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文化祭06
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文化祭最終日。天気は良く晴れており、快晴だった。日差しも暖かく過ごしやすい気温となった。2日目は外部のお客さんを招いていることもあり、やはり初日とは比べ物にならないほど忙しかった。今日はどんなに忙しくても13時~15時の2時間休憩をもらえることになっている。早く一緒に周りたいなという気持ちが先行しすぎないようにより一層気を引き締めて頑張る。颯君は相変わらず、忙しなく業務をこなしていた。ふぅと窓際にもたれかかっていると
「昨日みたいにいちゃつくのやめてよね~。一応あたしらもいるんだからさ~」
「でも私はいいと思うよ!!あんな感じになってたら誰だって止めたくなるよ!」
「はい、、気を付けます。」
そう。昨日の現場の一部始終を二人には見られてしまっていたようだった。その後、水野君にも伝わったようで、颯君も軽く叱られたらしい。申し訳ないなと思いつつも、あそこで止めに入れて良かったなと思う自分もいる。
気がつくとすでに時刻はまもなく13時に差し掛かろうとしていた。文化委員の子もそれに気づいてくれたようで
「袴田君!!一条君!!少し早いけど休憩行ってきて!代打の子にはもうお願いしてあるからさ!」と声をかけてくれた。代打の子はなんと水野君と島崎さん、綾瀬さんだった。
「15時までうちらに任せてちゃんと楽しんできなね。」「短い時間だけど楽しんで来いよ。」と入れ違いざまに言ってくれた。
「ありがとう。水野君たちも頑張ってね。それじゃあ休憩行ってくるね。」
「おう。頼んだわ。」と僕たちは教室を出る。
まず最初に向かったのが、有馬先輩のクラスだった。ドリンクの販売もやっていると聞いたので、まずはそこで飲み物を買うことにした。教室に着くとすぐに有馬先輩がこちらに気づいてくれ
「あ~!唯!一条君!抜け出して来れたんだ~!良かった良かった。あ、飲み物どれにする~?好きなのどーぞっ」
「じゃあ僕はメロンソーダで。」
「俺はコーラでお願いします。」
「はいよ~!」有馬先輩はクーラーボックスを開けるとその中からキンキンに冷えた飲み物を渡してくれた。渡された飲み物は白い息を吐いている。さらに「これ良かったら食べて~」と焼きそばをくれた。僕たちは焼きそばを食べつつ、有馬先輩のところで少し休むことにした。
「二人とももう、薫君たちのとこには行ったの??」
「いえ!このあと向かうところで。」
「そっかぁ~。そしたら最後にみのり先輩のとこ行ったほうがいいかもね~。今の時間帯多分混んでると思うし。」
「そうなんですか??有馬先輩はもう行かれたんですか??」
「うん!先輩たちのところはもう初日に行ってきたんだ~。占いが割と当たるってちょっと話題になってるんだよ~。」
「そうなんですね!!楽しみです!」
「一条君も楽しんでくるんだよ~。休憩2時間なんでしょ?そろそろ行った方がいいかもね。」
「あざっす。そうっすね、じゃそろそろ行きます。飲み物と焼きそばご馳走さまでした。」
「うんうん。じゃ、楽しんで~!じゃ~ね~」有馬先輩のクラスを出ると、次に星谷先輩たちがいるクラスに向かう。ちらっと教室内を覗くと、お昼時はもうとっくに過ぎているのに、とても繁盛していた。休憩時間が間に合うか、少し不安になりながらも「別に少しぐらい過ぎても大丈夫だろ」と颯君が言ってくれたので、列に並ぶことにした。すると、僕たちに気付いてくれた星谷先輩が優先的に席に案内してくれた。
「来てくれないかと思ってたから良かった~!小籠包サービスしとくね~」
「わぁ。ありがとうございます!」
「一条君もどーぞっ!どう?俺の衣装に合ってる?」
「え?俺っすか??に、似合ってると思います。」
「あっはは!いやぁ~面白いね一条君は~。」
「薫。あんまり後輩を困らせるなよ。」
「いたっ!!もう叩かなくたっていいじゃん~。」
珍しく颯君が押されている。颯君が本気で困り顔をするのは珍しいなと思いながら小籠包を頬張る。小籠包は中から肉汁が溢れ出し、文化祭の屋台で食べるという非日常的な環境のせいもあるのか、いつもよりも格段に美味しく感じられる。颯君は早くこの場から退散したかったのか分からないが、僕が食べ終わるのを見計らうと
「唯、次行くとこもあるから、早めに行こう」と言い、席を立ってしまう。
「えぇ~もう行っちゃうの~?寂しいよ~」
「休憩時間が限られているんだ。仕方ないだろ。来てくれてありがとな。」
「はい!こちらこそありがとうございました!」
「ゆいゆ~い!また部活でね~。またね~!」
そして、最後は柳瀬先輩の占いの館に行くことにした。するとこちらも、ものすごい行列だった。どうやら最終日は柳瀬先輩が占いを行うらしく、そのせいもあってか、大盛況であった。このままでは確実に間に合わないなと思い、
残念だけど「今回は見送ることにしよっか。」と颯君に言う。すると颯君は「ちょっと待ってろ」といい、教室の中に入って行ってしまった。数分もしないうちに戻ってくると、「入っていいってよ。」と言われ、長い列を横目に通り過ぎ、中に入ることができた。
「あら。唯ちゃん待ってたわ。薫からも唯ちゃんが来るかもって連絡来てたから、もっと早く声かけてくれたらよかったのに。一条君に感謝しなきゃね。」
どうやら颯君は柳瀬先輩の後輩がいると3年生の先輩に伝え、優先的に案内してもらえるように配慮してくれたみたいだった。
「ありがとう。颯君。」
「全然。ほら、占いやってもらうんだろ。」
少し照れ臭そうにしながら颯君は答える。どうやらタロットカードを使った占いと星占いの二つ選べるようで、僕たちは星占いをやってもらうことにした。紙を渡されるとそこには生年月日、自分の星座を記入する欄があった。記入が終わると紙を柳瀬先輩に渡す。
「それじゃ。早速やろうかしら。これは占星術を使って占いをするの。よく朝のニュース番組でやってる占いもこれと同じ方法に含まれるわね。なにを占いたい??なんでもいいわよ。」
僕はどうしようかなと悩んでいると
「俺は恋愛でお願いします。」と颯君は即決だった。僕もそれに続いて恋愛でお願いすることにした。
「分かったわ。唯ちゃんが12月の山羊座で、一条君が6月の蟹座なのね。あなたたち二人とも恋愛に向いているタイプみたいね。相性もいい感じだわ。お互いに安心感を与え合える良い相互作用を持った関係性ね。」
「ほんとですか!?嬉しいです。ありがとうございます。良かったね!颯君!」颯君は無言で頷いていたが、どこか顔が嬉しそうだった。
「うふふ。二人とも初々しくて可愛いわね。仮に占いで相性が悪いって出ても、所詮占いは占いだから、半信半疑で私はいいと思うわ。信じたいものは信じて、そうじゃないものは切り捨てる。そういう考えも必要になると思うわ。今回はたまたま、あなたたちの相性が良かったってだけでね。」
「それにしてもすごいですね。占いできるなんて!」
「ありがとう。趣味で始めたのよ。唯ちゃんもやろうと思えばできるわよ。」
「みのり~そろそろ次通すぞ~」
「あら、もう時間みたいね。それじゃあまたね。」
ありがとうございました。と二人で頭を下げ、教室を出る。とても充実した2時間だった。できればもう少し一緒にいたいな。なんて考えてしまう。そして休憩の時間が終わってしまった。
「ごめんね。颯君連れまわしちゃって。」
「いや?俺は楽しそうな唯の姿見れたからそれで満足。写真もいっぱい撮れたしな。」いつのまに撮られてたんだ。夢中になりすぎていて気付かなかった。僕も颯君の写真もらおうと思い
「今さ、一緒に写真撮ってくれない??」
「いいよ。スマホ貸して」とすぐさま応じてくれ、颯君にスマホを貸す。カシャっとカメラの音が鳴り、すぐに撮れているか確認をする。やったちゃんと撮れてる!と思っていると「唯」と呼ばれ横を向く。すると、そのまま唇が重なる。その瞬間もカメラのシャッター音が鳴る。スマホをひょいっと渡されると
「その写真送っといて。あと少し、頑張ろうな。顔が赤いの引いてから出て来いよ。」
「う、うん。わかった。」
不意打ちだった。突然のことに身体が一瞬フリーズしてしまう。幻覚だったかも?と思いさっき撮ったばかりの写真を見返すとそこにはしっかり記録として残っていた。見るたびに先ほどの唇の感触が鮮明に蘇る。僕は顔の熱が落ちついたタイミングで代打の子と交代をする。
「お疲れ~。なんか顔赤くない平気そ??一条関連??」
「ね、ほんとだ大丈夫??」
「大丈夫!大丈夫!!それよりも代わってくれてありがとう。」
「いいよ~あたしらは全然。じゃ、キッチン戻るわ~」
「うん!なにかあったら呼んでね!あと2時間頑張ろう!!」
僕は写真を思い返しながら、よしっ!!と気持ちを入れ直した。
「すいませーん!そこのメイドさんー注文良いですか~!?」と声がかかった。
「呼ばれたから二人とも行ってくるね。」
「行ってら~。あたしら準備しとくね~。」
席に着くと、若い大学生ぐらい?の男の人が2名いた。何やらこっちを見てずっとにやにやしている。嫌な感じだと思ったので、早々に注文を取りさっさと戻ろうと思い
「ご注文お伺いします。」と言う。その直後、腰に手を回されながら軽く引っ張られ、男の人に密着するような体勢になった。一瞬の出来事に「え?なんで引っ張ってきたの?」と戸惑っていると、男の人達からはアルコールの匂いがした。
「え~。お兄さんのおすすめはなんですか~??」「はっははは!!お前やばすぎ~。俺もおすすめ知りたいな~。あとお名前も。」と言いながら、僕の足に手を当ててくる。最初はただ当たっちゃっただけかな?と思っていたが、その行為は次第にエスカレートしてきて、ついにはスカートの中にまで手を忍び込ませてきた。不快な感覚に身の毛がよだつ。触れられた箇所からまるで虫が這うようなゾワゾワとした感覚が全身に広がる。颯君や他の子に助けを求めようとするが、皆なにかしらの仕事をやっていて、声をかけることができない。咄嗟に
「っ!やめてください!!」と手を払うも「いいじゃん別に。こういうことされたくて、それ着てるんでしょ?」などと的外れな発言ばかりしてくる。見当違いもいいところだ。何度も何度も「ほんとにやめてください!」「帰ってもらいますよ??」と言っているのに「怒ってるのも可愛いね。そうだこの後暇でしょ??俺たちと遊ぼうよ。君のことなら俺抱けそう。」「分かるわ。実は俺もいいなって思ってたわ。」と、とんでもない発言をしてくる。
段々と怖くなってきて逃げ出そうとするも、腰に巻かれた腕が中々ほどけず、動けない。おまけにここで大声を出したらきっと大変なことになる。事を荒げることもあまりしたくなはい。ぐっと拳に力を入れ、恐怖と嫌悪感で涙が出そうになるのを堪える。
「あれれ?泣きそうなの??うーわ。いいねその顔もたまんないね。」
僕はこのまま誰かが気づくまで耐えるしかないのかと目をギュッと瞑る。不快感に吐き気がする、、、すると腰に回されていた手と、足を触っていた手が離れる。
「おい。なにしてんだよ。お前ら。」
「昨日みたいにいちゃつくのやめてよね~。一応あたしらもいるんだからさ~」
「でも私はいいと思うよ!!あんな感じになってたら誰だって止めたくなるよ!」
「はい、、気を付けます。」
そう。昨日の現場の一部始終を二人には見られてしまっていたようだった。その後、水野君にも伝わったようで、颯君も軽く叱られたらしい。申し訳ないなと思いつつも、あそこで止めに入れて良かったなと思う自分もいる。
気がつくとすでに時刻はまもなく13時に差し掛かろうとしていた。文化委員の子もそれに気づいてくれたようで
「袴田君!!一条君!!少し早いけど休憩行ってきて!代打の子にはもうお願いしてあるからさ!」と声をかけてくれた。代打の子はなんと水野君と島崎さん、綾瀬さんだった。
「15時までうちらに任せてちゃんと楽しんできなね。」「短い時間だけど楽しんで来いよ。」と入れ違いざまに言ってくれた。
「ありがとう。水野君たちも頑張ってね。それじゃあ休憩行ってくるね。」
「おう。頼んだわ。」と僕たちは教室を出る。
まず最初に向かったのが、有馬先輩のクラスだった。ドリンクの販売もやっていると聞いたので、まずはそこで飲み物を買うことにした。教室に着くとすぐに有馬先輩がこちらに気づいてくれ
「あ~!唯!一条君!抜け出して来れたんだ~!良かった良かった。あ、飲み物どれにする~?好きなのどーぞっ」
「じゃあ僕はメロンソーダで。」
「俺はコーラでお願いします。」
「はいよ~!」有馬先輩はクーラーボックスを開けるとその中からキンキンに冷えた飲み物を渡してくれた。渡された飲み物は白い息を吐いている。さらに「これ良かったら食べて~」と焼きそばをくれた。僕たちは焼きそばを食べつつ、有馬先輩のところで少し休むことにした。
「二人とももう、薫君たちのとこには行ったの??」
「いえ!このあと向かうところで。」
「そっかぁ~。そしたら最後にみのり先輩のとこ行ったほうがいいかもね~。今の時間帯多分混んでると思うし。」
「そうなんですか??有馬先輩はもう行かれたんですか??」
「うん!先輩たちのところはもう初日に行ってきたんだ~。占いが割と当たるってちょっと話題になってるんだよ~。」
「そうなんですね!!楽しみです!」
「一条君も楽しんでくるんだよ~。休憩2時間なんでしょ?そろそろ行った方がいいかもね。」
「あざっす。そうっすね、じゃそろそろ行きます。飲み物と焼きそばご馳走さまでした。」
「うんうん。じゃ、楽しんで~!じゃ~ね~」有馬先輩のクラスを出ると、次に星谷先輩たちがいるクラスに向かう。ちらっと教室内を覗くと、お昼時はもうとっくに過ぎているのに、とても繁盛していた。休憩時間が間に合うか、少し不安になりながらも「別に少しぐらい過ぎても大丈夫だろ」と颯君が言ってくれたので、列に並ぶことにした。すると、僕たちに気付いてくれた星谷先輩が優先的に席に案内してくれた。
「来てくれないかと思ってたから良かった~!小籠包サービスしとくね~」
「わぁ。ありがとうございます!」
「一条君もどーぞっ!どう?俺の衣装に合ってる?」
「え?俺っすか??に、似合ってると思います。」
「あっはは!いやぁ~面白いね一条君は~。」
「薫。あんまり後輩を困らせるなよ。」
「いたっ!!もう叩かなくたっていいじゃん~。」
珍しく颯君が押されている。颯君が本気で困り顔をするのは珍しいなと思いながら小籠包を頬張る。小籠包は中から肉汁が溢れ出し、文化祭の屋台で食べるという非日常的な環境のせいもあるのか、いつもよりも格段に美味しく感じられる。颯君は早くこの場から退散したかったのか分からないが、僕が食べ終わるのを見計らうと
「唯、次行くとこもあるから、早めに行こう」と言い、席を立ってしまう。
「えぇ~もう行っちゃうの~?寂しいよ~」
「休憩時間が限られているんだ。仕方ないだろ。来てくれてありがとな。」
「はい!こちらこそありがとうございました!」
「ゆいゆ~い!また部活でね~。またね~!」
そして、最後は柳瀬先輩の占いの館に行くことにした。するとこちらも、ものすごい行列だった。どうやら最終日は柳瀬先輩が占いを行うらしく、そのせいもあってか、大盛況であった。このままでは確実に間に合わないなと思い、
残念だけど「今回は見送ることにしよっか。」と颯君に言う。すると颯君は「ちょっと待ってろ」といい、教室の中に入って行ってしまった。数分もしないうちに戻ってくると、「入っていいってよ。」と言われ、長い列を横目に通り過ぎ、中に入ることができた。
「あら。唯ちゃん待ってたわ。薫からも唯ちゃんが来るかもって連絡来てたから、もっと早く声かけてくれたらよかったのに。一条君に感謝しなきゃね。」
どうやら颯君は柳瀬先輩の後輩がいると3年生の先輩に伝え、優先的に案内してもらえるように配慮してくれたみたいだった。
「ありがとう。颯君。」
「全然。ほら、占いやってもらうんだろ。」
少し照れ臭そうにしながら颯君は答える。どうやらタロットカードを使った占いと星占いの二つ選べるようで、僕たちは星占いをやってもらうことにした。紙を渡されるとそこには生年月日、自分の星座を記入する欄があった。記入が終わると紙を柳瀬先輩に渡す。
「それじゃ。早速やろうかしら。これは占星術を使って占いをするの。よく朝のニュース番組でやってる占いもこれと同じ方法に含まれるわね。なにを占いたい??なんでもいいわよ。」
僕はどうしようかなと悩んでいると
「俺は恋愛でお願いします。」と颯君は即決だった。僕もそれに続いて恋愛でお願いすることにした。
「分かったわ。唯ちゃんが12月の山羊座で、一条君が6月の蟹座なのね。あなたたち二人とも恋愛に向いているタイプみたいね。相性もいい感じだわ。お互いに安心感を与え合える良い相互作用を持った関係性ね。」
「ほんとですか!?嬉しいです。ありがとうございます。良かったね!颯君!」颯君は無言で頷いていたが、どこか顔が嬉しそうだった。
「うふふ。二人とも初々しくて可愛いわね。仮に占いで相性が悪いって出ても、所詮占いは占いだから、半信半疑で私はいいと思うわ。信じたいものは信じて、そうじゃないものは切り捨てる。そういう考えも必要になると思うわ。今回はたまたま、あなたたちの相性が良かったってだけでね。」
「それにしてもすごいですね。占いできるなんて!」
「ありがとう。趣味で始めたのよ。唯ちゃんもやろうと思えばできるわよ。」
「みのり~そろそろ次通すぞ~」
「あら、もう時間みたいね。それじゃあまたね。」
ありがとうございました。と二人で頭を下げ、教室を出る。とても充実した2時間だった。できればもう少し一緒にいたいな。なんて考えてしまう。そして休憩の時間が終わってしまった。
「ごめんね。颯君連れまわしちゃって。」
「いや?俺は楽しそうな唯の姿見れたからそれで満足。写真もいっぱい撮れたしな。」いつのまに撮られてたんだ。夢中になりすぎていて気付かなかった。僕も颯君の写真もらおうと思い
「今さ、一緒に写真撮ってくれない??」
「いいよ。スマホ貸して」とすぐさま応じてくれ、颯君にスマホを貸す。カシャっとカメラの音が鳴り、すぐに撮れているか確認をする。やったちゃんと撮れてる!と思っていると「唯」と呼ばれ横を向く。すると、そのまま唇が重なる。その瞬間もカメラのシャッター音が鳴る。スマホをひょいっと渡されると
「その写真送っといて。あと少し、頑張ろうな。顔が赤いの引いてから出て来いよ。」
「う、うん。わかった。」
不意打ちだった。突然のことに身体が一瞬フリーズしてしまう。幻覚だったかも?と思いさっき撮ったばかりの写真を見返すとそこにはしっかり記録として残っていた。見るたびに先ほどの唇の感触が鮮明に蘇る。僕は顔の熱が落ちついたタイミングで代打の子と交代をする。
「お疲れ~。なんか顔赤くない平気そ??一条関連??」
「ね、ほんとだ大丈夫??」
「大丈夫!大丈夫!!それよりも代わってくれてありがとう。」
「いいよ~あたしらは全然。じゃ、キッチン戻るわ~」
「うん!なにかあったら呼んでね!あと2時間頑張ろう!!」
僕は写真を思い返しながら、よしっ!!と気持ちを入れ直した。
「すいませーん!そこのメイドさんー注文良いですか~!?」と声がかかった。
「呼ばれたから二人とも行ってくるね。」
「行ってら~。あたしら準備しとくね~。」
席に着くと、若い大学生ぐらい?の男の人が2名いた。何やらこっちを見てずっとにやにやしている。嫌な感じだと思ったので、早々に注文を取りさっさと戻ろうと思い
「ご注文お伺いします。」と言う。その直後、腰に手を回されながら軽く引っ張られ、男の人に密着するような体勢になった。一瞬の出来事に「え?なんで引っ張ってきたの?」と戸惑っていると、男の人達からはアルコールの匂いがした。
「え~。お兄さんのおすすめはなんですか~??」「はっははは!!お前やばすぎ~。俺もおすすめ知りたいな~。あとお名前も。」と言いながら、僕の足に手を当ててくる。最初はただ当たっちゃっただけかな?と思っていたが、その行為は次第にエスカレートしてきて、ついにはスカートの中にまで手を忍び込ませてきた。不快な感覚に身の毛がよだつ。触れられた箇所からまるで虫が這うようなゾワゾワとした感覚が全身に広がる。颯君や他の子に助けを求めようとするが、皆なにかしらの仕事をやっていて、声をかけることができない。咄嗟に
「っ!やめてください!!」と手を払うも「いいじゃん別に。こういうことされたくて、それ着てるんでしょ?」などと的外れな発言ばかりしてくる。見当違いもいいところだ。何度も何度も「ほんとにやめてください!」「帰ってもらいますよ??」と言っているのに「怒ってるのも可愛いね。そうだこの後暇でしょ??俺たちと遊ぼうよ。君のことなら俺抱けそう。」「分かるわ。実は俺もいいなって思ってたわ。」と、とんでもない発言をしてくる。
段々と怖くなってきて逃げ出そうとするも、腰に巻かれた腕が中々ほどけず、動けない。おまけにここで大声を出したらきっと大変なことになる。事を荒げることもあまりしたくなはい。ぐっと拳に力を入れ、恐怖と嫌悪感で涙が出そうになるのを堪える。
「あれれ?泣きそうなの??うーわ。いいねその顔もたまんないね。」
僕はこのまま誰かが気づくまで耐えるしかないのかと目をギュッと瞑る。不快感に吐き気がする、、、すると腰に回されていた手と、足を触っていた手が離れる。
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