34 / 36
四歳の誕生日会 3
しおりを挟む話に花が咲き、盛り上がっていると、ホールの入り口から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「随分盛り上がっているな、レブランド」
「殿下!!」
突然の王太子殿下の登場に皆が頭を下げる。
「祝いの席だ、そう固くなるな」
「はい」
「なんだ、今日の主役はいないのか?せっかくプレゼントを持ってきたというのに」
「私、アルジェールを呼んで参りますわ」
すぐに子供部屋へと急ぎ、遊んでいる最中だったけれど子供たち二人をホールへと連れて来た。
アルジェールは自分のお祝いだと分かり、ひと際嬉しそうだ。
「とうさま~~」
「アルジェール、殿下に挨拶をしよう」
「でんか?」
「この国で一番偉い王族だ」
「はい!」
殿下はアルジェールに近付き、息子と同じ目線まで屈んで挨拶をして下さる。
「そなたがアルジェールか。私はデュロメオだ」
「よろしくおねがいします!」
「いい挨拶だ!将来有望だな」
「はい!」
「はははっ」
息子の挨拶に殿下が大きな口を開けて笑っている。
この国の王太子殿下はとても素敵な方ね。私とレブランド様の縁談も取りなしてくれていたと聞いたし、私もお礼を伝えなければ。
「殿下」
「パッカニーニ公爵夫人、久しいな」
「はい。結婚式以来ですわ」
「無事で何よりだ」
「恐れ入ります……レブランド様との縁談で殿下には大変お世話になったと伺っております」
「はははっ!気にするな。レブランドがあまりに本気だったので面白そうだと思っただけだ」
「それでも感謝しておりますわ。こうして息子も授かり、愛する人と結ばれる事が出来ました」
私は噓偽りない言葉を殿下に伝えた。
殿下はレブランド様が私に愛されているのかを心配していると思ったから。
デュロメオ殿下は私の顔をジッと見つめ、フッと表情を崩す。
「そうか、それは良かった。レブランドも良かったではないか、カタリナが引っ込んだ時は死んだような顔をしていたからな」
「殿下!」
「うふふっ」
「それはそれとして、今日の主役にプレゼントを持ってきた。アルジェール、これを」
息子はゆっくりと近付き、それを手にする。
「うわぁぁきれい!」
「そうだろう?王家の宝剣だ」
「そんな大事なものを!いけません、殿下!」
レブランド様が慌てるなんて……あの小さな小さな短剣が本物である事を物語っている。
王族にはその子が生まれた時に授けられる神器がある。
まさか殿下が授かった宝剣をアルジェールに?
「いいんだ、これは私の詫びでもある。分かるな?」
「しかし……」
「おうたいしさま、ありがとうございます!」
「ははっ、アルジェールの方が胆が据わっているぞ。大事にするんだぞ」
「はい!」
その宝剣はアルジェールの手の平におさまるほどの小ささで、宝剣とは言え、切る事は出来ないアクセサリーのようなものだった。
アルジェールはすっかり気に入ってしまい、騎士様ごっこをし始めたので、レブランド様が肝を冷やしたのは言うまでもない。
日中は首から下げて、夜は寝る時もそばに置いて眠るほど気に入っている。
私からはアルジェールの名前入りで手作りのマフラーをプレゼントした。
息子の誕生日が過ぎれば寒い季節が近づいてくるので、きっと役立つだろうと思い。
レブランド様からはドルチェに似た大きなぬいぐるみがプレゼントされたのだけど、それを見たドルチェが仲間が出来たと思ったのか、一緒に遊んでいる内にすぐにボロボロになる結末が待っていたという。
「今度は違う犬のぬいぐるみを用意しよう……」
そう言って肩を落とすレブランド様。
私は彼の背中をさすりながら、息子の為に全力を尽くす旦那様がとても愛おしく思うのだった。
190
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
婚約者は嘘つき!私から捨ててあげますわ
あんり
恋愛
「マーティン様、今、わたくしと婚約破棄をなさりたいと、そうおっしゃいましたの?」
愛されていると信じていた婚約者から、突然の別れを告げられた侯爵令嬢のエリッサ。
理由も分からないまま社交界の噂に晒され、それでも彼女は涙を見せず、誇り高く微笑んでみせる。
―――けれど本当は、あの別れの裏に“何か”がある気がしてならなかった。
そんな中、従兄である第二王子アダムが手を差し伸べる。
新たな婚約、近づく距離、揺れる心。
だがエリッサは知らない。
かつての婚約者が、自ら悪者になってまで隠した「真実」を。
捨てられた令嬢?いいえ違いますわ。
わたくしが、未来を選び直すの。
勘違いとすれ違いから始まる、切なくて優しい恋の物語。
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます
nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。
アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。
全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる