皇太子はイエスマンモブ令嬢を黙らせたい!〜あれ?腹黒ドSの俺が黙らされてる?〜

く〜いっ

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10 制服テロ!ムッツリ宰相候補は崖っぷち

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「お嬢様! これでは悪役令嬢失格です!!」

「ええええ!? わ、わたくし、失格なの!?」

悪役令嬢イザベラは、侍女メアリのお叱りを真摯に聞くため、姿勢を正した。

「もっとこう、ド派手で! 傲慢で! 存在感をブチ上げるのです!!」

「で、でも……派手すぎると目立つのでは……?」

「目立たなければ悪役令嬢ではありません!!」

メアリはズバリと言い放つ。

「さぁ、この新制服をお召しください!」

差し出されたのは、
改造をほどこされた制服……胸元がレースのシースルーに加工されている。露出マシマシ……

イブニングドレスで大胆な胸元のドレスは慣れていた……でも、制服は昼に着るもの! イブニング以外で、この露出は……

「Hすぎませんこと?」

「悪役令嬢が何をおっしゃっているのですか! これを着れば、どんな殿方もメロメロです!」

「えええええぇぇぇ!!???」

「いいですかお嬢様! 堂々と胸を突き出して! そう、もっと! もっとです!」

「で、でも、こんなに大胆なの……」

「その大きなお胸は飾りですか!!?」

「ひ、ひぇえええええ!!?」

メアリのスパルタ指導が始まった。



◆◆◆

──わたくし、本当にこれでいいのかしら? 皆さんに引かれていないかしら?

学園の廊下を、新悪役令嬢スタイルで歩くイザベラ。

──やだ……皆、見てる……恥ずかしい

羞恥心がイザベラの白いうなじを赤く染め、くにゃくにゃと不自然な歩き方になってしまう。

ドササッ!!

何かが落ちる音に振り返ると、あんぐり口を開けたフェリクスと目があった。

──フェリクス様?



◆◆◆

──拷問かこれは。

目の前に現れたイザベラ嬢は、制服の規定ギリギリを華麗にぶっちぎった──
いや、物理的にも精神的にもすでに“越えてしまっている”姿だった。

「お、おはようございます……フェリクス様」

なぜかモジモジしながら落とした書類を拾うのを手伝ってくれる。
「はい」と恥じらいを内包した微笑みを浮かべながら、差し出された書類。

破壊力抜群!!

やめろ、やめてくれ、イザベラ嬢。
しゃがむと見える!! なんか色々と──!!

私の防御力はゼロです。

フェリクスは目線を逸らす。が、逸らした先にも、透けたレースと柔らかな影。
視界から逃れられない宿命。

「ど、どうでしょうか……? 新しい制服……その、派手すぎますかしら?」

「ッ!!? 派手どころの話では……いえ……いいと思います」

──危なかった。ダメ出ししてこの姿を見られなくなるのは……なんかもったいない。うん。美の化身だから、見てもOK。

「メアリが、“誘惑の塊”になれって……」

誘惑の塊!?
そのパワーワードに、背筋が砕けそうになる。

「そ、それはまた……その……よ、よくお似合いですよ……(声裏返り)」

「ほんとうに……? よかった~」

イザベラ嬢は胸元を隠すように、そっと両腕をよせ──

──いや、やめろ。
それ、逆効果だ。
挟まってるから。めちゃくちゃ強調されてるから。

フェリクス、限界──ッ!!

なんだこれは。心臓が破裂しそうだ。
父にも言われたじゃないか! 貴族院の総意はイザベラ嬢がレオンハルト殿下の婚約者候補筆頭のままだって!

私のもの……じゃない。なのに、なんだこの感情は!

同じ公爵家として、イザベラ嬢とは幼い頃から親交があった。自分は宰相として、彼女は皇后として未来の皇帝の補佐を担う。……そう教育されてきた。

だから“見てるだけ”でよかった。なのに……

気づいてしまった。
この感情が、独占欲だということに──。

……守りたい。だが、押し倒したい……
いや、落ち着け。私はまだ理性を保っている。たぶん。

グルグル考えをめぐらしながら、メガネの角度を調節した。

──よし! 書類を拾ってくれている胸元にピントばっちり……って、違うだろ──ッ!!

柱の陰に、こっそりメモを取りながら頷くメアリの姿が見えた。

「“誘惑の制服”破壊力、予想以上……よしよし……!」

やめろォォォォォォ!! 私を観察するなぁぁぁぁ!!

──フェリクスの日常は、確実に破壊されつつあった。
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