいマネをするわけが……ある!」
「あるのかよ!!」
「あるぞ!」
「あるのかよ! って、もういいわ!」
「そうだ。偽名……もしくは、記憶の欠如により虚言癖になってしまった……とか、その線も無きにしも非ず……!」
「すごい言い様だな、おい」
「たしかに、そなたと人間界で行動していたのは、我が王女であった可能性が高い」
「まじか、ドーラが王女……? 冗談だろ? ……て、ちょっと待てよ」
「なんだ」
「おまえ、王女は亡くなったって言ってたな?」
「ああ、そう言った……な。というよりも、そういう事にしたんだ」
「……聞かせてくれ」
――――――――――――
読んでいただきありがとうございました!
ここらへんから情報の出る量が増えます。ここ解りづらいとか、意味不明とか言って頂けると加筆するかもしれません。
作者自身、どこから書いていいか、どこを書かないでいいか、すこしこんがらがってます(笑)
ではでは
それは白亜の浮城。
その城はエストリア城より巨大にして、荘厳。
城に無駄な装飾は一切なく、年代を感じさせる外壁には、傷や損傷の一切が見受けられない。
龍たちの居城にして、タカシの旅の終着点。
タカシはそこで、龍を統べる王『神龍王』との面会に臨むべく、長い廊下をズンズンと突き進んでいた。
そしてタカシの先頭をサキではなく、別の、ひとりの女性が歩いていた。
女性は長く、艶やかな紫色の髪を、シニヨンに結っており、眼鏡をかけている。
そのキリッとした顔立ちと、纏っている知的な雰囲気には隙が無いように見えた。
「こんな時になんだけど、おまえ、エウリーなんだよな?」
「そうだが……、なんだ、どうかしたのか?」
「いや、ちょっと言動と外見が合わないっていうか……、有能秘書にしか見えないというか……」
「クハハ、よくわかったな。我は『軍神』として部下の龍共の教育をしながら、秘書としてもこの辣腕を振るっているのだ。どうだ、恐れ入ったか」
「恐れ入りはしないけど、おまえに秘書なんて任せて大丈夫なのか、この国は?」
「ど、どういう意味だ、それは!?」
「あ、いや、なんていうか、労働過多になってやしないかと、おまえの辣腕とやらの行方を案じてるんだ」
「クハハハハ! なるほどな。バカにされていたのかと思ったぞ! ……問題はない。普段は特にやることがないのだからな」
「なるほど、それでか……」
「おい! 聞こえているぞ!」
「おっと、わるい」
「まったく、貴様というやつは! 同じ神龍だからといって、我を軽んじ過ぎだぞ! せめてこう……、仲良くおしゃべりできないのか!」
「仲良くおしゃべりしたかったのか……」
「え? あ、いや、そういう事ではなくてだな……、我は神龍とはあまり話す機会がないから、貴様とこれを機に仲良くなろうなんて、これっぽっちも思ってもいないのだからな。かかか……、勘違いするなよ!?」
「わかった。わかったから、そんなに興奮すんな」
「だだ、だれが興奮なぞ……!」
「ていうか、おまえ普段しゃべる機会がないとか言ってるけどさ、『軍神』とかって役割を受け持ってるんだろ? だったら、部下と話したらいいじゃねえか」
「わ、我は神龍なのだぞ? それに対し、部下は全て龍。対等におしゃべりできるワケがなかろう?」
「あれ? ここって神龍だけで構成された国じゃねえのか?」
「やれやれ、次から次に呆れたな。記憶を失っているとはいっても、これではまるで部外者ではないか。いいだろう。特別に教えてやるとだな――」
そう言ってエウリーは嬉々として語りはじめた。
「神龍は謂わば、選ばれし龍。龍の中でも、生まれつき高い能力を備わっている龍にのみ与えられる称号だ」
「んだよ、別種族かと思ったけど、称号って……。結局、選別してるだけか」
「いや、そうではない。事実、称号とはあるが、別種族なのだ」
「なら別種族なのに、称号って、どういうことだよ」
「差別問題に配慮した結果だ。仮に種族として神龍と名乗ってしまった場合、非神龍である龍の立場を貶めてしまうだろう? なにせ神の龍だからな。おまえたちの世界に照らし合わせてみれば、外見ではあまり差異のない人間が『我々は王である』と名乗っているようなものだ」
「ややこしい問題だな……だから龍ってことで一括りにしてんのか。そういえば、別種族とは言ってるけど、神龍と普通の龍の差ってどれくらいあるんだよ」
「そうだな。ひとつ例を挙げるとするなら、普通の龍が鍛錬に鍛錬を重ね、幾つもの死線を潜り抜け、歴戦の龍となったとしよう。――だが、それでも生まれてきたばかりの神龍には勝てんのだ」
「……は? 何で? 戦闘で?」
「ああ。それほどまでに、別格。能力も生まれも、何から何まで違う。いくら問題に配慮しても、この差はかなりデカいのだ。そんな存在に対し、ごく普通の一般龍や一兵卒などが、軽々しく口を利けると思うか?」
「無理だな」
「……そ、そうだろう……な」
エウリーはタカシの回答を聞くと、視線を落とし、唇を噛んだ。
「でも、アレだな。それくらい違ってくると、待遇も変わってくるんだろうな。どのみち、普通の龍からしたら、羨ましい限りだろう」
「それが、望まぬものだとしてもか?」
「え?」
「いや、なんでもない。いまのは忘れてくれ。……つまりは、そういうことだ」
「……ちなみになんだけど、神龍って龍空にはどれくらいいるんだ?」
「完全に把握してはいないが、城に所属しているのは、貴様を入れて十体だ」
「無理やりかよ。って、そんなに少ないのか!?」
『そんなに少ないってことは、把握していない分の神龍も少なそうですね。それにタカシさんを神龍って勘違いすることは、やっぱり能力以外では、その差は曖昧だから? それとも、タカシさんの正体が本当に神龍だったとか』
「ちげーよ。でも、たしかにそこはおかしいよな。……なあ、エウリー」
「なな、なんだ……いきなり名前で呼ぶなんて……!?」
「オレが言うのもなんだけど、オレみたいな身元不明の神龍を、こんなにも簡単に城へ招き入れて大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。問題ない」
「なんでだ」
「なんでだ……と言われも、だな……争う理由が見当たらないからだ」
「……まあ、いいや」
『いいんですか? もう追究しなくても?』
「いいんだ。たぶん、ここらへんは価値観の違いだろう。理解できないことは、無理に理解しなくていい。……でもエウリー、やっぱり神龍と龍の違いが曖昧だよな」
「いや、それはない。おまえが神龍たらしめる理由はさきほど言ったばかりではないか」
「いや、それは分かるんだけどさ、なんというか、根拠が弱いんじゃないか?」
「根拠薄弱……? なにを言っているのだ。これ以上ない根拠だと言えるだろ」
「そんなにすごいもんなのか……? その『失われた魔法』って」
「自覚なしに使っているのか!? 貴様は!」
「え、いや、たしかに範囲は出鱈目だし、下手したら国を潰せる魔法だし、地形も変えるし、触れればまず助からないし……――たしかに、やべえな」
「今頃気付いたか、それに、『失われた魔法』はな。我ら神龍以外が使おうとすると、死んでしまうのだ」
「は? 死ぬ?」
「さきほど言っただろう。我ら龍は、神龍と龍とで、その能力が全く違うと」
「あ、ああ……」
「ということは、生まれつき持てる魔力の最大容量も違ってくる。『失われた魔法』は使用するのに、膨大な魔力を必要とする。そのうえ、術者の体にも多大な負担をかける。それは神龍であっても同じだ。そのような魔法を、普通の者が使ったらどうなると思う? 例えるなら、一リットルしか入らない容器から、二リットルの水を取り出すようなものだ。不可能だ。……しかし、それでも無理に出そうとしたら、どうなるかわかるか?」
「どうなるって……、死ぬんだろ?」
「ああ、そうだ。しかし、正確に言うとひっくり返る」
「ひっくり……?」
「ああ。無いものを無理やり出そうとした結果だ。術者は全てがひっくり返る。皮や鱗は体内に潜り込み、内臓は体外へ飛び出す。まるで、靴下を裏返すようなかんじだ。それが術者の体には起こるんだ」
「まじか……」
「まじだ。……だから、わかっただろう? いかに失われた魔法が凄まじいかを」
「これからはできるだけ使用を控えます」
「うむ。そうしてくれ」
「それにしても、十体か……」
「ああ……、いや、王女はもう……いないから、九体だったか……」
エウリーはそう言うと、露骨に肩を落としてみせた。
「あのさ、さっきも話にでてきたけど、王女って誰なんだよ。おまえら三姉妹のうちの誰かじゃねえのか?」
「そんな! 畏れ多い! あの方はもう――はぁ……、王女の話、聞きたいか?」
「え? ああ、頼む。なんか心当たりがなくはないんだ。もしかするとアイツのことかもって……」
「……どういうことだ?」
「オレの同居人――知り合いに、龍がいたんだよ。いままで仲良くしてやったのに、そいつ、最近になって記憶を取り戻したとか言って、消えやがってよ。それも、絶対についてくるなって言葉だけ残してな」
「最近人間界から、龍空へ……だと? き、貴様……! その龍の名前は何て言うのだ!?」
「え? なんだよ、いきなり……?」
「言え! 名前だ!」
「……ドーラだけど……」
「ど、ドーラ……だと……!?」
「ッ!? し、知ってんのか!?」
「いや、知らん」
「うおい!!」
「紛らわしくてすまんな、しかし、ドーラという名前に心当たりはない。こちらからも、知り合いや部下にそれとなく訊いておこうか?」
「あー……いや、大丈夫だ」
「なに、遠慮するな。我と貴様の仲ではないか」
「どんな仲だよ」
「え? 友達じゃないの?」
「馴れ馴れしいわ! 出会ってすぐ友達とか、どこのブラザーだよ、おまえ――」
「ち、ちがうのか……そ、そうだな……馴れ馴れしいよな、こんな龍。鬱陶しいよな……」
「あ、い、いや、ちがわない。今日から、オレたちはソウルブラザーだぜ! へ……ヘイヘイ! ヨウヨウ!」
『ちょ、なんて恥ずかしいことしてるんですか、タカシさん。恥を知ってください、恥を』
「く……クハハハハ! よし、では、そうるぶらざーの仲だ。忌憚なく、その龍の特徴を述べるがよい! 鱗の色は? 牙の型は? 翼膜はどうだった? 爪の形は? 鉤爪型か?」
「いきなりノートとペンを持ち出して、質問攻めにするな! 鬱陶しい! ……そうだな、牙とか翼はよくわからなかったけど、鱗は白銀色だったな」
「白……銀……? 白ではなくて、か……?」
「ん? ああ、たしかに光ってたぞ。ただの白じゃなくて、白銀だ。朝日が差し込んだ雪原みたいな色だったな」
「それは見間違い、ではなくてか……?」
「たしかに一回しか見てなかったけど、その時のことはちゃんと覚えてる。あれは白銀だった。……もしかして、知ってんのか?」
「その龍の名前は……?」
「……ドーラだ」
「シラネ」
「だーかーら! ややこしいわ! なんなんだよ、おまえは! この質問も重複してんじゃねえか!」
「だって、本当に知らないんだもん」
「だもんっておまえな……。てか、なんでそんなに鱗に食いついてたんだよ」
「いや、それが妙でな。白銀の鱗を持っている龍といえば、我は王女しか知らない。もしや、とも思ったが、今度は名前が違うの。だから龍違いかと……」
「白銀の鱗の神龍は、他にはいねえのか?」
「ああ、いないな。神龍で白銀なのは王女様だけだった」
「普通の龍の中ではどうだ?」
「知らぬ。というか、ないな。ないない。普通の龍は、基本的に暗い色のやつしかおらん。黒や限りなく黒に近い緑や、限りなく黒に近い青などだ。普通の龍は、我ら姉妹のように鮮やかな紫色の鱗などには成り得ないのだ。おっと、そういえば、鮮やかな龍鱗もまた、神龍である証拠だった」
「……なあ、ちょっといいか?」
「なんだ? 翼膜の模様を思い出したか?」
「いや、その王女が偽名を使ってた……ってのは可能性としてどうなんだよ? というか、おまえの話を聞いてる限り、そうだとしか思えないんだけど……」
「クハハハハ、まさか! あの腕白で実直な王女に限って、万が一、いや、億が一にでも、そんな小賢しいマネをするわけが……ある!」
「あるのかよ!!」
「あるぞ!」
「あるのかよ! って、もういいわ!」
「そうだ。偽名……もしくは、記憶の欠如により虚言癖になってしまった……とか、その線も無きにしも非ず……!」
「すごい言い様だな、おい」
「たしかに、そなたと人間界で行動していたのは、我が王女であった可能性が高い」
「まじか、ドーラが王女……? 冗談だろ? ……て、ちょっと待てよ」
「なんだ」
「おまえ、王女は亡くなったって言ってたな?」
「ああ、そう言った……な。というよりも、そういう事にしたんだ」
「……聞かせてくれ」
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読んでいただきありがとうございました!
ここらへんから情報の出る量が増えます。ここ解りづらいとか、意味不明とか言って頂けると加筆するかもしれません。
作者自身、どこから書いていいか、どこを書かないでいいか、すこしこんがらがってます(笑)
ではでは
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竜頭蛇
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ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
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