いぢわる王子様

西羽咲 花月

文字の大きさ
1 / 27

最低な出会い

しおりを挟む
西雅高校の食堂は、今日も生徒たちで大賑わい。


4時間目が終わってから速攻教室を出て走ってきたのに、お目当てのパンはいつも売り切れ寸前。


校内で一番人気のメロンクリームパンの争奪戦は、毎日毎日全校生徒によって繰り広げられているのだ。


とか言ってる私、山本碧(ヤマモト ミドリ)16歳もその一人。



今年この高校に入学したばかりなんだけど、あのメロンパンの味を一度でも知ってしまうともうやめられないの。


ほっぺが落ちる。


っていうのを、ここに来てから本当に経験したよ。


そんなにおいしいメロンパンは、今は私の隣に歩く清原律(キヨハラ リツ)の手の中にある。



「律、早く早く」


私は、とにかく一刻も早くメロンパンをほおばりたくて、友達でクラスメイトの律をせかした。


「待ってよぉ」


律は苦笑いしながら、私の分のメロンパンを差し出してくれる。


「うわぁい♪ いっただきまぁす♪」




大口を開け、大好きなメロンパンをひとかじりした……その、瞬間。


ドンッ!!


私は目の前にいた誰かにぶつかってしまった。


「いったぁい」


顔をしかめて、立ち止まる。


でも、セーフ。


大事な大事なメロンパンは無事だった。



それを見てホッとし、表情を緩めていると律が私をつついてきた。


「何?」


キョトンとして聞く私に返事をしたのは……律ではなく、ぶつかった相手のほうだった。


「『何?』じゃぁねぇ~だろ」


その声の持ち主を、見上げると、キツイ視線が飛び込んできた。



明らかに不機嫌そうな顔のその人物は、私の持っていたジュースを指さしてきた。


「え……?」


見ると、ぶつかった衝撃で相手の制服にジュースがかかっていたのだ。


ヤバイッ!


そう思うと同時に「ごめんなさいっ!」と、あわててポケットからハンカチを取り出す。




あぁもう、なんてドジなんだろう。


と、自分のマヌケさを恨む。


よりにもよって、こんな怖そうな人に……。


「こんな汚れたなハンカチ使えるかよ」


相手はそう言い、私のお気に入りのハンカチを汚いもののように親指と人差し指でつまみ、顔をしかめた。


なにおぅ!?



つぅか昨日洗ったばっかりだってば!!


心の中でそう言い返すが、怖くて言葉にはできない。


「保健室」


「……へ?」


「保健室連れてけよ」


保健室??


「ケガ、したんですか?」


「違げぇよ馬鹿。保健室の雑巾で拭いてもらう」


「はぁ……」




って、それって私のハンカチが保健室の雑巾よりも汚いってこと!?


さすがにそこは何かを言い返そうとしたが……律が横からそれを阻止した。


「やめな。なんかやばいって!」


「でも、こいつ一体何様なの!?」


「そりゃそうだけど、碧がぶつかったのは事実なんだから!」


ぶつかったから?


ぶつかったからってここまで言われなきゃなんないの!?



「おい、なにコソコソしてんだよ」


相手にいきなり右腕をつかまれて、思わず悲鳴を上げそうになる。


「保健室、行くぞ」


「えっ……ちょっと……!」


抵抗むなしく、ずるずると引きずられるようにして律から引き離される。


大好きなメロンクリームパンが床に落ちた。




律!!


助けて!!


必死の思いを込めて律を振り返ったが……生徒たちに紛れ込んでしまい、律の姿はもう見えなかった……。


律……。


この、卑怯者ー!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———       しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」 100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。 しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。 戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。 しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。 そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。 「100年間、貴女を探し続けていた——— もう二度と離れない」 ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア) ——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。 「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」 ユリウス・フォン・エルム(エルフ) ——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。 「お前は弱い。だから、俺が守る」 シグ・ヴァルガス(魔族) ——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。 「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」 フィン・ローゼン(人間) ——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。 それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。 忠誠か、執着か。 守護か、支配か。 愛か、呪いか——。 運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。 その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。 ——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

モテ男とデキ女の奥手な恋

松田丹子(まつだにこ)
恋愛
 来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。  学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。  ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。  そんなじれじれな話です。 *学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記) *エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。 *拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。  ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。 *作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。 関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役) 『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー) 『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル) 『物狂ほしや色と情』(名取葉子) 『さくやこの』(江原あきら) 『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

処理中です...