独り身オメガに幸せを

蒸しケーキ

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久しぶりの...02

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「ーー検査の結果ですが、これはほぼ間違いなく発情期の兆候でしょうね。」

「えっ...発情、期??」

 俺はハッとした。そうだ。俺は毎回発情期に入る前、熱っぽさよりも身体の怠さが目立つタイプだった。そのことをすっかり忘れてしまっていた。

「驚かれますよね...。しかしこれも全部立花さんがリハビリを乗り越えたからこそなんですよ。その他の項目もほとんど正常値の範囲内でしたし。」

 高井先生から受け取った検査結果の紙に目を通した。...本当だ、フェロモン値以外はどれも基準値の範囲内で収まっていた。

「ほんとですか、なら良かったです...」

 正直、喘鳴症の後遺症で、もう俺に発情期が来なかったらどうしよう...そんな不安がここ数か月ずっと胸の内にあった。
だから今回ちゃんと発情期に入ろうとしていることに少しだけホッとしていた。

「ただ、発情期に入るということは、また例の喘鳴症が再発する可能性があるということです。」

 その言葉にごくりと生唾を飲み込んだ。俺の今の身体はあくまでも症状が寛解した状態。また以前のような発情期のある身体に戻ればーー

 ...あのときのような息ができない、胸を締め付けられるような症状が起きることも十分にあり得る。

 しかし、高井先生は焦る様子もなく、にこやかに淡々と続けた。

「ですが、今回は恐らく大丈夫でしょうね...蓮君がきっと付き添ってくれるでしょうから」

 そう。以前とひとつ違う点をあげるとすれば、今回の発情期には蓮君が傍にいるということだ。パートナーがいれば症状は出なくなるし、番になれば発症もしなくなる。

 ただ今回、番になれるかどうかは高井先生にも分からないらしい。それは俺のフェロモン値が正常値より少し高いだけで、本格的なオメガの発情期に比べるとずっと低い数値だったからだ。

 番になるための条件は、発情期のオメガの”項”をアルファが噛むことで成立する。

 だけど、このままいけば俺は不完全で不安定な発情期を迎えてしまう。そういう中途半端な状態だからこそ、項を噛まれたときに番として成立するかはやってみないと分からないそうだ。

「とりあえず、抑制剤を処方しておきますね。...それと、念のため避妊薬も処方しておきます。発情期に入ったら一週間は安静にしてくださいね。」

「ありがとうございます」

「何度も確認して申し訳ないですが、蓮君には連絡をしましたか??」

「はい一応は。」

「なら安心ですね、では次回は一か月後ではなく”発情期明け”、すぐに来てくださいね。ではお大事に」

 発情期明けにすぐ...か。うーん覚えてられるかな。不安だったので俺はスマホにメモを残しておいた。よし、これで忘れないだろう。

 家に帰ってすぐに俺がしたことは、まず仕事の受理を一旦停止すること。幸い納期が近い依頼は届いていなかったので、受理を停止するメールを送るだけで済みそうだった。それから冷蔵庫に必要な食糧が揃っているか確認した。

「あれ?俺こんなの買ったっけ??前に瑠夏がストックしてくれたのかな?」

 冷蔵庫の中には買った覚えのない食材たちが入っていた。まぁいっか。とりあえずいっぱいあるに越したことはないし。

 ひと通り確認の作業が終わると、どっと身体が熱に飲まれるようにくらくらとし始めた。

 うわぁ......そうだ、発情期こんな感じだったかも、と昔の感覚をだんだんと鮮明に思い出してきた。

 薬、薬...避妊薬は~...この辺でいっか。俺は避妊薬をテーブルの上にぽいっと置き、抑制剤だけを取り出し、水で流し込んだ。

 抑制剤のカプセルって大きいんだよな~。たまに喉に突っかかるようなときがあるので飲むのが少し苦手だった。

 俺はよたよたと、おぼつかない足取りで歩きながらベッドにダイブした。ずくっと下腹の奥に熱がじわじわと集まりはじめた。

 はぁ......今までこれを一人で対処してた過去の俺すごすぎじゃね......。もう到底一人で乗り越えられるような気がしない。そう考えたら少しだけ胸が切なくなった。

「蓮君......遅いな......蓮君。」

 電話をかけたいけれど、「蓮君の邪魔をしたらダメ!!」という自制心と「我が儘になりなさいって言われたでしょ?」と囁く理性が頭の中でせめぎ合っていた。

 俺は前にお風呂場で蓮君がしてくれたことを思い出しながら、欲望を吐き出そうとした。蓮君の慈しむような優しい手付き、甘い声を思い出したら容易に達してしまった。

 でも足りない...まるで全然足りない。心の中に留めておくはずだった言葉が自然とこぼれ落ちていった。

 ーーそれが蓮君に聞かれていたことなんて、知らずに。

「......俺のこと幸せにするっていったくせに、嘘つき。」
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