10 / 31
強気なΩは好きですか?①
自分の心が分からない
しおりを挟む
きゃーきゃーと黄色い声援が飛び交う試合会場、僕は声援を送る女の子達から離れた場所からグラウンドを見やる。
「お前の彼氏、滅茶苦茶モテてるけど大丈夫?」
「ってか予想以上に人気者じゃん、樹君ピ~ンチ」
「うっさい、まだ彼氏じゃないし!」
僕の言葉に双子の兄は「だったらその不機嫌顔やめたら?」と声を揃えてくすくす笑う。直近であった篠木先輩のサッカーの試合会場は僕が一人で観戦に赴くには少し遠くて、兄に車を出してもらったのは良いのだが、双子の兄は僕をからかう気満々でちょっと嫌。
車を出してもらった手前、一通りの事情は説明したんだけど、適当に誤魔化しておけば良かったよ。
ウォーミングアップをする選手達、その中には勿論篠木先輩もいて、その真剣な表情はやはり格好いい。なんだよ、そういう顔も出来るんじゃん。
先輩には観戦に行くとか、そんな話はひとつもしていないのだけど、ふいに顔を上げた先輩がこちらを見やって目が合った。いや、合ったかな? グラウンドからはずいぶん離れているしきっと気のせい……と思ったら、先輩が大きく僕の方に手を振った。
嘘、ホントに見えてるの?
「樹も手、振ってやったら?」
「そうそう彼氏のやる気爆上がりかもよ?」
両側から双子の兄にそう言われて、少しだけ手を振り返したら、先輩はふいと目を逸らした。なにそれ、ちょっと感じ悪い。もしかして僕に手を振った訳じゃなかったのかな? だとしたら僕、少し恥ずかしい事したな。
その後すぐに始まった試合は何故か先輩はミスの連発で見ていられない。正直ちょっとがっかりだよ。そして負け越しで迎えたハーフタイム、ホイッスルと共に駆け出した先輩が何処に行くのかと思ったら、ものすごい速さで僕達の前に現れた。
「樹、ちょっとこっち来て!」
「え? なに?」
双子の兄に挟まれるように座っていた僕は戸惑う。
「いいから来て!」
そこまで混んでいない観覧席、強引な篠木先輩に引っ張られ僕は先輩の腕の中にぽすんと収まってしまう。先程までグラウンドを走り回っていた先輩の体温は高く、そして少し汗臭い。だけど、何故だろう僕の動悸が跳ね上がる。僕、この匂い知ってる……
「樹! あいつ等、お前の何!?」
「え……何って、兄ちゃん」
「兄ちゃ……ん? え? 樹のお兄さんは確かβのはず……」
「うち兄弟多いから。四季兄は4番目の兄ちゃん、この2人は2番目と3番目」
「「どうも~」」と双子の兄が声を揃えてにこりと笑うと、先輩が脱力したようにしゃがみ込んだ。
「何? どうかしました?」
「樹が俺の知らない男連れてるから浮気かと……」
「浮気って……そもそも僕達まだ付き合ってないですよね!?」
「心臓壊れるかと思った」
「そんな大袈裟な」
僕は呆れてしまうのだが、先輩の表情は至極真面目でどんな顔をしていいのか分からないよ。
「そんな事より、試合! 何なんですかアレ!?」
「樹が浮気してると思ったら集中出来なかった」
はぁ!? 先輩の不調を僕のせいにするとか最低だよ!
「でも最後までちゃんと見てて、絶対勝つから!」
それだけ言い残して先輩はまた来た時同様の慌ただしさでグラウンドに戻っていく。その後の先輩の活躍は目覚ましく、本当に逆転して勝っちゃったんだから僕が気になって試合どころじゃなかったって言うのもあながち間違いではなかったのだろう。
僕の方は纏わり付く先輩の匂いでその後は観戦どころじゃなかったんだけどね!
「あいつ、さりげなく樹に匂い付けしてったな」
「そうだな、あれは意外と嫉妬深いぞ。大変だな、樹」
「だから、まだ付き合うなんて言ってないのに!」
でも僕は気付いてしまった、あの日、僕が学校でヒートを起こしたのは先輩の匂いを嗅いだからだ。ふわりと風に乗ってきた匂いに急に動悸がして慌ててトイレに駆け込んだ、そして僕はそのまま発情期(ヒート)に突入した。
先輩は僕を『運命』の相手だと言ったけど、それはもしかしたら僕も本能的に感じていた事だったのかもしれない。だけど、その後の先輩からはそんなフェロモンの匂い全然しなかったのに!
「樹! 俺、格好良かっただろ!?」
試合後、両手を広げて満面の笑みで飛びついて来た先輩からはやっぱり凄く良い匂いがしてドキドキする。他人の汗の匂いなんて、今まで臭い以外の感情持った事ないのに……
「っつ……先輩は感情にムラがあり過ぎます! 出来るんなら最初からちゃんとやってください! それに暑苦しい! 引っ付かないで!」
この上がる心拍を悟られたくない僕は殊更に先輩に冷たくあたるのだけど、やっぱり先輩は「樹のそういうとこ、好き」なんて笑うんだ。なんなの? マゾなの? 僕、Sっ気はないはずなんだけどな!?
しかも双子の兄ちゃん達は「あいつは良いと思うよ?」「浮気はしないタイプ」と口を揃えていうモノだからなんだか複雑。
僕は本当に今まで先輩に『運命』なんて感じなかったはずなのにおかしいなぁ……沈まれ心臓、もう息もできないよ。
「お前の彼氏、滅茶苦茶モテてるけど大丈夫?」
「ってか予想以上に人気者じゃん、樹君ピ~ンチ」
「うっさい、まだ彼氏じゃないし!」
僕の言葉に双子の兄は「だったらその不機嫌顔やめたら?」と声を揃えてくすくす笑う。直近であった篠木先輩のサッカーの試合会場は僕が一人で観戦に赴くには少し遠くて、兄に車を出してもらったのは良いのだが、双子の兄は僕をからかう気満々でちょっと嫌。
車を出してもらった手前、一通りの事情は説明したんだけど、適当に誤魔化しておけば良かったよ。
ウォーミングアップをする選手達、その中には勿論篠木先輩もいて、その真剣な表情はやはり格好いい。なんだよ、そういう顔も出来るんじゃん。
先輩には観戦に行くとか、そんな話はひとつもしていないのだけど、ふいに顔を上げた先輩がこちらを見やって目が合った。いや、合ったかな? グラウンドからはずいぶん離れているしきっと気のせい……と思ったら、先輩が大きく僕の方に手を振った。
嘘、ホントに見えてるの?
「樹も手、振ってやったら?」
「そうそう彼氏のやる気爆上がりかもよ?」
両側から双子の兄にそう言われて、少しだけ手を振り返したら、先輩はふいと目を逸らした。なにそれ、ちょっと感じ悪い。もしかして僕に手を振った訳じゃなかったのかな? だとしたら僕、少し恥ずかしい事したな。
その後すぐに始まった試合は何故か先輩はミスの連発で見ていられない。正直ちょっとがっかりだよ。そして負け越しで迎えたハーフタイム、ホイッスルと共に駆け出した先輩が何処に行くのかと思ったら、ものすごい速さで僕達の前に現れた。
「樹、ちょっとこっち来て!」
「え? なに?」
双子の兄に挟まれるように座っていた僕は戸惑う。
「いいから来て!」
そこまで混んでいない観覧席、強引な篠木先輩に引っ張られ僕は先輩の腕の中にぽすんと収まってしまう。先程までグラウンドを走り回っていた先輩の体温は高く、そして少し汗臭い。だけど、何故だろう僕の動悸が跳ね上がる。僕、この匂い知ってる……
「樹! あいつ等、お前の何!?」
「え……何って、兄ちゃん」
「兄ちゃ……ん? え? 樹のお兄さんは確かβのはず……」
「うち兄弟多いから。四季兄は4番目の兄ちゃん、この2人は2番目と3番目」
「「どうも~」」と双子の兄が声を揃えてにこりと笑うと、先輩が脱力したようにしゃがみ込んだ。
「何? どうかしました?」
「樹が俺の知らない男連れてるから浮気かと……」
「浮気って……そもそも僕達まだ付き合ってないですよね!?」
「心臓壊れるかと思った」
「そんな大袈裟な」
僕は呆れてしまうのだが、先輩の表情は至極真面目でどんな顔をしていいのか分からないよ。
「そんな事より、試合! 何なんですかアレ!?」
「樹が浮気してると思ったら集中出来なかった」
はぁ!? 先輩の不調を僕のせいにするとか最低だよ!
「でも最後までちゃんと見てて、絶対勝つから!」
それだけ言い残して先輩はまた来た時同様の慌ただしさでグラウンドに戻っていく。その後の先輩の活躍は目覚ましく、本当に逆転して勝っちゃったんだから僕が気になって試合どころじゃなかったって言うのもあながち間違いではなかったのだろう。
僕の方は纏わり付く先輩の匂いでその後は観戦どころじゃなかったんだけどね!
「あいつ、さりげなく樹に匂い付けしてったな」
「そうだな、あれは意外と嫉妬深いぞ。大変だな、樹」
「だから、まだ付き合うなんて言ってないのに!」
でも僕は気付いてしまった、あの日、僕が学校でヒートを起こしたのは先輩の匂いを嗅いだからだ。ふわりと風に乗ってきた匂いに急に動悸がして慌ててトイレに駆け込んだ、そして僕はそのまま発情期(ヒート)に突入した。
先輩は僕を『運命』の相手だと言ったけど、それはもしかしたら僕も本能的に感じていた事だったのかもしれない。だけど、その後の先輩からはそんなフェロモンの匂い全然しなかったのに!
「樹! 俺、格好良かっただろ!?」
試合後、両手を広げて満面の笑みで飛びついて来た先輩からはやっぱり凄く良い匂いがしてドキドキする。他人の汗の匂いなんて、今まで臭い以外の感情持った事ないのに……
「っつ……先輩は感情にムラがあり過ぎます! 出来るんなら最初からちゃんとやってください! それに暑苦しい! 引っ付かないで!」
この上がる心拍を悟られたくない僕は殊更に先輩に冷たくあたるのだけど、やっぱり先輩は「樹のそういうとこ、好き」なんて笑うんだ。なんなの? マゾなの? 僕、Sっ気はないはずなんだけどな!?
しかも双子の兄ちゃん達は「あいつは良いと思うよ?」「浮気はしないタイプ」と口を揃えていうモノだからなんだか複雑。
僕は本当に今まで先輩に『運命』なんて感じなかったはずなのにおかしいなぁ……沈まれ心臓、もう息もできないよ。
0
あなたにおすすめの小説
氷の公爵様と身代わりパティシエ~「味覚なし」の旦那様が、僕のお菓子でトロトロに溶かされています!?~
水凪しおん
BL
【2月14日はバレンタインデー】
「お前の菓子だけが、私の心を溶かすのだ」
実家で「魔力なしの役立たず」と虐げられてきたオメガのリウ。
義弟の身代わりとして、北の果てに住む恐ろしい「氷血公爵」ジークハルトのもとへ嫁ぐことになる。
冷酷無慈悲と噂される公爵だったが、リウが作ったカカオのお菓子を食べた途端、その態度は激変!?
リウの持つ「祝福のパティシエ」の力が、公爵の凍りついた呪いを溶かしていき――。
拾ったもふもふ聖獣と一緒に、甘いお菓子で冷たい旦那様を餌付け(?)する、身代わり花嫁のシンデレラストーリー!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ぽて と むーちゃんの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる