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我が家へ帰ろう 2 ~レブランドSide~
港に着いて馬車を降りると、すぐに副騎士団長のイズマーニが駆けてきた。
「団長!お久しぶりです。国に戻る事になったのですね!」
「ああ。出迎えご苦労だった、イズマーニ。カタリナとアルジェールだ」
「初めまして、カタリナと申します。アルジェールもご挨拶よ」
「あい!アルジェールです。きしさまがすきです!」
息子は挨拶をした相手が騎士だという事は分かっているらしく、騎士が好きだというあたり、世渡り上手かもしれない。
案の定イズマーニは気を良くし、アルジェールの頭を撫でた。
「騎士が好きなんだ~~嬉しいな!君ならお父様のような立派な騎士になれるよ」
「ありがとうごじゃいます!」
「良かったな、アルジェール」
「うん!」
嬉しそうな息子は早く乗りたいと言わんばかりに船を見上げている。
そんな姿も愛おしい。
かなり顔が緩んでいた私に、イズマーニが咳払いをして言葉をかけてきた。
「騎士団の皆はもう国へ帰国済みです。殿下も閣下のご帰国をお待ちしておりますよ」
「そうか。すまないな、一カ月も留守にしてしまって」
イズマーニには私がロッジェへ滞在する間、ずっと騎士団の指揮をしてくれていた。
殿下へも連絡は行っているはず……皆に心配をかけた分、帰国したらしっかりと働かなくては。
「ご家族が見つかって本当に良かったです!カタリナ様がいない間の団長ときたら魂が抜けてましたから」
「まぁ……そうなのですか?」
「今の団長を見たら、騎士団の皆も驚くでしょうね」
「イズマーニ……」
カタリナが興味深々だ。
そんなところも可愛いが、自分のヘタレな部分を語られて彼女への印象が悪くなるのは避けたい。
私の圧に負けたのか、イズマーニがアルジェールの手を引き、船へと連れて行ってしまったのだった。
「私たちも行きましょう」
「そうだな」
私が腕を差し出すと、彼女の小さな手が添えられる。
こんな小さなやり取りが幸せだ。
彼女から愛する人として認定された私は、とても浮かれていた。
ヴェローナの事や賭けの事など色々と誤解を解いた私達だが、1つだけ問題が残っている。
それは――――
「レブランド様?船へ行きませんか?」
「そ、そうだな。行こうか」
「はい!」
愛する君をこの腕に抱いた日……つまり初夜をやり直そうと考えていた。
あの夜もとても素晴らしいものだったが、彼女にとって悲しい日になってしまっている。
それが心残りで……もう一度、素晴らしいものに塗りかえたい。
そう言ったら君は何て言うだろうか。
ひとまず今は煩悩を振り払い、船へと乗り込んだ。
船に乗っている間もアルジェールはご機嫌で、特に酔う事もなく順調に船旅は進み、3日後にはジグマリン王国のバーノット港に着いた。
そしてそこで出迎えに来ていた公爵家の馬車に乗り込み、ゆっくりと邸へと向かう。
「もうすぐ、とうさまのやしき?」
「そうね、あと二日くらいかしら」
「邸はとても大きいぞ。アルジェールの部屋も用意してある」
「ほんとう?!わーい!!」
「レ、レブランド様……アルのお部屋とは…………」
「君達を見付けてから、ロッジェに滞在している内に連絡を飛ばし、邸の者に指示をしておいたのだ」
私は得意げにカタリナに伝えた。
少し困惑気味だが、きっと彼女も部屋を見たら感動するはず。
「団長、奥様の許可も取らずに改装していたなんて」
「む……居ても立っても居られなかったのだ」
「まったく。思い立ったらすぐに行動なんだから」
「うふふっ。大丈夫ですわ、とっても楽しみです」
「そうか、よかった」
イズマーニの言葉に一瞬嫌がられるのではとドキッとしたが、カタリナは穏やかにそう伝えてくれてホッと一安心する。
皆で会話を楽しみながら途中で宿に泊まり、アルジェールに負担をかけないように邸へ向かうこと二日目。
ようやく公爵邸が見えてきて、息子はどんどん興奮していく。
「とうさま!おしろだよ!すごいおおきいの!!」
「そうだな。あれが父様の邸だ」
「とうさまって、おうさま?!」
「はははっ!残念ながら王様ではないな。父様は公爵だ」
「こうしゃく?」
「王族の次に凄い人だよ。騎士のトップでもある」
イズマーニの言葉に、アルジェールはすっかり固まってしまっている。
頭が追い付いていかない様子だ。
「アルジェールは次の公爵だ。立派な公爵になれるように励むのだぞ」
「うん。ぼく、りっぱなこうしゃくになる!そしてとうさまのような、りっぱなきしさまになるんだ!」
息子の言葉に馬車内には笑い声が溢れた。
アルジェールならもっと素晴らしい公爵になるだろう。
カタリナは息子の姿に目を細めて見守っていた……彼女にとって辛い思い出ばかりの我が国だから心配していたが、今のところ暗い表情をしている事はなく、胸をなでおろす。
そうして馬車はゆっくりと公爵邸の門前に停車し、御者が扉を開いた。
私は馬車から降りて、息子を抱き上げ、愛するカタリナの手を引く。
そこへバタバタと足音がして振り返ると、オーリンが涙ながらに駆けてくる姿が飛び込んできたのだった。
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