死ぬことが確約されている悪役令息ですが、推しの闇落ち回避のために頑張ります

蒸しケーキ

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2.

 校門を出ると、ゲームの世界と同じように、すでに馬車が待機していた。この学園に通うほとんどの生徒たちは、この馬車を使って登下校している。

 そういえばゼノの家ってゲームでは特に明かされていなかったよな。ゼノの家ってどんな場所なんだろう。......あ、ていうか、家の場所も分かんないかも。

 せっかくゼノの出生が分かりそうなヒントが得られると思ったのに、出鼻を挫かれた気分だ。

 そう思っていた矢先、俺が馬車に乗り込むと、行き先を告げる間もなく馬車が動き始めた。行き先を伝えなくても勝手に連れて行ってくれるのか。ふーん、現代で言うならタクシーみたいなものか。

 街の風景を眺めながら、馬車に揺られること三十分。ぴたりと馬車の揺れが収まった。どうやら目的地に着いたらしい。

「......なんだ、ここ。ほとんど森の中じゃん。」

 馬車を降りると、そこは木々の生い茂る森の中だった。振り返った瞬間、乗ってきたはずの馬車は跡形もなく姿を消していてーー俺は、森の中に一人、置き去りにされてしまった。

「えぇ、まじかよ。こっからどうしろって言うんだよ......。」

 俺が覚えているのは、学園内での出来事や場所、それから王宮内の構造や登場人物についてだけだ。けれど、それ以外の知識はほとんどなく、この森は完全に初見だった。

 これからどうするべきかと俯いて悩んでいると、足元に不自然なほど整った、道のようなものが続いているのに気が付いた。

 もしかして、これを辿ればゼノの家に着くのか?少し不安はあるが、ここで立ち尽くしていても仕方がない。今はこの道を信じて進むしか他なかった。

 奥へ進んでいけばいくほど、足場は悪くなり、草木は容赦なく生い茂ってくる。

「はぁ、はぁっ......。もう、いつまで歩けばいいんだよ、これ......。」

 意識の外へと追いやったはずの後頭部の痛みは、いつの間にか戻ってきていた。ズキズキと痛みを増す頭を庇いながら、歩き続けると、やがて一軒だけ、ぽつんと建っている屋敷が目に入った。

 ーーここだ。たぶん、ここがゼノの家。それにしても、かなり古臭......いや、年季の入った家だな。

 扉には鍵がかかっておらず、建付けも悪かった。ギィィィィ、と不快な音を立てながら扉を開くと、家の中は三人ほどでも住めそうなぐらいの広さがあるにもかかわらず、ひどく静かで、必要最低限の物しか置かれていなかった。

 ぽちゃん、ぽちゃん、という水道から僅かに滴り落ちる水の音だけが、家の中に響いている。

「......思ってたのと違う。」

 ーーあまりにも殺風景すぎる。俺が想像していたゼノの生活とは、あまりにもかけ離れ過ぎていた。

 ゲームの中のゼノは、少なくとも平民ではなく子爵家の人間であったはず。もう少し煌びやかな生活をしていてもおかしくないのに......そもそもどうして、こんな森の奥なんかに住んでいるんだ?

 キッチンや台所はきれいに整頓はされているが、やはりどこか不自然に感じた。

 ーーなぁ、ゼノ。お前、ほんとに性格が悪いだけの悪役なのか?

 何を思いながら、ここで過ごしていたんだ?
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