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第二章:妊娠編
第一戦①
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来賓客が朝食を終え一息ついた頃、俺達は屋敷の大広間に集められた。何をどう戦うのかまだ何も知らされていない俺はそわそわと落ち着かないのだけれど、そんな俺の横にはしれっとミレニアさんが立っていて、あまり挙動不審にそわそわしているとまた怒られるなと俺は前を向いた。
オーランドルフ家の当主の挨拶、そしてその横には嫡子ロゼッタが余裕の笑みを浮かべている。相変わらず当主の背後に控えている母親は護衛にしか見えなくてちょっと笑っちゃうんだけど、その脇にはローズさんと同じように逞しい屈強な男達が並んでいて、もしかしてアレ妾の人達だったりとかするのかな? だとしたら当主の趣味って本当に一貫しているなと俺は思う。
「……少し趣旨は変わってしまったのだが、今回のこの集いがお見合いパーティである事に変わりはない。ロゼッタの婿の座を射止めるのが誰なのか、これはそれを見極める為の催しであり、うちの可愛いロゼッタがどれほど嫁として優れているのかを参加者各位是非見極めて欲しい」
当主の長い長い挨拶が終わる。途中の話は右から左だったんだけど、あれ? この催しがロゼッタさんの婿選びである事に変更はないんだね? ライザックの嫁の座を争うというよりは、催し自体が『優れた嫁を見極めろ』的な内容に変わった? まぁ、そうだよね主役はあくまで当主の嫡子であるロゼッタさんなんだろうし。これがライザックの嫁選びに変わったら、まるでライザックがオーランドルフ家本家の跡取りみたいになっちゃうもんね。
「さて、という訳で第一戦目は花嫁の技能を見極める為の戦い……」
花嫁の技能……? 技能ってなんだ? 嫁に技能なんて必要だったか?
「まずは手先の器用さを。後ろに準備が整えてある……」
後ろ? なんの準備? と思って振り返るとそこには布の山と色とりどりの糸の山。何だこれ? これで一体何を戦えと?
「第一戦目は裁縫だ」
「!!?」
ちょ……え? 戦うって肉弾戦じゃないの!? 裁縫って針と糸でやるあの裁縫? 俺の認識間違ってない!?
「各自好きな布と糸を選びだし、2時間のうちに何かしらの作品を完成させて欲しい」
ええぇぇぇえぇ……嘘だろ??? 俺、裁縫なんて小学校の時の家庭科でしかやった事ないんだけど!!!
一人動揺する俺、ミレニアさんに尻尾でさりげなく背中を叩かれ、見上げると一緒に来いと言わんばかりに無言で顎をしゃくられた。そこにはもう参加者たちが我先にと布と糸を物色していて、だけど俺は何を選んでいいのかすら分からない。
「ミレニアさん……」
「とりあえずそこの小さな布を……後はレースとお好きな色の糸を。もうこの際何でもいい」
ミレニアさんは自分も何かを探すふりで俺にこっそり耳打ちしてくれて、俺はミレニアさんの言う通りに言われた物を取っていく。
「それでは準備は整いましたね、では制限時間は2時間。始め!」
かかるスタートの掛け声、思い思いの場所に座って皆が針と糸に向かい合う。ってかさ、参加者の中には大きな人小さな人色々いるんだけど、その誰もが鮮やかな手付きで繕い物をしていくんだけど、みんな手先が器用すぎやしないか?
俺の一番のライバルであるロゼッタは相変わらず余裕の笑みで悠然と刺繍なんか始めていて、お前のその筋肉は飾りなのか? そもそもキャラがおかしいだろ!!! と俺は心の突っ込みが止められない。
「カズ、ぐずぐずしている時間はありませんよ」
「ミレニアさん……」
「とりあえず黙って私の真似を、口ではなく手を動かすのです」
ミレニアさんもライバルのはずなのに、なんだかその優しさに俺は泣いてしまいそうだよ。
オーランドルフ家の当主の挨拶、そしてその横には嫡子ロゼッタが余裕の笑みを浮かべている。相変わらず当主の背後に控えている母親は護衛にしか見えなくてちょっと笑っちゃうんだけど、その脇にはローズさんと同じように逞しい屈強な男達が並んでいて、もしかしてアレ妾の人達だったりとかするのかな? だとしたら当主の趣味って本当に一貫しているなと俺は思う。
「……少し趣旨は変わってしまったのだが、今回のこの集いがお見合いパーティである事に変わりはない。ロゼッタの婿の座を射止めるのが誰なのか、これはそれを見極める為の催しであり、うちの可愛いロゼッタがどれほど嫁として優れているのかを参加者各位是非見極めて欲しい」
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「さて、という訳で第一戦目は花嫁の技能を見極める為の戦い……」
花嫁の技能……? 技能ってなんだ? 嫁に技能なんて必要だったか?
「まずは手先の器用さを。後ろに準備が整えてある……」
後ろ? なんの準備? と思って振り返るとそこには布の山と色とりどりの糸の山。何だこれ? これで一体何を戦えと?
「第一戦目は裁縫だ」
「!!?」
ちょ……え? 戦うって肉弾戦じゃないの!? 裁縫って針と糸でやるあの裁縫? 俺の認識間違ってない!?
「各自好きな布と糸を選びだし、2時間のうちに何かしらの作品を完成させて欲しい」
ええぇぇぇえぇ……嘘だろ??? 俺、裁縫なんて小学校の時の家庭科でしかやった事ないんだけど!!!
一人動揺する俺、ミレニアさんに尻尾でさりげなく背中を叩かれ、見上げると一緒に来いと言わんばかりに無言で顎をしゃくられた。そこにはもう参加者たちが我先にと布と糸を物色していて、だけど俺は何を選んでいいのかすら分からない。
「ミレニアさん……」
「とりあえずそこの小さな布を……後はレースとお好きな色の糸を。もうこの際何でもいい」
ミレニアさんは自分も何かを探すふりで俺にこっそり耳打ちしてくれて、俺はミレニアさんの言う通りに言われた物を取っていく。
「それでは準備は整いましたね、では制限時間は2時間。始め!」
かかるスタートの掛け声、思い思いの場所に座って皆が針と糸に向かい合う。ってかさ、参加者の中には大きな人小さな人色々いるんだけど、その誰もが鮮やかな手付きで繕い物をしていくんだけど、みんな手先が器用すぎやしないか?
俺の一番のライバルであるロゼッタは相変わらず余裕の笑みで悠然と刺繍なんか始めていて、お前のその筋肉は飾りなのか? そもそもキャラがおかしいだろ!!! と俺は心の突っ込みが止められない。
「カズ、ぐずぐずしている時間はありませんよ」
「ミレニアさん……」
「とりあえず黙って私の真似を、口ではなく手を動かすのです」
ミレニアさんもライバルのはずなのに、なんだかその優しさに俺は泣いてしまいそうだよ。
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