榊原さんちの家庭の事情

矢の字

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強気なΩは好きですか?①

悪夢

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 僕の肌を撫でる指、胸の突起を摘まんで弾くその感触に身体が跳ねる。まだそこしか触られてないのに下肢が濡れるのが分かって僕は恥ずかしくて仕方がない。

「もう、焦らさないでっ!」
「んん? 樹は何処をどうして欲しいのかな?」

 耳朶を食むようにして耳元に囁かれ腰がずんと重くなった。疼く、僕の本能がこいつを逃がすなと囁きかける。
 だけどこれ、どういうシチュエーション? なんで僕こんな事になってるの?
 僕を抱き込んでいるのは篠木先輩、背後から胸をまさぐり焦らすようにまた乳首を弾いた。

「そこばっかりっ、イヤっ!」
「なんで? 樹はここも好きだろ? それともそんなにここに俺が欲しいの?」

 先輩の指がズボンの上から僕の最奥をさわりと撫でた。たったそれだけの事で僕の身体はまた跳ねる。濡れる。腰に押し付けられた硬いモノ、それが欲しいとΩの本能で身体が受け入れ態勢に入ったのが分かるのだ。
 Ωの身体はαに対してはどこまでも淫乱で、だからこそそこは慎重にならなければならないと分かっている。だって、αはやるだけやって知らんぷりだって出来るけど、Ωは子を孕んだら否が応にも人生の選択を迫られる。だからこそ番選びは慎重にって言われて僕は育った。

「欲しい」

 だけど、抗い難い。鼻腔をくすぐる先輩の匂いが僕を発情させて狂わせる。

「樹は全く仕方がないな」

 背後で先輩が微かに笑ったのを感じる。ズボンを脱がされ押し当てられる先輩のソレにぞくりと背筋に震えが走った所で、けたたましいベルの音に僕は飛び起きた……



「……夢?」

 心臓はいまだばくばくと高鳴って息が苦しい。傍らではまだ目覚まし時計がけたたましいベルを鳴らし続けている。ぼんやりした頭で目覚まし時計を止めて、僕は大きく溜息を吐いた。だって、なんだか下着が冷たい。
 こんなの生理現象だよ、思春期の男子にはよくある事だって分かってる、なのに何だ、この猛烈な脱力感。しかも夢の中の相手、篠木先輩だった……

「樹~早く起きないと遅刻するぞぉ」

 四季兄ちゃんからかかる声、僕はのそりと布団から身を起こし頭を振る。こんなのあり得ない。僕、一体どうしちゃったの?
 Ωは三か月に一度発情期があるから元々性的欲求はそこまで強くない。その代わり発情期にはそれが一気にきて大変なんだけど、それも一週間程度の事だからその時だけやり過ごせば性的欲求とは無縁で生きてこれたのに、なのにこれは一体どういう事だ? 僕、おかしくなっちゃった?

「樹~?」
「うう、起きてるってば……」
「なら良いけど、朝ご飯食べる時間なくなるぞ?」
「分かってる……」

 朝っぱらから気分は最悪、気持ちと身体が別ものみたいになってて気持ちが悪い。僕は先輩に抱かれたいと思うほど先輩の事をまだ好きだとは思わない。なのに僕の身体は僕の気持ちを無視して先輩に抱かれたいとそう思ってるの?
 これは一体どういう事? 頭がおかしくなりそうだよ!

「樹、体調でも悪いのか? 匂いが少しいつもと違うようだが」

 リビングに赴くと長兄の一縷兄ちゃんが新聞から顔を上げて小首を傾げる。バース性のフェロモンは隠し事があまりできない。これは体臭と同じようなものだけど、その日の体調で微かに変わる。βである四季兄ちゃんには全く分からない感覚なんだろうけど、上3人はαだからね。過保護に僕を心配する兄達は僕の小さな変化にも敏感だ。
 
「発情期の匂い?」
「樹の発情期はまだ先だろ?」

 双子の兄達も代わる代わる僕の顔を覗き込み額に手を当てるのだけど、そんな兄ちゃん達に僕は「なんでもないよ、大丈夫」と返事を返す。本当に皆心配性なんだから。

「体調悪いようなら今日は休むか?」
「うんん、発情期がきたら問答無用で休まざるを得ないんだから、行ける時にはちゃんと行かないと。高校は義務教育じゃないんだからこれくらいで休んでたら留年しちゃうよ」
「だからと言って無理をするものじゃない」

 四季兄ちゃんと一縷兄ちゃんが代わる代わる言い募るけど僕は「大丈夫だってば」と苦笑する。本当に、こんな事でいちいち休んでたら卒業なんてできないからね。

「体調が悪化するようだったらすぐに俺に連絡すること、いいな?」

 四季兄ちゃんに釘を刺されて僕はこくりと頷いた。たぶん篠木先輩に会わなけりゃ、これ以上悪化する事はないと思うんだけどね。



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