榊原さんちの家庭の事情

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強気なΩは好きですか?③

友達以上恋人未満

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 僕はスポーツに詳しくない。何故なら今まで興味がなかったから。
 性別的には男性の僕だけど、Ωな僕は体力的にはいまひとつで何をやってもほとんど勝てない、だからスポーツは好きじゃない。
 ううん、正しく言えば好きじゃなかった、だけどそんな僕が最近では熱心に勉強しているスポーツがある。それがサッカー。
 全然ルールも分からなかったのに、最近ではずいぶん詳しくなったんだよ。それというのも現在僕の傍らに並んで歩いている篠木先輩がサッカー部のエースだから。
 篠木先輩は僕よりひとつ上の先輩だ、春先に出会い色々あって、何となくいい雰囲気にはなってるのだけど、実は僕達まだ付き合ってない。
 サッカーの大会で優勝したら付き合ってあげてもいいと高飛車に僕が先輩に宣言したのはまだ出会って間もない頃の事だった。先輩はその僕の宣言を律義に守って、いまだ僕に手を出してはこないのだ。
 ううん、手を出してこないは正確ではないかもしれない、学年が違うのにお昼ご飯を一緒に食べてたり、こうやって下校を共にしたり、好きだと言われた事は何度もあるし、傍目には付き合ってるのだと思われている程度に僕達は親密になっている、だけどだからと言ってそれだけで付き合っていると断言していいのか僕には分からないんだ。
 僕は昔から男女問わずによくモテた。だけどΩである僕は恋人選びは慎重にと言われ続けてここまできて、実は誰かと付き合った事は一度もないのだ。
 なにせ上の兄4人が規格外に優良物件過ぎて、誰に告白されても兄達と見比べるとどうしても見劣りするんだもん、もうこれは仕方ないと思わない?
 そんな中で出会った篠木先輩は出会いこそ最悪だったけど話してみればなかなかの好青年で、今は僕も好感を持っている。だけど最初にサッカーの全国大会で優勝したら付き合うと宣言をしてしまった手前、素直になれない僕は先輩の告白への返事を先送りにしたまま現在に至る。
 先輩も先輩で僕の返事を急かすでもなく、ただ「好きだ好きだ」と一方的に囁くだけでそれ以上の事はしてこない。これって付き合ってるって言う? 言わないよね?
 サッカーの全国大会で優勝したら返事をしようと思って数か月、秋口に先輩が「大会だ大会だ」と忙しなくなったので、いよいよかと思っていたら実はそれ地方大会でさ、サッカーの強豪校である我が校はそつなく地方大会を制した訳だけど、全国大会は年末なんだって……なんなら決勝戦は年明けなんだって! 長いよ! どんだけ待たされるんだよ!
 あ、いや、これは僕の自業自得な部分もある訳だから文句は言えないし、それなら逆にこっちから普通に告白すればいいのかもしれないんだけど、なんかもう今更言い出しにくいじゃん? どの面下げて付き合おうなんて言うの? 
 先輩が優勝したら「しょうがないなぁ、じゃあ付き合ってあげるよ」って言えるけど、何でもない時に「そろそろ付き合う?」なんて言えない、そんなの僕のプライドが許さない、無理。
 と、そんな訳で僕と先輩の関係は宙ぶらりんなまま、師走です。長いような短いような8か月間だったよ。

「先輩、冬休みの予定って……」
「練習と、いよいよ大会だな!」

 ですよねぇ、だけど僕が聞きたかったのはそこじゃないよ。冬と言えばあるだろ、大きなイベントが! 僕達まだ恋人じゃないけど、それでも恋人同士なら外せないビックイベント、クリスマス。
 全国大会の初戦が年末だからあんまり期待はできないと思ってたけど、先輩の頭からは完全に抜け落ちてるのかな? いや、そもそもまだ恋人同士じゃない僕達が乗っかるイベントじゃないとも言えるけど……

「樹は大会、見に来てくれるか?」
「ううん、行かない。遠いもん」

 「そうか」と先輩は少し残念そうな表情だけど、仕方ないよね。だって大会会場は県外だし、ちょうどその頃僕、発情期ヒートが重なりそうなんだもん。
 まだ僕の発情期は安定していないのだから、そんな時期に人混みに出かけて行くのは自ら危険に突っ込んで行くようなものだ。

「まぁ、決勝はテレビ中継もあるしな!」
「うん、家で見てるから優勝、してよね」

 今度は先輩がぱあっと満面の笑みを見せた。先輩ってホント分かりやすい。

「あのさ、先輩24日とか、予定は?」
「一日特別練習だな!」
「……だよね」

 やっぱりこの人、完全にクリスマス忘れてる……べ、別にがっかりとかしてないし!

「冬休みは会えないけど、浮気しないでな」

 横から顔を覗き込まれるように言われて、僕の顔には朱が昇る。

「う、浮気も何も、僕達まだ付き合ってない!」
「だな。あともう少し、頑張るから、待ってて」

 うぐぅ……待ってるよ。もうずっと待ってんじゃん! さっさと優勝して僕を攫いに来なよ、待ってるから!

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